Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【機関銃】軽機関銃/重機関銃から汎用機関銃へ【それぞれの違い】

前回はこんな記事を書きました。

oplern.hatenablog.com

機関銃と機関砲の線引きについての記事だったわけですが、そのついでというか、今回は軽機関銃重機関銃の区分について書いておきます。

機関銃の軽重

機関銃には、重機関銃(ヘビー・マシンガン:HMG)と軽機関銃(ライト・マシンガン:LMG)といった区分があります。
(実のところ、現代では多用途機関銃(汎用機関銃)が主流なのですが、ややこしくなるのでいったん置いときます。汎用機関銃については後ほど。)

重機関銃は1人で持ち運びできない大型の機関銃で、継続的に射撃を行うことができます。
軽機関銃よりも大口径と思われていることが割とあるのですが、実のところ、小銃弾を使用する重機関銃も多く、口径の大小だけで線引きすることはできません。
デカくて重く1人で携行できず、(軽機関銃に比べて)継続射撃能力が高い、というのが要目となります。
なお、国によっては重機関銃をさらに「中機関銃」と「重機関銃」に細分するところもあります。アメリカなんかがそうなのですが、小銃弾を使用するものは中機関銃、それより大口径の弾薬を使用するものは重機関銃としています。

軽機関銃は、第一次世界大戦中に登場したものです。兵士1人でも携行できるように軽量化した機関銃で、突撃する歩兵に随伴して火力支援できる機関銃を、という要望から誕生しました。10キロ前後の重量のものが多く、重機関銃のような継続射撃はできないものの、主に分隊の火力支援として制圧射撃(猛烈な火力で敵が反撃できないよう動きを止めるための射撃)に用いられました。

機関銃の軽/重の区分けは軽機関銃の出現により始まったもので、軽機関銃出現以前の機関銃は「重機関銃」として区分されるようになります。

重機関銃軽機関銃

日露戦争第一次世界大戦では、主に水冷式の重機関銃が猛威を振るいました。水冷式というのは、銃身を冷却被筒(ウォーター・ジャケット)と呼ばれる水を溜めた筒で覆い、この水で銃身を冷やす方式の機関銃のことです。

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ヴィッカース機関銃(水冷式重機関銃

銃身は、発砲時の高温高圧の火薬ガスや弾頭と銃腔の摩擦熱で加熱されますが、機関銃のように連続射撃が行わものでは加速度的に温度が上昇し銃身がダメになります。具体的には銃身が加熱すると摩耗しやすくなって、命中精度が低下したり暴発の原因になったりするのです。そこで、冷却被筒により水を用いて銃身を冷やすわけですね。

水冷式重機関銃は、冷却被筒と水、復水器(沸騰により生じた蒸気を水に戻す役割を持つ)、頑丈な三脚をセットで使うため必然的に総重量が重くなります(50キロくらい)。そんなわけで、通常、陣地防御に使用されました。日露戦争第一次世界大戦では陣地に据え付けられた水冷式重機関銃が、横一線になって突撃(横隊突撃)してくる敵歩兵をなぎ倒し多数の死傷者を出しています。
なお、弾薬の供給は弾薬ベルト方式となります(ベルト給弾)。

重機関銃は水冷式のものだけではなくて、空冷式の重機関銃もあります。空冷式というのは、熱くなった銃身が普通に空気で冷めるのを待つという方式です。冷めやすいように、銃身に放熱用フィンが装着されていることが多いです。

これらの重機関銃に対し、軽機関銃は空冷式で30発程度のマガジン給弾、二脚を装備しています。小銃兵と一緒に前身することができる軽機関銃分隊の火力の根幹となりました。

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ブレン軽機関銃

ちなみに、分隊レベルにまで軽機関銃を配備し小銃兵が機関銃兵を掩護するという「戦闘群」戦法が各国で採用されるようになったため、横隊突撃は時代遅れのものとなっていきます。

汎用機関銃

さて、各国で重機関銃軽機関銃の二本立て装備が採用されるようになったわけですが、第二次世界大戦前のドイツでは、重機関銃軽機関銃を統合する新たな機関銃「汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン:GPMG、多用途機関銃ともいう)」が登場します。
汎用機関銃MG34MG42は、空冷式で重量も軽機関銃と同程度なのですが、二脚とドラム弾倉をつければ小銃兵の前身に随伴できる軽機関銃として、三脚に載せて弾薬ベルトで給弾すれば重機関銃として使用できました。

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MG34

継続射撃時に問題となる銃身の加熱問題に対しては、素早い銃身交換が可能な機構と予備銃身の携行によって解決しています。機関銃班は銃身加熱に応じて予備銃身に交換しながら射撃を続けるわけです。なお、加熱した銃身は自然冷却させて、冷めたらまた使いまわします
(ちなみに、汎用機関銃を開発した背景には、当時のドイツがヴェルサイユ条約により水冷式機関銃の開発に厳しい制限をかけられていたというものがあります。)

MG34/MG42は各国に大きな影響を与え、第二次大戦後の新制式機関銃はすべて汎用機関銃となりました。
これにより、従来の軽/重機関銃の2ラインの装備体系が1本化され、調達コストや教育コストが改善されています。

それでも残る重機関銃

とはいえ、現代においても一部の重機関銃は使われ続けています。ブローニングM2重機関銃が代表例で、アメリカでは1933年に制式採用されたのですが、現在においても各国で生産・配備されています。

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ブローニングM2重機関銃

ブローニングM2はもともと第一次大戦時に観測気球や装甲車両等を撃破するために開発されました。結局、第一次大戦には間に合わなかったのですが、第二次大戦では車載、艦載、航空機への搭載、地上設置と至るところで使用されています。
ブローニングM2は12.7x99mmという大口径の弾薬を用いているので、アメリカの区分でも「重機関銃」となります。レンガ造りの建物や土嚢の影に隠れた敵兵を障害物ごと粉砕・制圧でき、イラク武装勢力掃討戦においても広く使用されました。ちなみに、陸上自衛隊でも戦車や装甲車への車載用や対空用として採用されています。