Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【戦争と兵器を知ろう】戦闘機のアダ名【第二次大戦米軍機】

今日は航空機…というか軍用機のニックネームについて少々。

多少なりとも軍事や戦史に興味のある方ならご存知かと思いますが、軍用機にはF-15だのC-17だのといった制式名称以外にアダ名を持つものが多数あります。
例えば、F-15にはイーグル、C-17にはグローブマスターIIIといったように。

スピットファイア(英)や雷電日本海軍)といった、制式名称がそもそも愛称っぽいものはともかくとして、F-4だの九七式なんたらだのという、いかにも「型番」然とした名前のものは、やっぱりアダ名があった方がわかりやすいように思います。

このアダ名ですが、メーカーや軍が「公式」のアダ名をつける以外にも、軍組織や関係者の間でのみ使われる愛称だったり、あるいは別勢力が勝手に付けた名前だったりというケースがあります。
前者の例としては航空自衛隊F-2戦闘機が挙げられ、愛称は「バイパーゼロ」です。関係者のみならずファンの間でも使われてるとか。
後者の例としては、NATO名が代表的です。NATO北大西洋条約機構*1)はソ連を初めとする東側諸国の装備について(勝手に)コードネームをつけていました。
(冷戦終結後は、ロシア等も制式名称を公開することが多くなりましたが、NATO名はまだ継続しています。)
このコードネーム(NATO名)は、ほんのり悪意が感じられたり、はっきり悪意が感じられたりする名前が割とあって、例えばソ連/ロシア製VTOL機「Yak-38」は「フォージャー(まがいもの)」ですし、同じくソ連/ロシア製のKa-50攻撃ヘリは「ホーカム(インチキ、デタラメ)」でした。

閑話休題。今回記事では、軍用機のなかでも第二次大戦における米戦闘機のアダ名をいくつか紹介してみたいと思います。
なぜ米軍機かというと、イギリス機や日本海軍機はアダ名じゃなくて制式名称だし、かといって日本陸軍機はイマイチつまらないアダ名が多いからです。
(極めて個人的な所感ですが、「疾風」だの「飛燕」だのカッコつけすぎじゃないの感があります。鍾馗は許す。)
なお、アダ名だけじゃなくて、一応は機体についての簡単な解説もつけてみました。

グラマン F4F ワイルドキャット

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最初は米海軍の艦上戦闘機F4Fです。
F4Fは太平洋戦争中盤まで、米海軍の主力戦闘機として空母や陸上基地で運用されました。
緒戦では旋回性能に優る日本海軍の零戦に苦戦を強いられていますが、2機1組で相互支援を行なう「サッチ・ウィーブ」や、一撃離脱といった高い急降下性能を活かした戦法を取り入れたことから、1942年中盤以降は零戦相手でも有利に戦えるようになっています。

愛称は「ワイルドキャット」。「山猫」ですね。これ以降、グラマン社の戦闘機には猫にちなむ愛称がつけられることとなります。

ヴォート F4U コルセア

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F4Fの後継機となるべく高速艦上戦闘機を、という米海軍の要求に対してヴォート社が開発した戦闘機です。
正面からみると「W」の形となる逆ガル翼が特徴的ですが、これはエンジンの大出力を活かすために直径約4mのプロペラを採用した影響です。大直径プロペラと地面の間隔を確保した上で、なおかつ主脚を短くするための処置でした。

航続距離の延伸や武装・防弾の強化といった改修要求により実用化が遅れ、その上、受領後の試験で前下方視界や低速時の機動性の悪さから、空母での運用には不適格とされてしまいます。
その結果、F4Uは陸上基地に展開する海兵隊に配備されることとなり、主力艦戦の地位は後述のF6Fに譲ることとなりました。
(その後、F4U-1A、F4U-1Dと改修され着艦性能を改善、空母運用が行なわれることになります。)
しかしながら、搭載量と急降下性能に優れたF4Uはその後も長く活躍を続け、朝鮮戦争中東戦争インドシナ戦争に参加しています。朝鮮戦争ではMiG−15ジェット戦闘機を撃墜したことも。
ちなみに、中米のエルサルバドルホンジュラス間の戦争であるサッカー戦争(1969年)ではF4U同士の空戦が発生し、これはレシプロ戦闘機同士の最後の空戦といわれています。

愛称は「コルセア」、意味は「海賊」です。海賊旗がトレードマークの第17海軍戦闘飛行隊(VF-17)による編隊写真なんかは有名ですね。

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グラマン F6F ヘルキャット

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F4Fの後継となる、米海軍艦上戦闘機です。
米海軍はF4Fの後継として、前述のF4Uコルセアを有力視していましたが、同機はその斬新な設計から実用化遅延/失敗が危惧されていました。
そのため、「保険」として短期間で実用化でき一定の性能が見込める機体として、グラマン社がF4F発展型として開発していたG-50に目をつけ、F6Fとして採用することとなります。
F4Uコルセアが空母運用試験に失敗したことから、F6Fは主力艦戦として配備が進められ、F4F同様に急降下性能を活かした一撃離脱戦法をもって零戦と戦うこととなりました。
ちなみに「最も多くの日本機を撃墜した戦闘機」ともいわれています。
頑丈さ以外に突出した性能はなかったものの、操縦性の良さや高い稼働率、優れた生産性など、軍用機として望ましい特徴が多く、「兵器」として優秀だったといえるでしょう。

愛称はヘルキャット。意味は地獄猫…ではなくて「性悪女」です。

最後に

なんか、意図せず海軍機ばかりになってしまいました。まあ、陸軍機はサンダーボルトだのライトニングだの日本機と似たりよったりのヤツが多いからいいか*2

ちなみに、有名なイギリスの戦闘機、「スピットファイア」は愛称ではなく制式名称なのですが、その意味は「癇癪持ち」とか「気性の荒い女性」だったりします。F6Fと似たような感じというか、名付け親に共通した性癖嗜好がありそうですね。

 

 

*1:北大西洋条約に基づいて結成された軍事同盟で、加盟国はアメリカ、イギリス、ドイツ等々。

*2:個人の感想です。なお、「カッコつけすぎ」な名前ばかりではなく、P-51マスタング(野生馬)とかもあります。