Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【戦争と兵器】弾道ミサイルの軌道【ロフテッド/ディプレスト】

弾道ミサイルの基礎知識について語る、その4です。
今回は、弾道ミサイルの軌道について適当に。

ちなみに、前回までの記事は以下の通り。

【戦争と兵器】弾道ミサイルとは【基礎の基礎】 - Man On a Mission

【戦争と兵器】弾道ミサイルの命中精度【半数必中界(CEP)】 - Man On a Mission

【戦争と兵器】弾道ミサイルの燃料【液体燃料と固体燃料】 - Man On a Mission

弾道ミサイルの飛翔経路

以前の記事でも書きましたが、弾道ミサイルはボールを斜め上方に放り投げた時のように放物線を描く形で飛翔し、このような飛行形態を「弾道飛行」と呼びます。
飛翔経路は以下の段階に分けることができます。

ブースト段階

ミサイルが発射されてからロケットのブースターが燃焼を終えるまでの段階です。
例えば、ICBMの場合は3〜5分くらいでロケットエンジンが燃焼を終えます。この間に弾道ミサイルは大気圏外に到達し、弾道が目標に命中するように計算された軌道に乗ることとなります。
なお、わざわざミサイルを大気圏外に打ち上げるのは、弾頭部を空気抵抗や天候の影響を受けないようにして遠くまで飛翔させるためです。

ポスト・ブースト段階

この段階は複数弾頭を持つMRV、MIRV方式のみとなります。
MRV(多弾頭再突入体)は同一目標に対して複数の弾頭を投下する方式、MIRV(個別誘導複数目標弾頭)は搭載している複数の弾頭を、それぞれ別の目標に対して投下できる方式です。
MRV、MIRVいずれも弾頭はRV(再突入体)と呼ばれる円錐形上のカプセルに収められており、RVはさらにPBV(ポスト・ブースト・ビークル)とよばれる搬送台に載せられています。
ポスト・ブースト段階では、ロケットエンジンの燃焼を終えたミサイルからPBVが切り離され、PBVは搭載するRVを投射することとなります。MIRV方式の場合、PBVは姿勢を変化させながらRVを一発ずつ投射していきますが、この様子からMIRVのPBVをバス(自動車の「バス」です)と呼んだりします。

ミッド・コース段階

PBVから投射されたRVが弾道飛行しながら大気圏へ再突入するまでをミッド・コース段階と呼びます。弾道ミサイルの全行程中、最も長い段階です。
RVは慣性により放物線を描く形で飛翔、ICBMの場合だと高度1200km程度に到達した後、下降を始めます。大気圏再突入時の速度はマッハ20を超えるといわれています。
なお、イージス艦のスタンダードSM-3ミサイルによる迎撃は、このミッド・コース段階で行われます。

ターミナル段階

RVの大気圏への再突入から着弾までの段階です。この段階の時間は短く、ICBMにおいては各段階の中で最も短い時間となります。
パトリオットPAC-3ミサイルによる迎撃は、この段階で行われます。

ロフテッド軌道とディプレスト軌道

弾道ミサイルの軌道は、最も少ないエネルギーで飛翔する最小エネルギー軌道*1を取るのが一般的ですが、場合によってはより高い軌道を描くロフテッド軌道、より低い軌道を描くディプレスト軌道が用いられます。

ロフテッド軌道は、大きな山なりの軌道を描くこととなるので、その分到達距離は短くなります。大気圏突入時の速度を上げるために採る軌道といわれることが多いです。
ロフテッド軌道は、北朝鮮のムスダンで一躍有名になりました。ちなみにロフテッド軌道のムスダンについては、一応、SM-3ブロック1Aで迎撃可能ではないかといわれています。

ディプレスト軌道は、最大高度が低くなることから、レーダーでの探知が難しく、また飛行時間も短く、迎撃が困難になります。
ただし、最小エネルギー軌道と同じ位置まで届くようにするには、エネルギー量を大きくしなければなりません(つまり、より高速にする必要があります)。

 

 

*1:この場合の投射角度は45度となります。