Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【戦争と兵器を知ろう】ヘリコプターの本格投入【朝鮮戦争】

前回記事では少し朝鮮戦争について触れてみました。

oplern.hatenablog.com

今回はその関連記事…というほどでもないのですが、ヘリコプターの朝鮮戦争での活躍について少々。

ヘリコプターは第二次大戦中に新兵器として出現しましたが、その活躍は微々たるものでした。
しかし、第二次大戦終結から5年後の朝鮮戦争においては、ヘリコプターの実用性が高まり、本格的に投入されることとなります。

ヘリコプターの登場と活躍

朝鮮戦争で最初にヘリコプターを運用し始めたのは、アメリ海兵隊でした。
1950年8月、第6海兵観測飛行隊が派遣され、当初は偵察や観測任務を行なっていましたが、ほどなく物資や兵員の輸送、傷病兵の後送などに適していることがわかり、大規模に使用され始めます。
1951年9月には、海兵隊発の輸送ヘリ部隊である第161海兵ヘリ輸送飛行隊が釜山に到着し、本格的なヘリ空輸が行なわれるようになりました。

第6海兵観測飛行隊にはシコルスキーS51の海軍/海兵隊仕様であるHO−3S観測ヘリが、第161海兵ヘリ輸送飛行隊にはシコルスキーHRS-1ヘリ*1が配備されています。
後者のシコルスキーHRS-1ヘリは武装兵10名の輸送能力を持ち、第161海兵ヘリ輸送飛行隊はこれを15機装備していましたので、最大で1個中隊を空輸する能力をもっていたこととなります。
すでに米海兵隊は、ヘリ空輸の戦術的価値を十分に認識していたのです。

海兵隊に続き、米陸海軍もヘリコプターを使用し始め、撃墜されたパイロットのコンバットレスキューがヘリコプターの新たな任務に加わりました。海軍では離着艦に失敗したパイロットの洋上救出なども行なわれています。
(余談ですが、軍が多大なコストをかけてでもパイロットを救出することについて、意外に感じる方も多いようです。人命がすごく軽かった旧日本軍のイメージのせいでしょうか?
しかしながら、少なくとも米軍などにおいては救出作戦は非常に重要視されています。その理由として、人道的見地という点や、軍隊内の士気を保つためといったごく当たり前なものが挙げられますが、一人あたりの育成コスト/育成期間が、極めて高い/長いから、という面もあったりします。)

上記の輸送や傷病兵後送、航空救難などの任務は、滑走路を必要としないヘリにうってつけの使用法ですが、さらに一部のヘリには機関銃やロケット弾を搭載したものもあり、いわゆる「ガンシップ」のはしりともいえる使い方も見られました。

また、朝鮮戦争ではゲリラ戦も発生しましたが、これにおいて小規模ながらヘリボーン作戦(ヘリコプターによる空挺作戦)も実施されています。
ヘリでゲリラの退路に先回りしたり、ヘリに搭乗した兵士をゲリラのいる集落に降下させたりといった行動が試みられており、山岳地帯でのゲリラ討伐作戦などで効果を発揮しています。

朝鮮戦争休戦後のアメリカ陸軍では、ヘリの作戦利用についての組織的な研究が大規模に初められることとなりました。
研究の成果は、後のベトナム戦争で、万単位のヘリが投入される「ヘリコプターの戦争」として現れることとなりますが、その嚆矢は朝鮮戦争にあったわけです。

 

 

*1:民間名はシコルスキー S-55