Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【アサルトライフル】M16シリーズ【成功への道】

前回記事では、史上最も多く製造されたアサルトライフル、AK-47について書きました。

oplern.hatenablog.com

「史上最も多く人を殺した兵器」とか「ある意味大量破壊兵器」なんて言われるAK-47を取り上げたら、月並みながら、そのライバルであるM16も取り上げないわけにはいきません。

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M16A1

というわけで、本日の記事はAKと並ぶ有名アサルトライフル、M16シリーズについて。

M16の来歴

現在、世界中の軍隊で使用されているM16は、米アーマライト社の銃器デザイナー、ユージン・ストーナーが1955年に開発したAR10というライフルをベースに再設計したものです。
M16というのは米軍による制式名称であり、アーマライト社の製品名はAR15(AR=アーマライトライフル)でした。なお、AR10は口径7.62ミリx51ですが、M16は口径5.56ミリx45に小口径化されています。

アーマライト社からコルト社に製造権が譲渡されたAR15は、1962年に米空軍に採用されることとなります(M601およびM602)。この際、制式名称としてM16の名が与えられました。
M16は、当初ベトナムの航空基地警備に用いられ、その後、陸軍でも試験的に採用されます。陸軍ではベトナムの戦場での試験運用の後、紆余曲折あったもののM14に代わる主力小銃として1967年に制式採用となりました(M16A1)。

M16の特徴

さて、M16の特徴について見てみましょう。
ライバルといえるAK-47が手堅くオーソドックスな作りとなっているのに対し、M16は当時としては非常に革新的なライフルでした。

まず、アメリカの前主力ライフルであるM14や、ライバルAK-47と比べた場合、M16は比較的小口径の弾薬を使用します。
(M14、AK-47は口径7.62ミリ、M16は5.56ミリ。)
この小口径化の背景には、第二次大戦および朝鮮戦争における実戦データの研究があります。
上記二つの戦争における歩兵戦闘の研究結果では現実的な交戦距離は約160メートルとされ、また、一般的な歩兵が実戦のストレス下でライフルを照準して目標に当てられる距離は約4.5〜160メートル、最大命中距離は70メートル付近とされました。
このため、射距離150メートルにおいて十分な殺傷力を保てる範囲で弾薬の小型化が図られました。弾薬が小さくなれば、射撃時の反動も運搬の負担も低減されるわけです。
実際、M14ではフルオート射撃時の反動が過大で制御困難なのに対し、M16では銃が跳ね上がって空を撃ったりすることなく、実用的な射撃が可能となっています。

次にM16の作動機構について。
M16はガス作動式となっていますが、この作動機構には比較的珍しいリュングマン式を採用しています。
この方式は、弾丸発射時の燃焼ガスを直接ボルト・キャリアーに吹き付けて作動させる方式です。ガスピストンやシリンダーなどが不要となるため、構成部品が少なくなり軽量化にも有利に働きます。しかし、こまめに整備しないと汚れなどによる作動不良を起こしやすいという欠点があります。

最後に、M16で使われる素材について。
M16では、素材に木材を使わず、また、アルミ合金とプラスチック樹脂を使用して軽量化を図っています。
M16のフレームはアルミ合金の削りだし加工で作られているのですが、これには製造と品質安定が難しく、コストも高いという課題があります。この課題をクリアして成功を収めたのは、アメリカの底力があればこそでしょうか。
とはいえ、M16が成功をおさめるまでには、種々の問題とその解決が必要でした。

前述のとおり、M16は米空軍で採用された後に米陸軍でも試験的に採用されます。米陸軍ではベトナム戦争において試験運用が行われたわけですが、作動不良が多発し欠陥銃とされてしまいました。

M16が成功するまで

さて、ベトナム戦争での試験運用で作動不良が多発した原因としては、M16の弾薬に適していない7.62mm弾などと同じ粒状弾薬を用いたこと、兵士に対する整備教育の不足が挙げられます。

弾薬の問題は、ただでさえ汚れによる作動不良を起こしやすいリュングマン方式を採用したM16に対して、燃えカスが多い弾薬を用いたことです(制式化以前はIMR火薬)。
これに加えてM16の手入れを怠る兵士が多かったことから、ボルト周りの汚れにより、ボルト回転不良、不完全閉鎖などの故障が続発しました。

そこで、1963年にアッパーレシーバー右側面後部にボルト・フォワード・アシスト(ボルト強制閉鎖装置)を追加したM16E1が特殊部隊用に発注され、これが1967年にM16A1となって大量配備されることになります。

他にも兵隊に対する指導やクリーニングキットの大量支給、発射火薬の調整など、数々のトラブルを解決してM16は現在の地位を築いていきます。
AK-47と違って(?)その道のりは平坦なものではなかったわけですね。

M16はその後も各種の改良が続けられ、1982年にはベルギーFN社開発のSS109弾(5.56x45mm NATO弾)採用に合わせてツイストやサイト改修などを行ったM16A2が制式化されます。
なお、M16A2では射撃モードがセミオートと3点バーストとなり、フルオートはオプションとなりました。3点バーストは、フルオートと違ってトリガーを引き続けても3発発射後に止まります。フルオートだと、特に新兵がトリガーを引きっぱなしにしてあっという間に弾を撃ち尽くしてしまうといったことがあり、こういった弾薬浪費を防ぐための機構となっています。
ついでにM16A2のデータも書いておきましょう。全長999ミリ、重量3530グラム、発射速度750発/分、有効射程は550メートルとなっております。

ちなみに、SS109弾こと5.56x45mm NATO弾こと米軍制式名称M855弾は、M16A1系列で用いられる.223レミントン弾よりも高威力と言われています。
SS109弾は.223レミントン弾よりガス圧が高いなどの違いがあり、M16A1では緊急時以外の使用は禁じられてます。

M16A2はさらに発展を続け、信頼性向上と3点バーストをフルオートに変更したM16A3(海軍で採用)、キャリング・ハンドルを着脱式にしてピカティニー・レールを追加、ハンドガードにレールシステムを組み込んだM16A4、37cm銃身を装備したM4/M4A1カービンなどが登場しています。

最後に

余計な余談。
M16といえばゴルゴ13ですが、当然ながらM16は狙撃銃に適しておりません…なんてのは結構有名な話で、あちこちで腐るほどとりあげられています。
個人的には、映画「パールハーバー」で五二型じゃんとか言って騒ぐのと同じくらい無粋なツッコミだなあ、なんて思ってますが*1、制作側の方からは、「ゴルゴは1人でいろんな事態に対処しないといけないからあえてM16を使ってる」なんて弁明見解もあったりしたようです。
実際にはモデルガンのメーカーだか友人だかからもらった資料がたまたまM16だったから、なんて話もあるようですが、真偽のほどはわかりませんし追跡する気もありませんので、この話はここで終わりです。やっぱり余計な話でしたね…。

 

 

*1:とはいえ、うちわに留める限りでは結構そういうのも楽しいんですけどね。