Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

私のPDA遍歴 その3

EPSON クロノビット

さて、前回予告通り、今回はクロノビットについて。

今では、スマートウォッチなんてものが出てますが、腕時計に情報端末としての機能を持たせようというのは、結構昔から試みられてました。
特に有名なのは、セイコーインスツルメンツのRuputer(ラピュータ)でしょうか。

Ruputer(ラピュータ)
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このRuputerの発売当時(1998年)も、ウェアラブルPCとか言ってましたね。よく言われることですが、やはり歴史は繰り返すのかもしれません。個人的には、少しずつ位相をずらしながら繰り返してるような気がします。

他にも、TIMEX DATALINK、Fossil Wrist Net Round、WatchPadなど、様々な製品が出ては消えていきました(中には、一般販売されてないのもあります)。

クロノビットもそのような製品群の一つです。

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クロノビットにできること

では、ここでクロノビットの概要と機能について紹介したいと思います。

液晶は96×64ドットでELバックライト付で、腕時計としてはそれなりの情報量を表示できます。しかし、パームサイズPDAと比べると、(当然ですが)かなり低解像度です(CLIE PEG-S500Cは160×160ドット、CASSIOPEIA E-700は240×320ドットです)。
メモリはRAM256KBで、FlashROMを1MB搭載しています。同年発売のE-700がRAM32MBですので、こちらもかなり小容量であることがお分かりいただけるかと思います。

利用シーンの異なる商品ですので、こういったスペックにおいて劣るのは仕方のないことです。
ただ、かなり限定的な性能ですので、アプリケーションについては大きなものを動かすことは出来ず、比較的シンプルなものが中心となります。
機能的には、スケジュール、ToDo、アドレス帳、メモ帳、電卓、タイマ、世界時計といったアプリケーションを搭載。概ねPIM(スケジュール等の個人情報管理)機能が中心であると言えるでしょう。
ちなみに、自作アプリケーションをインストールすることも可能で、開発用のSDKも頒布されていました。しかし開発言語はアセンブリです。ちょっとハードルが高い(というか面倒)ですね。それでも、ゲーム(インベーダやブロックくずし)を作って公開してる方もいました。

PIMデータは、PC上のOutlookロータスノーツ等と同期が可能でした。
また、クロノビットには端子のたぐいが無く、PCとの接続は、なんと電磁誘導による通信で行っていました。電池は充電式リチウムイオン電池を採用していましたが、充電についても電磁誘導により行います。
同期、充電とも、付属のシンクロステーションにのせて、Synchroボタン又はChargeボタンを押すだけでした。

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PCとの同期だけでなく、クロノビット単体でスケジュールやToDoを登録することも可能です。ただし、文字入力は回転ベゼルによるもので、かなりの手間がかかります。実用的には、ほぼビューワー専門でした。

※文字入力について、詳しくはこちらの記事を参照ください。
ケータイWatch おとなのおもちゃ

またクロノビットは音声を鳴らすことはできません。スケジュールなどのアラームについては、バイブレーションによる通知となります。

個人的評価

私のクロノビットに対する個人的な評価を。

後継も出てないので、消え去った製品とは言えるのでしょうが、この手の製品では割と成功ではないかと思います。
実用的な製品になっている、という意味で。売上的にはどうか知りませんが(まあ、言わずもがなだとは思いますが)。

何をもって実用的というかは、人によって異なると思いますが、私としては、スケジュールやToDoが簡単に参照できること、アラーム通知が無音で確実に通知されること、ちゃんと腕時計のデザインであることを評価しています。

腕時計を見ればスケジュールやToDoがわかる、外出先で、いちいちパームサイズPDAを取り出してゴソゴソ操作しないでよい、というのは結構快適です。会議中でも見れたりしますしね。

それからアラーム機能について。携帯電話やPDAでは、アラーム音で通知されるので、状況によってはちょっと気が引けます。また、バイブ通知だと結構気づかないことがあります。
それに対して、クロノビットは音は鳴りませんし、腕時計ですのでバイブ通知に気づかない、ということはまずありません。

そして最後。ちゃんと、腕時計のデザインであること。これがとても重要でした。怒られるかもしれませんが、個人的にRuputerを普段から身に付けるのは、少し躊躇するというか勇気がいるというか、デザインがあまりよろしくありません。
それに対して、クロノビットはかなり普通の時計に見えます。私はWM-550Xというメタルバンド型のものを使っていたのですが、これを奇異の目で見られたことはありません。他人は、思ったほど自分のことなど気にかけないものですが、それでも、抵抗無く身につけられるというのは、大きいです。
生活防水になっているのも、地味にポイントが高かったです。

ついでですが、実用部分以外の面白い機能として、時計の自作があります。クロノビットでは、時計機能がスクリーンセーバーとして実装されてます。このスクリーンセーバを自作するためのツールが添付されてまして(時計職人)、簡単に独自デザインの時計を作ることが可能でした。

最後に

さて、そんなクロノビットでしたが、購入10年を経過する頃、ついに電源が入らなくなってしまいました。
Outlook2000までしか対応してないこともあり、昨今は普通の時計としてしか使っていなかったのですが、やはり残念です。

2000年前後のガジェットには、なにか夢を見させるというか、ワクワク感があったように思います。
今のガジェットは完成度の高いものが多いのですが、どの機械も似たような感じで、使用感がだいたい予想出来てしまいます。当時のワクワク感は、海のものとも山のものともつかない機械を、どうにかして使ってやろう、という成熟してない製品特有のものだったのかもしれません。
NetWalkerは2009年発売ですが、久しぶりに夢を見れたガジェットでした。成熟した製品じゃなかったからか…。)

さて、これにて私のPDA遍歴は終わりです。

この後、W-ZERO3シリーズを使い始めるのですが、割とメジャーというか、知ってる人も多そうなので、特に記事にはしないでおきます。

自己満足的な懐古記事に、長いことお付き合いいただきありがとうございました。