Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【戦争と兵器】弾道ミサイルの命中精度【半数必中界(CEP)】

弾道ミサイルの基礎知識について語る第二弾です。
(とはいえ、あまり細かい話はしないので、詳細を知りたい方は専門書などをお読みください。)

なお、第一弾はこちら。

oplern.hatenablog.co

今回は弾道ミサイルの命中精度についてですが、その前に命中精度の話に欠かせない半数必中界(CEP)について。

半数必中界(CEP)とは

ミサイルに限らず、兵器の命中精度を測るものとして半数必中界(CEP*1)という指標があります。
これは、「発射したミサイルや投下した爆弾の半数が、目標の中心からどれくらいの距離に命中するか」を表したものです。
例えば、過去に記事にした巡航ミサイル「トマホーク」は、現行CEP10メートルと言われています。これは、発射したうちの半数が目標の中心から半径10メートルの円内に着弾するということになります。別の言い方をすれば、50%の確率で、目標の中心から10メートル以内に命中するわけです。
他の例を挙げると、誘導装置キットを取り付けGPS誘導を行うようにした爆弾(JDAM)GBU-31はCEP5メートルとなっており、こちらは投下したうちの半数が目標から5メートルの円内に落下します。

これでおわかりいただけたと思うのですが、要はCEPが小さければ小さいほど命中精度が高く、大きければ大きいほど命中精度が悪いわけですね。
ちなみに、CEPは平均誤差半径または円形公算誤差と訳されることもあります。なお、CEPは「セップ」と読みます。

弾道ミサイルのCEP

では、弾道ミサイルのCEPはどの程度なのでしょうか。
本節では、いくつかの弾道ミサイルを例に挙げてみます。とはいえ、弾道ミサイルのCEPは、公表してなかったり信頼できない数値を出してくることも多いので、正確な数値は不明なものが多かったりします。その事情を踏まえつつ、参考値としてお読みください。
なお、前回記事でも触れましたが、弾道ミサイルの命中精度はロケットエンジンの燃焼停止時の速度と方向で決まります。
弾道ミサイルはまだ燃料が残っている間に、慣性誘導装置を使って自分の位置・加速度および目標との位置関係を割り出し、目標に向かうように姿勢を修正、ロケットエンジン燃焼停止後は慣性による飛行となります。発射上昇段階でどれだけ正確な誘導ができるかが鍵となるわけですね。
そんなわけで、普通は終末誘導が行われない弾道ミサイルにおいて、飛距離が伸びれば伸びるほど命中精度は不利になってくることをご承知おきください(一応)。

さて、それでは例を挙げていきます。まずは、アメリカの弾道ミサイル
もう退役してますが*2、固体燃料式ICBMピースキーパーは射程9600km、CEP180メートル以内といわれています。
また、1970年に配備され未だ現役の固体燃料式ICBMミニットマンIIIは射程1万3000km、CEP150メートルです。

なお、「普通」の弾道ミサイルは終末誘導を行いませんが、MRBMパーシングIIに採用されたMaRV式弾頭はレーダーによる終末誘導を備えており、実にCEP50メートル以下を実現していました*3

お次はソ連/ロシアの弾道ミサイル
ソ連/ロシアのICBMは、アメリカのものと比べCEPがやや悪い傾向があり、概ね200〜300メートルとなっています。その分、大型の核弾頭を搭載できるよう、ペイロードの大きいものが多いようです。
1980年から配備が始まった液体燃料式ICBMであるRS-18B*4は、射程1万km、CEPは350メートルです。ちなみに発射重量105トンにも達する大型ICBMであり、核出力550キロトンの大威力の核弾頭6発を搭載できます。
もうひとつ例を挙げましょう。RS-20V*5は、RS-18Bよりもさらに大きく、発射重量は211トンに達します。射程は1万1000km、CEPは200メートルです。核出力750キロトンの核弾頭10発を搭載可能という化け物じみたICBMで、NATOが「サタン」と名づけてたり。ちなみに、こちらも液体燃料式となっております。
(なお、「核出力」とは核兵器の威力についての指標で、TNT火薬の量に換算するとどのくらいかを表しています。例えば広島に投下された原爆(リトルボーイ)は15キロトンです。)

米露以外も少し。

中国ICBM、DF-31Aは固体燃料式で射程1万1200km、CEPは100〜150メートルといわれています。

ICBMばかりだとなんなので、それ以外も挙げてみましょう。
イランの液体燃料式SRBMシャハブ2は射程300〜700km、CEP50メートル。
パキスタンの固体燃料式IRBMシャヒーン2は、射程2500km、CEP50メートル。
インドの個体燃料式IRBMアグニ3は射程3000〜5000km、GPSによる終末誘導機能を持ち、CEPは40メートルです。

最後に、北朝鮮弾道ミサイルについてもいくつか挙げておきます。
有名なノドンは、液体燃料式で射程1300km、CEPは190メートル(これは最良の推定値であり、3000メートルとする説もある)です。
皆さんご存知のムスダン(火星10)は、射程2500〜4000kmといわれており、CEPは1300mとされています。
液体燃料式ICBM火星14(NATOコードネーム KN-20)は、射程1万km。CEPは5kmだか10kmだか色々推測されてますが、よくわかっていません(なら取り上げるな)。

 

 

*1:Circular Error Probability

*2:STARTII(第二次戦略兵器削減条約)の対象となり、2005年に退役。

*3:INF(中距離核戦力全廃条約)の対象となり1990年代前半に破壊・廃棄。

*4:NATOコードはSS-19スティレット

*5:NATOコードはSS-18サタン