Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【旧日本軍】日本軍の地味すぎて忘れる軍用機TOP5【航空機】

最近、軍用ライフルの話が続いています。その流れで今回も軍用ライフルの話を書こうかと思ったのですが、突如、第二次大戦時の地味で渋い航空機群の話を書きたくなったので、流れをぶった切って日本軍の軍用機について。

本記事では、地味で渋いというか、もはや地味すぎて存在が忘れ去られがちな軍用機についてTOP5形式で紹介してみます。
なお、ランキングは地味っぷりが際立つ順(個人の主観です)となっております。各関係者および各機のファンの方、ごめんなさい。あまり真面目に受け取らないでください。
一応、ランキングだけでなく、機体の簡単な解説もつけてみました。

ちなみに、なぜ突然そんな気分になったかというと、ようやくMILITARY CLASSICS Vol60の零式水上偵察機の特集を読んだから。

いや、零式水上偵察機は地味ながらも、かなり活躍してたし忘れられたりはしないと思うのですけどね(フォロー)。

私を忘れるのはどう考えてもお前らが悪い!

えー、節タイトルについて一応謝罪させていただきます。ごめんなさい他意はありません。

さておき、地味ながらも渋い活躍をみせた日本軍の軍用機について、ランキング下位より紹介していきます。

第5位:海軍 零式観測機 -忘れるし弾着を観測する-

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まずは海軍の「ゼロ観」こと零式観測機です。
実のところ、言うほど地味ではなくて結構ファンも多いと思うのですが、まあ、最下位ならいいだろうと割と適当な気持ちでランクインしてもらいました。

零式観測機は、三菱が開発した最後の複葉機であり、本来、戦艦などに搭載して弾着観測用に用いる想定で導入されています。
弾着観測については少し説明が必要でしょうか。戦艦などが遠距離射撃を行う場合や、敵艦隊との間に煙幕展張を行って視界を遮った場合に、航空機が敵艦上空にて砲弾の落着場所と目標の位置関係を観測、味方に情報を伝えることで射撃効力を高めるものです。
ところが、太平洋戦争では艦隊主力の地位が航空母艦に移り、大規模な砲撃戦が起こらなかったことから、本来の弾着観測任務では活躍できませんでした。

しかしながら、優れた設計により高い性能・信頼性を有していた本機は、太平洋戦争初期から各地に点在した水上機基地に配備され、対潜(対潜水艦)哨戒から船団護衛、地上攻撃、空戦にいたるまで多様な任務についています。
特に、空戦までこなしたという点がクローズアップされることが多く、優れた格闘性能をいかして米戦闘機や爆撃機と戦いました。戦闘機を撃墜した実績もあり、P-39エアラコブラやF4Fワイルドキャット、さらには未確認ながらF6Fヘルキャットの撃墜報告まであったりします。
もともと、日本海軍の砲戦観測機は、敵航空母艦から発進する戦闘機の妨害を受けることが想定されており、ある程度の空戦能力を求められます。そのため、海軍が零式観測機の開発計画時に要求した性能は第一に上昇性能、第二に格闘戦性能、第三に速度性能となっており、複座戦闘機的な性格が強いものでした。
零式観測機が空戦でも活躍できたのには、そういう背景があったわけですね。とはいえ、現場のパイロットからは「しょせん水上機なんだから過剰に期待しないで欲しい」なんて声も上がってたようですが…。

第4位:陸軍 九九式襲撃機/軍偵察機 -忘れるし近接航空支援する-

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お次は九九式襲撃機です。襲撃機という種別はあまり耳慣れないかもしれません。低空から機銃や爆弾で目標を攻撃する近接航空支援を主な任務とするものです。
カメラや高感度の無線機を搭載した九九式軍偵察機というタイプもあります。
(九九式軍偵も、偵察のみならず地上攻撃任務に用いられています。)

爆撃機と何が違うの?と言う向きもおられるかもしれませんが、爆撃機はある程度の高度からの水平爆撃を主とするのに対し、襲撃機は低空からの攻撃や降下爆撃を主としています。
そのため、襲撃機では任務特性上、低空での運動性や防弾性能が要求されました。また、前線近くの飛行場での運用必要性から不整地での離着陸も必要となります。

…というように、主任務について説明せざるをえない本機は、あまり取り上げられることがありませんが実のところ日中戦争から太平洋戦争にかけてかなり活躍しています。

九九式襲撃機は、軽快な運動性や、不整地からの高い離着陸性能を持ち、また(日本軍機としては)良好な防弾性能も備えていました。さらには、整備や取り扱いが簡易といった特徴もあり、前線隊員から絶大な評価を受けていたといいます。
近接航空支援や偵察といった任務だけでなく、連絡や要人輸送にも用いられ、操縦性の良さから練習機として使われることもありました。太平洋戦争終盤には対潜哨戒や艦船攻撃も行っています。運動性の良さと13mm機関砲2門の装備で敵戦闘機と渡り合った猛者もいたとか。
とはいえ、太平洋戦争後半では旧式化が否めず、撃墜されることが多くなり損害が増加しました。小柄な機体もあって爆弾搭載量や航続力に不満が持たれることも。
なお、末期には特攻機として使用されています。

第3位:陸軍 九八式直協機 -忘れるし直接協同する-

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九八式直協機は1938年に制式採用された陸軍の航空機です。
「直協機」という、またしても耳慣れない種別ですが、これは地上部隊に直接協同して空中からの捜索を行う短距離偵察任務や、砲兵の射撃観測を行うものです。
さらには、戦闘機のような前方固定銃を装備しており、地上銃撃や降下爆撃も実施します。多様な任務に対応する機種だったわけですね。
この「直協」という任務がわかりづらいのか、よく偵察機とされてしまうことがあります。本機の制式名称は「九八式直協機」なのですが、勝手に「偵察機」が追加されて「九八式直協偵察機」だの「九八式直接協同偵察機」だのとされることが少なくありません。

さて、制式名称すら曖昧にされてしまうほど地味な本機ですが、短距離離着陸、不整地離着陸、低速安定性と整備性の高さを兼ね備える名機だったりします。
1938年採用の機体としては、全金属製、低翼単葉、密封風防、可変ピッチプロペラといった当時最新の軍用機スタンダードを満たしており、同様任務を行う諸外国のグラスホッパー(軽装備の観測/偵察機)と比較しても、抜きん出た性能を持っていました。
その操縦性の良さから九九式高等練習機という派生型も生産されています。

なお、太平洋戦争の南方戦線では臨時飛行場の設営すら困難だったうえ、弾着観測が必要な重砲兵もあまり展開されなかったことから、本機はほとんど活躍していません。
九八式直協機の主戦場は中国大陸だったわけです。

第2位:海軍 東海 -忘れるし対潜哨戒する-

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海軍の陸上哨戒機「東海」は、洋上を哨戒して潜水艦を発見しだい攻撃を加えることを任務とする機体です。
1944年に量産が開始され1945年に制式採用となった本機は、終戦までに150機余りが生産され、地味ながら東シナ海小笠原諸島方面などで対潜哨戒任務につきました。

任務特性上、低速で長時間の飛行ができることが求められ、また、敵潜水艦を発見したら急降下爆撃を行うこととされました。
東海はこれらの要求は満たしていましたが、残念ながらあまり戦果はあがらなかったようです。
これは、潜水艦等を探知するための新型レーダー開発が追いつかず、やむなく旧式レーダーとKMXと呼ばれる磁気異常探知装置(と目視)で潜水艦の捜索をせざるを得なかったこと、導入された時期にはすでに日本本土周辺海域の制空権が失われていたことなどが理由として挙げられます。
ちなみに、東海は広い視界を得るために、まるで温室のように大きい特徴的な機首部風防を持っていました。乗員は3名で、操縦席は偵察員との並列複座となっています。

前述の通り活躍時期には航空優勢が敵の手にあったため、高い損耗率を記録しています。低速なこともあって敵戦闘機に遭遇しても逃げられず撃墜されることが多く、1944年の運用開始から1945年の終戦までの期間に半数以上の機体が失われました。

第1位:陸軍 キ102甲/キ102乙 -忘れるし役割もよくわからない-

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栄えある(?)第1位は陸軍のキ102甲/キ102乙です。
1943年に開発指示を受け、1944年に試作機が完成した本機ですが、終戦を迎えるまで遂に試作名称のキ番号しかなく、制式名をもらえませんでした。
(キ番号の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。)

キ102は、キ45改(二式複座戦闘機「屠龍」)の性能向上型として試作が進められていたキ96をベースに、対地・対艦用襲撃機、次いで高高度戦闘機として発展させるべく開発されたものです。
襲撃機型はキ102乙、高高度戦闘機型はキ102甲とされました。

襲撃機型のキ102乙は1944年3月に試作1号機が完成します。地上襲撃や舟艇攻撃用に57mm砲1門と20mm砲2門を搭載しました。
高高度戦闘機型のキ102甲は1944年6月に試作1号機が完成しており、排気タービン式過給器突きのハ112-IIエンジンに、武装は37mm砲1門、20mm砲2門を搭載しています。飛行試験では高度1万メートルで600km/hの高速を発揮しました。

キ102乙は1944年10月に量産が開始されるのですが、B-29による本土爆撃が始まったため、急ぎ一部の乙型甲型に改造、25機の甲型が完成しています。ただし、排気タービンの信頼性が低く実戦部隊への配備にはいたりませんでした。
一方の乙型は215機が生産され、米軍の本土上陸に備えていましたが、幸い本土上陸に至ることなく敗戦となったため、こちらもほとんど実戦の機会はありませんでした。
ちなみに、1944年11月には、甲型をベースにレーダーや上向き30mm砲などを搭載する夜間戦闘機型、キ102丙も開発されることになったものの、完成前の試作機が爆撃で破壊され、そのまま終戦を迎えています。

ほとんど実戦に参加することがなかったキ102系ですが、一応、戦果を挙げた記録が残っています。これは航空審査部で試験を受けていたキ102甲がB-29に遭遇、邀撃に参加して不確実撃墜したというものです。さらにはキ102乙もB-29を確実撃墜した記録があります。
なお、一部の部隊ではキ102乙を本来の襲撃任務ではなく防空戦闘機として使用した事例もあったようです。

一応、戦果が皆無というわけではないもののほとんど実戦に参加することなく終戦を迎え、さらにはキ番号しかないので覚えづらいことこのうえない本機は、まさに地味すぎて忘れる軍用機No.1にふさわしいのではないでしょうか、ごめんなさい。

最後に

なお、地味と言ったら練習機なんか殊更に地味かもしれないのですが、その役割を考慮すると、ランキングにいれるのはフェアでないと感じたのであえて外しました。
今回取り上げた機体は自衛隊風にいうと「作戦機」からのチョイスとなっております。
自衛隊では、練習機や連絡機などの補助的な航空機を除くものを「作戦機」と呼称しています。)

現代の軍用機においても、華々しい戦闘機や爆撃機ばかりがクローズアップされがちなのですが、たまには輸送機や給油機、救難機その他もろもろのことも思い出してほしいと感じる次第。
軍事の世界では様々な役割の航空機が活躍しており、それらは地味な任務だとしてもけして欠くべからざる存在なのです。どの戦闘機が強いとか、そういう見方だけでは本来の姿を見失ってしまいますので。

ところで話は変わりますが、戦闘機といえば最近「いずも型」護衛艦にF-35Bを艦載しようなんて話がありました。日本が遠方への(半端な)戦力投射能力を獲得して一体ナニをどうするつもりなんでしょうね?最近の日本の「安全保障」とやらの方向性には困惑しきりです。