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【アサルトライフル】製造最多の突撃銃 AK-47【カラシニコフ】

しばらく前に、軍用小銃についていくつか記事を書いたことがあります。

【戦争と兵器】三八式歩兵銃【日本軍のライフル】 - Man On a Mission

【戦争と兵器】オートマチックライフルとM1ガーランド【第二次世界大戦】 - Man On a Mission

【戦争と兵器】アサルト・ライフルとは【突撃銃】 - Man On a Mission

【戦争と兵器】はじめてのアサルト・ライフル【MP43/MP44/StG44】 - Man On a Mission

これら記事に続いて、現在使用されているアサルトライフルについても少し触れようと思っていたのですが、突如、第二次大戦時の航空機のことが書きたくなったために中断していました。
今回はその再開ということで、超有名アサルトライフルカラシニコフ」ことAK-47についての記事です。

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AK-47 II型

AK-47とは

カラシニコフ銃」なんて呼ばれることも多いアサルトライフルAK-47は、1947年に旧ソ連の軍人/銃器設計者、ミハイル・カラシニコフにより開発されました。AKというのは「アブトマット・カラシニコヴァ」の頭文字で、「カラシニコフ自動小銃」という意味です。47は1947年のことですので、「カラシニコフ自動銃47年型」という意味合いになります。
なお、AK-47以降の改良型とか発展型なんかも「カラシニコフ銃」と呼ばれたりします。AKMとかAK-74とか。
AK-47は、「はじめてのアサルトライフル」である独StG44から多大な影響を受けており、レイアウトに共通点が見られます。外見もよく似ていますが、内部機構的には大きく異なっており、閉鎖/撃発機構なんかは米M1カービンなどを参考にしたとされています。

使用弾薬は7.62×39.5mm弾(制式名M43)。仕様については、AK-47のI型を例に取ると全長は862mm、銃身長416mm、重量4085g、発射速度は毎分600発です。
マガジンはバナナ状に湾曲したタイプで30発、セミオート/フルオートを切り替えるセレクター(セーフティ兼ねる)は機関部右側面に配置されており、これはダストカバーも兼ねています。
作動はごくオーソドックスなガス圧作動方式で、銃身上部のガス・シリンダーに発射ガスの一部を導入して、ボルトに連結されたピストンを動かすものとなっています。

AK-47の特徴

ニュースなどで紛争地帯の映像が出ると画面のどこかに映ってたり、映画などのフィクションでも登場頻度が高かったり*1するAK-47ですが、これは莫大な数が製造されて世に出回っているためです。

AK-47は、お世辞にも射撃精度の高いライフルではありません。
(それでも150mの射距離でグルーピング(集弾)20〜25cm程度の精度は持ってます。)
また、射撃時の反動も強く、特にフルオート射撃では銃口の跳ね上がりが大きいため3発目以降の命中率が極端に低下する傾向があります。
こういった欠点を持ちながらも、アサルトライフルのベストセラーとなったのは、構造が簡単で堅牢・安価、信頼性が高く、取り扱いも容易といった特徴を持っているからです。

AK-47は、部品点数を可能な限り少なくして構造を簡素化しており、また、部品同士に比較的大きなクリアランス(隙間)を設けることで、硝煙や泥、埃など機関部が汚れたり少々の異物が入り込んだりしても動作するようになっています。
(過去、陸上自衛隊がゴランPKOに参加していた際、親善射撃競技会でポーランド軍カラシニコフのフレームがガタガタだったのを見て驚いたという話もありました*2。)
厳寒の北極圏からアフリカの砂漠、東南アジアの密林地帯と、どんな環境の戦場でも作動し、泥水につかっても棍棒代わりにぶん殴っても射撃ができるAK-47は、「兵器」として極めて望ましい能力を持っていると言えるのです。

AK-47は非常に高い耐久性・整備性を持つことから、高度な整備を受けられない破綻国家の軍隊や、武装勢力でも使用することができました。整備性の高さは取り扱いの容易さにもつながり、教育レベルが十分でない国の新兵や紛争地帯の若者も、すぐに分解掃除を覚えられるというメリットもあります。

AK-47の簡素な構造は、生産性の高さにもつながっており、ちょっとした町工場程度の設備があればコピーすることはそれほど難しくありません。
(AK-47ではなく発展型のAK-74ですが、日本のオウム真理教がコピー生産を行っていた事例もあります。)
ちなみに1挺あたりの価格も西側の小銃と比べて格段に安く、経済力のない国でも入手しやすいという点も特徴です。
AKシリーズは様々なバリエーションが作られ、また、旧東側諸国のみならず中東やアフリカでもライセンス生産やコピー生産されています。これらを含めた総生産数は1億挺以上といわれ(4億挺以上という説もあり)、史上最も多く人を殺した兵器なんて呼ばれることも。

AKMとAK-74

AK-47には多くのバリエーションがありますが、改良型であるAKMと、小口径化されたAK-74についても少し触れておきます。

まず、AKMは1959年に登場したもので、名前は「アブトマット・カラシニコヴァ・モデロニジロ(改良型AK)」の頭文字となっています。銃口に反動を抑えるマズルブレーキを装着し、連射速度を下げ、ストックを直銃床としたことでフルオート時の命中精度を改善した点が大きな特徴です。
また、機関部について鋼材の削りだし加工による生産から、鋼板プレス加工に変更され、生産性がさらに向上したほか、1kgも軽量化されました(重量3290g)。

AK-74は、西側諸国の小口径化に対応して1974年に登場したものです。
AK-47が7.62×39.5mmという当時のアサルトライフルとしては大きめの弾薬を用いていたのに対して、AK-74では5.45×39mmという小口径弾を使うようになりました。

最後に

ついでの余談ですが、1972年のロッド空港乱射事件(テルアビブ空港乱射事件)で日本赤軍が使用した銃がAK-47とされがちなのですが、実際にはチェコスロヴァキア製のVz58Pが用いられており、これは使用弾薬は同一なものの銃の構造は全く異なるものです。

余談の余談。第二次大戦後、チェコスロヴァキアは東側に組み込まれワルシャワ条約機構にも加盟していましたが、戦前と同様に独自の兵器開発を行っていました。
前述のVz58も独自設計で、外見はAK-47と酷似していますがより軽量で命中精度も高い銃です。
チェコスロヴァキアの銃器開発レベルの高さはよく知られており、戦前だとZB26軽機関銃、戦後だとVz61サブマシンガンスコーピオン)やCz75自動拳銃なんかが有名ですね。
(なお、チェコスロヴァキアは1993年1月1日に連邦解消し、チェコ/スロヴァキア両共和国が分離しています。)

 

 

*1:大抵、テロリストや民兵が持っている銃として描かれます。

*2:自衛隊の火器はやたらに凝った複雑な構造のものが多いので、なおさらだったのでしょうね。