Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【核兵器】原子爆弾の次に来たもの【水爆】

前回、前々回の記事にて、広島、長崎の原爆投下について取り上げました。

oplern.hatenablog.com

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前々回記事では、原子爆弾の基本的な仕組みについても書いています。
ガン・バレル型、インプロージョン型と方式の違いはあれど、とにかくウランやらプルトニウムやらを臨界量以下に分割しておき、起爆時に瞬間的に集合、臨界量を超過させることで、核分裂の連鎖反応を引き起こすものでした。

しかしながら上記の原子爆弾の仕組みでは、核分裂の連鎖反応と爆発までの時間が競合する等の理由で、どれほどウランやプルトニウムなどの核分裂性物質を増やしてもある時点*1で威力が頭打ちとなります。
そのため、第二次大戦後、より強力な核兵器を求めて水素爆弾が開発されることとなります。

そんなわけで、今回は原子爆弾の次の核兵器水素爆弾について。

水素爆弾

水素爆弾は、重水素(デューテリウム)や三重水素トリチウム*2のような、軽い水素原子が結合して起こる核融合反応を利用する核爆弾です。原爆と違って、水爆では反応させる物質を大量に投入すればその分だけ爆発力を増やすことができます。
こう書くととても簡単なのですが、実際に核融合反応を引き起こすためには、超高温・超高圧が必要となります。その超高温・超高圧を得るにはどうしたらよいでしょうか?
実はそのために原子爆弾を用います。原子爆弾を起爆して超高温・超高圧の環境を作り出し、それにより核融合を引き起こすことで水素爆弾を起爆するわけです。

なお、何の気無しに核融合反応を利用する、とか書いてますが、この核融合についても少し。
軽い原子同士が融合すると、莫大なエネルギーを放出することはかなり以前から知られていました。これは、融合した核の質量の一部がエネルギーに変換されるためといわれています。
太陽も、この軽い原子同士の融合によりエネルギーを発しています。中心核における水素による熱核融合反応が太陽の発するエネルギーの源なのです。
(水素が熱核融合反応によりヘリウムに変換されています。一度の反応でヘリウムができるわけではなく何段階かの反応を経るようですが。)

さて、水爆は第二次大戦後のアメリカにおいて、エドワード・テラーやスタニスワフ・ウラムを中心に開発が進められ、1952年11月1日に初の水爆実験が行なわれます。
この水爆実験はアイビー作戦と呼称され、マーシャル諸島のエニウェトク環礁で実施されました。
(アイビー作戦ではマイク実験、キング実験と2回の実験が行なわれましたが、このうちマイク実験が水爆の実験です。)
マイク実験では、核融合燃料に液体重水素が用いられました。常温では気体である重水素を冷却液化するため、マイク実験装置(通称ソーセージ)は非常に大掛かりなものとなったようです。
マイク実験装置はエルゲラブ島に設置、起爆されます。核出力10.4メガトンを記録し、直径5kmの火球が出現、キノコ雲は高さ37km、幅161kmに達したといわれています。
実験後、爆弾が設置されたエルゲラブ島は跡形もなく消滅しました。後には、直径約2kmにもおよぶクレーターが出現したとか。

実験前

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実験後

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ちなみに、同アイビー作戦においては大威力の爆縮型原爆Mark18の実験も行なわれています。
(キング実験。1952年11月16日に実施。)
この実験では500キロトンの核出力を記録しており、これは原子爆弾としては最大規模(ちなみに広島型は15キロトン、長崎型は22キロトン)のものですが、それでもマイク実験の5パーセント程度の核出力にすぎません。水爆の威力の大きさが分かると思います。
なお、前々回記事でも書きましたが、ソ連が開発した史上最強の水爆「ツァーリボンバ」に至っては50メガトンに達しています。これは、広島型原爆の3300倍の核出力です。

最後に

核兵器開発に触れるたびに毎回思うのですが、いや、やっぱり頭がおかしいですね。
この上、放射能汚染も引き起こすのですから、「やっちゃった感」が半端ない兵器です。
(なお、原爆を利用しない純粋水爆、いわゆる「きれいなすいばく」では残留放射能が少なくなるとされ研究が行なわれていましたが、結局実現できませんでした。)
昔、故江畑謙介氏が、とある本の「後のことを考えなかった兵器開発」という章で、核兵器を挙げていましたが、言い得て妙かもしれません。

 

 

*1:広島・長崎級原爆の10倍ほど。数百キロトン程度。

*2:重水素三重水素はいずれも水素の同位体。これら水素の同位体やリチウムを用いて核融合反応を起こします。