Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【戦争と兵器】オートマチックライフルとM1ガーランド【第二次世界大戦】

前回、日中戦争から太平洋戦争にかけて日本軍の主力小銃であった三八式歩兵銃について書きました

oplern.hatenablog.com

今回は、日本軍の対戦相手だったアメリカの主力小銃、M1ガーランドについて。

ボルトアクションとオートマチック

前回取り上げた三八式歩兵銃がボルトアクション・ライフルだったのに対し、M1ガーランドはオートマチック・ライフルです。

ボルトアクション・ライフルというのは、ボルト(遊底)を手動で操作することで弾薬の装填、排出を行うライフルのことです。
銃の射撃動作では、弾薬をチェンバー(薬室)に装填、チェンバーを閉鎖、撃発時の燃焼ガスの圧力により弾丸が発射され、その後、排莢、次弾装填…といった流れで行われます。
(ボルトには弾薬を撃発させるファイアリング・ピン(撃針)が内蔵され、またチェンバーをしっかりと閉鎖できるような機構が組み込まれています。)
ボルトアクション・ライフルでは、この射撃動作における弾薬の装填・排莢を、ボルト・ハンドルを前後させることで手動で行います。

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ボルトアクション・ライフル(SMLEライフル)

上の写真はイギリスのSMLEライフルですが、銃後部に突き出ているボルトハンドルを後方に引いて排莢、前方に押して弾薬装填(とバレル(銃身)後部の封鎖)を行い、トリガーを引くと弾丸が発射されます。一発射つごとにボルトハンドルを前後させる必要があるわけですね。

これに対し、オートマチック・ライフルでは、弾薬の装填・排莢といった動作を、発射時の反動やガス圧を利用して自動的に行います。
例えば、今回取り上げるM1ガーランドでは、初弾の装填は手動で行う必要がありますが、排莢および次弾以降の装填は発射時のガス圧により自動で行われます。
これにより、発射速度が向上するほか、ボルト操作で目線が照準線から外れるといったこともなくなるので、照準修正の効率が良くなるといったメリットがあります。
(さらに、ボルトアクション・ライフルでは、何十発も撃っているとボルト操作による疲労で射撃速度・精度が低下してくる傾向があったりします。)

なお、オートマチック・ライフルには一発ずつトリガーを引いて射撃するセミオート射撃と、トリガーを引いている間は連続射撃されるフルオート射撃がありますが、セミオート射撃のみ可能なものは半自動小銃(セミオートマチック・ライフル)、フルオート射撃が可能な場合は全自動小銃に分けられます(全自動小銃は通常、セミオート、フルオート切り替えが可能)。
M1ガーランドはセミオートマチック・ライフルです。

M1ガーランド

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M1ガーランド

第二次世界大戦前から戦中にかけて、各国がオートマチック・ライフルの開発に取り組んだのですが、実際に主力小銃として活用できた国は多くありません。前回記事でも書きましたが、第二次大戦においてもほとんどの国ではボルトアクション・ライフルが主力小銃として用いられていました。
そんな中、アメリカは例外的にセミオートマチック・ライフルであるM1ガーランドを主力小銃としていた国です。

M1ガーランド、制式名称ライフル・キャリバー.30 M1は、1936年に制式採用され、口径7.62mm×63、全長1100mm、重量4370グラム、装弾数は8発でした。発射時のガス圧を利用して弾薬装填・排莢を同時に行います。
なお、弾薬はクリップ(装弾子)に8発をセットして装填し、8発全て撃ち尽くすとクリップが自動的に機関部上部から排出される仕組みとなっていました。いったん機関部に8発クリップを装填すると全弾撃ち尽くすまで追加給弾はできなくなります。そのため、アメリカ兵は戦闘後に銃内の残弾を撃ち捨てていたなんて話があったり。日本軍と比較すると贅沢の極みですね。
ちなみに、M1ガーランドはクリップが自動排出される際の音で、近くの敵兵にライフルの残弾が無くなったことを悟られたなんて話が語られたりしますが、本当かどうかは不明です。

ともあれ、M1ガーランドはやや大きくて重いという欠点はあったものの、頑丈で信頼性も高く第二次大戦における数少ないオートマチック・ライフルの成功例となりました。
第二次世界大戦終結までに550万挺が製造され、第二次大戦後には、M1ガーランドを基に使用弾薬の変更やフルオート射撃モードの追加が行われたM14ライフルが開発されています。

ちなみに、日本の自衛隊でも初期にはM1ガーランドが米軍から供与されていました。

最後に

オートマチック・ライフルを開発していた国はけして少なくなかった*1のですが、開発に成功したとしても実際に運用できるかはまた別の話だったりしました。
軍で使用するには、一定の品質を保って、十分な数を製造できる工業力や、それを配備して維持できるだけの兵站能力が必要となってきます。
第二次大戦中にこれを実現できたのはアメリカだけだったわけで、この点からもどれほど他国より抜きん出ていたかがわかります。
(とはいえ、そのアメリカですら、全軍にM1ガーランドを行き渡らせることはできず、一部ではボルトアクション・ライフルであるM1903が使用されていました。)

 

 

*1:一応、日本でも研究はされていました。実用化にはいたりませんでしたが。