前回、前々回と日本陸軍第十軍の法務部陣中日誌から、軍法会議関連(被告事件の受理〜判決まで)の事例を取り上げました。
第十軍では犯罪が多発したものの、それを取り締まる憲兵の絶対数が不足しており、そのため実際に逮捕されて軍法会議に回された者は極僅かでした。
そのような状況にも関わらず、第十軍法務部陣中日誌には、戦地犯罪における多くのパターンが記録されています。
罪名から見ても、前回取り上げた殺人、強姦、略取等の他、放火、傷害、掠奪、賭博、窃盗、強制猥褻、敵前逃亡、軍用物毀棄、上官脅迫、上官暴行等々と、一般的犯罪、軍刑法に規定される犯罪のいずれも様々なものが見られます。第十軍は半年程度しか存在しなかったのですが、結構な網羅率といえるんじゃないでしょうか。
当然ながら犯罪事実の概要も記録されてますので、ある程度具体的に戦地犯罪のありさまを知ることができます。
そんなわけで、今回は戦地犯罪の内容と、それに対してどのような判決が出たのか、という点に着目して、同陣中日誌よりいくつか事例を取り上げてみようという企画です。
なお、第十軍法務部陣中日誌資料については、「続・現代史資料6 軍事警察」より引かせていただいてますが、当該書籍では犯罪人の氏名が一部省略されていますのでご承知おきください。
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