Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

ITサービスマネージャ合格体験記 その2

前回記事の続きです。ITサービスマネージャ合格体験記、午後2(論文問題)の勉強法から。

午後2

さて、本題となる午後2、論文問題です。
今まで経験のない出題形態ですので、最初は参考書の「ITサービスマネージャ 合格論文事例集」の「合格論文の書き方」に従って愚直に勉強しました。

当該テキストでは、以下のステップで論文が書けるよう訓練する、となってます。

  1. 論文風の文章を書く
  2. トピックを詳細化して段落を書く
  3. 問題文にトピックを書き込む
  4. ワークシートに記入する
  5. ワークシートを基に論述する

こういったステップ式の勉強を迂遠に感じる人もいるでしょうが、最初の手探り段階では役に立つと思います。私の場合、このステップをこなした後、論文の練習を行いながら自分なりの論文作成パターンを確立していきました。

ちなみに、前回記事で言及した、「午後1問題が午後2の論文作成の参考になるんじゃないか?」という推測ですが、やはり結構使える感じでした。なので、論文練習の初期段階においては、午後1の問題を論述の参考にしてます。

なお、午後2の試験時間は2時間ですので、この時間内で論文を仕立てなければなりません。
しかし、最初のうちは合格できそうな論文を作成することだけ考え、作成時間は度外視しています。
数回論文を書いて、ある程度のレベルの論文が書けるようになったと感じてから、改めて時間内で作成できるように練習しました。

論文の練習をしているうちに、やりやすい書き方などに気づきます。
それらを整理して、自分なりに以下の論述の原則を立てました。

  • ITサービスマネージャの立場を意識する
  • 出題に沿って書く
  • 論旨展開に気を付ける
  • 見栄を張らない
  • 論文のネタは一つにする。
  • 短く書く

以下、具体的に説明します。

ITサービスマネージャの立場を意識する

これは、各テキストでも指摘されていることなのですが、「論文上での自分の立ち位置」を意識して論述しないと、多分落ちます。
この試験はITサービスマネージャとして一定のレベルにあるかを問うものです。SEやプログラマ、オペレータの立場で書いてしまうと、どれほど優れた論文であろうとも、ITサービスマネージャとしての評価が出来ません。

出題に沿って書く

もう問題文をマルパクするぐらいの勢いで、出題に沿って書きます。
問題文では、ご丁寧なことに提示されたテーマについて「こういったケースがあって、こういう影響がでるから、こんなふうに対策しないといけないね」というようなことが書いてあります。
むしろ、出題者が自分で答えを書いちゃってるレベルです。
受験者は、提示されてる「答え」の中から書きやすそうなものを選んで、肉付け*1して自分の論文にしてしまえばいいのです。
これに逆らってオリジナリティを出しても、あまり得することは無いと思います。

例として、平成22年度午後2問3「インシデント発生時に想定される問題への対策について」から問題文を一部引用します。

問3 インシデント発生時に想定される問題への対策について

 ITサービス提供中に発生する障害関連のインシデントは、ITサービスの稼働率低下、利用者の満足度低下などの問題を引き起こし、SLAの順守に影響を与える場合が多い。
ITサービスマネージャは、インシデントを発生させないための予防的な対策とともに、インシデント発生時に想定される問題への対策を事前に検討しておくことが重要である。
 例えば、主要な業務システムが稼働するサーバに障害が発生した場合を考える。このときに想定される問題としては、回復の手順に不慣れでITサービスの回復が遅れること、サービスデスクに問合せが殺到して、利用者とのコミュニケーションが十分にとれないこと、などがある。
 このような問題への対策としては、ITサービスを速やかに回復させるために、主要な業務システムが稼働するサーバの障害時の運用訓練を定期的に行うこと、サービスデスクへの問合せを緩和させるために、”お知らせ”などを通じて利用者に障害状況、障害回避策などを伝える手順を確立すること、などが考えられる。
…中略…
設問ア あなたが携わったITサービスの概要と、インシデント発生時に想定される問題の概要について、SLAの順守に与える影響を含め、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた問題への対策の内容と、対策を検討するに当たって留意した点について、800字以上1600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた対策の改善について、インシデント発生時の対応の過程で判明した不備を含め、600字以上1200字以内で具体的に述べよ。

 上記の出題なら、そのまま「サーバに障害が発生」した時に「回復の手順に不慣れでITサービスの回復が遅れる」ことが無いよう「サーバの障害時の運用訓練を定期的に行う」ということを、具体例に落としつつ書くだけです。
引用部分には入ってませんが、実際の問題文では、対策時の留意点や、事前に策定した対策に不備が生じた場合などについても述べています。まさにいたれりつくせりです。

論旨展開に気を付ける

当たり前のことなのですが、論文の前後で言ってることが矛盾したり、一貫性の無い内容とならないよう気をつけねばなりません。
もっと言うと、論文の設計時点で、こういった題材を出して、こういう対策に持っていって、さらに改善としてこうする、といった流れを考えておく必要があります。

見栄を張らない

個人的な所感でいうと、カッコつけて難しいことを書くと、後から後悔します。
難しいことを書くと、大抵、論文全体にわたって難しい内容になり、収拾がつかなくなったり、具体性に欠けたりとろくな目にあいません。それよりは普通のことを、具体例を交えて丁寧に書いた方が良いと思います。
IPAから出ている論文の評価方法には、「見識に基づく主張」、「独創性・先見性」なども挙げられていますが、斬新なやり方なんぞは不要で、普通の施策でのちょっとした工夫とかで十分なようです。

論文のネタは一つにする。

「出題に沿って書く」にて問題文に挙げられている事柄に沿って書く、と述べましたが、この際、全部を論文に取り込んではいけません。
例えば、先ほどの平成22年度問3「インシデント発生時に想定される問題への対策について」では、サーバ障害発生時の問題として、ITサービスの回復が遅れる、サービスデスクに問い合わせが殺到する、という2点があげられてますが、この二つを論文に取り込むと、論文が長くなるか、浅いレベルでしか論述できなくなります。
多様な題材を挙げても、特に合格しやすくなるわけではありません。
題材は一つに絞った方が得です。

短く書く

私は手書きのスピードが遅い*2ので、出来るだけ短い論文で済ませるようにしました。
長い論文を書いて時間切れ、では困りますので。
設問で指示されている字数を守っていれば、とくに論文の長短が合否に影響することは無いようです。

午後2の論文ネタの収集

午後2対策では普段の心がけが重要だったりします。
具体的には、普段から論文ネタの収集が必要ということですね。
私の場合、実際に行っている業務や見聞きした事例を論文に利用できないか、意識するようにしてました。
色々な出題に流用できる鉄板ネタができると、結構楽になります。

ちなみに、私が実際に書いた練習論文は6つ程度です。
実際に論文を書く時には、まとまった時間(少なくとも2時間)が必要となるので、6つ程度がせいぜいでした。
しかし、過去問について論文の構想*3を作っておいたものは10以上あります。論文の構想でとどめておくなら、勉強時間も短くて済むので、お勧めです。

私が愛用している論文練習用ノート(2016/09/27追記)

今更の追記なのですが、論文練習に適したノートを掲載します。横向きに使うと、試験時の解答用紙に近くなります。ちょっと高いのが難ですが…。


 

受験当日

さて、受験当日について。前にも書きましたが、同じ会場内での受験者は十数名程度。人気の資格と比べるとかなり少人数で、落ち着いて受験できると言えなくもないです。

実際の試験については、午前2、午後1は「まあ、大丈夫だろう」といった感触で終えました。想定通り、といったところでしょうか。
で、問題の午後2。やはり、練習の時とはプレッシャーのかかり方が違うようで、思った以上に時間が足りませんでした。
最初は、採点者が読みやすいよう、字を丁寧に書いたりしてたのですが、後半、設問ウの部分を論述する頃にはそんな余裕もなくなり、もはや半分涙目の気分で大急ぎで論文を仕上げました。
設問ウの充足度に不安があるものの、後からなにか出来るわけでもなく、モヤモヤした気分で帰ったのを覚えています。

正直、もう少し手書きスピードを上げる訓練をしとけば良かったと思います。そうすれば、設問ウの論述も多少マシだったかもしれません。右手も攣りそうだったし。

合格発表

2ヶ月後に合格発表です。
設問ウの論述に不安があったのですが、幸いなことに合格してました*4
以下、成績照会と合格証書です。

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体験記は以上なのですが、せっかくなので、練習で書いた論文を掲載したいと思います。長くなるので、例によって次回に分けて掲載します。
(本来、合格時の復元論文を載せるところなのですが、そちらは実際の業務で行った改善について論述しており、身バレがこわいので掲載出来ません。)
ちなみに今回記事中でも引用した、平成22年度の午後2問3に対する論文となります。

 

 

*1:具体的な事例を挙げて、さらに、なぜそう考えたのか、なせそのような対策を取ったのかについて、理由を説明します。

*2:正確には、字が汚いので、少しでも読みやすくなるよう丁寧に書こうとするので遅くなります。

*3:この問題に対してはこういった事象で、こういう論旨展開をしよう、というものです。

*4:汚い字で書かれた論文にも関わらず、ちゃんと読んでくださった採点者の方に感謝します。