Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【大日本帝国】戦前日本の警察制度【組織・階級】

前回、現代日本における警察の組織や階級について書きました。

oplern.hatenablog.com

前回も書きましたが、上記記事は本日記事の前フリとなっております。
本日は、いよいよ?本題の大日本帝国というか戦前日本の警察について。

戦前日本の警察の特徴

さて、前回、現代日本の警察は自治体の権限と責任において運営にあたる自治体警察であると書きました。
厳密には、国家機関である警察庁が指揮監督しますので、完全な自治体警察とは言いがたいのですが、まあ、一応は自律的・地方分権的な警察運営となっているわけです。

これに対し、戦前日本の警察は、徹底的な中央集権的国家警察制度を採っていました。
大日本帝国の警察制度は、当初はイギリス、次いでフランス、後にドイツを模倣しています。なのですが、イギリスが自治体警察を主体とし、フランス・ドイツも部分的には自治体警察を採用していたにも関わらず、なぜか模倣したはずの日本は、他国にも例を見ないほど中央集権的な国家警察となりました。

一応、警察費の議決や判任官以下の任免は府県に委ねるなど、一部地方分権的なものもありはしましたが、それでも警察は国家事務と観念されており、組織も全国的に統一されてて、現代警察のように自治体ごとで独立したりはしてません。さらに警察首脳部は直接政府によって任命されます。

大日本帝国の警察は、後述する警保局が警察行政を掌握しており、人事・法令の立案の面で完全に統制されていました。
警保局長の地位は時の政権に密着しているため、時には警察権力を用いて政権のために奉仕することとなります。

また、大日本帝国の警察は現代の警察よりも幅広い権限を持っており、いわゆる行政警察分野において営業・衛生・工場・建設・経済に関する業務を行っていました。
警察活動については、行政警察活動と司法警察活動に区分する考え方があり、司法警察活動が犯罪の訴追や処罰の準備のための捜査活動であるのに対し、行政警察活動は犯罪の予防(防犯)と鎮圧を中心としています。
現代日本の警察では、この行政警察活動については保安と交通分野のみ執り行いますが、戦前警察では、先に挙げた営業・衛生・工場・建設・経済に関しても執り行っていました(狭義の行政警察活動)。
具体的には、これらの行政事務に関して、許可・認可等の行政処分、法規の制定、科罰の権限が認められており、必要とあらば行政検束、違警罪即決処分により個人の身体や自由を拘束し、また土地建物の強制使用、収用など個人の財産権を侵すことも可能でした。
実際に、行政検束が犯罪捜査の手段として使われるなどして濫用されていたことが指摘されています。

戦前警察の機構

警察機構としては、内務省・警視庁・府県・警察署がありました。
内務大臣が全国の警察権を掌握し、その下に警保局を置いて警察事務を行い、各府県においては、知事が内務大臣の指揮を受けて警察部で警察事務を執る、というのが、一応の警察機構の形となっています。
一応、という言葉が入るのは、前節で述べた通り、実際には警保局が警察事務全般を掌握して全国の警察部を統制していたからです。
なお、警保局自体は、捜査権や執行権を持つ警察そのものではなく、警保局官吏の大部分は警察官の権限を持たない行政官でした。

各府県の警察組織である、府県の警察と警視庁についても少し触れておきましょう。

各府県の警察の責任者は知事となりますが、実質的には警察部長が内務省警保局の指示のもとに府県知事直属であるはずの警察署長をコントロールしていました。ちなみに、警察部長は当時の官吏制度上において内務省の課長と同等となっています。
府県警察では、警察部長の下に警務課、刑事課、保安課、衛生課、工場課などの課が置かれて、警察業務を執り行っていました

東京府では、上記の府県警察の代わりに警視庁が置かれていたのですが、警視庁は知事の管理下にはありません。警視庁には警視総監を置いて内務大臣の直轄としています。
警視総監は管制上は府県警察部長と同じ単なる一地方官に過ぎませんでしたが、その政治上および警察内部の地位としては格別で内務省官吏の中でも特異な存在となっています。俸給についても府知事や警保局長より多く、次官と同等でした。
警視庁では、警視総監の下、警務部、刑事部、保安部、衛生部などが置かれています。

戦前警察の階級

警視総監の話が出たので、ついでに当時の警察官の階級についても触れておきましょう。

警察官の階級を上から並べると以下のとおりとなります。
(カッコ内は、各階級の職掌例です。)

  • 警視(警察部課長、警察署長)
  • 警部(警察署長、警察部勤務)
  • 警部補(警察部警察署勤務)
  • 巡査部長(警察署勤務)
  • 巡査(警察署勤務、派出所勤務)

見ての通り、現代日本の警察と異なり上は警視までで、警視正以上に相当する階級はありません。
なお、給与については警視、警部は国庫より、警部補以下については府県より出ていました。

最後に

さて、戦前の警察について書いてみました。
本当は、高等警察および特別高等警察についても書くつもりだったのですが、結構長くなりそうなので、そちらについてはまたの機会としたいと思います。

それにしても、大日本帝国は、その各種制度を調べるたびにディストピアとしての高いポテンシャルを感じさせてくれます。
平時から割とディストピア的傾向があった大日本帝国ですが、1937年の日中戦争勃発以降、ディストピア度が飛躍的に高くなっていくこととなりました。この「飛躍」の背景には、もともとの大日本帝国の潜在力があることは間違いないでしょう。すごいなあ大日本帝国

……なんて、人ごとみたいに言ってますが、ディストピアポテンシャルの高さは現代日本でも健在だったようで、今やアレ政権のもと、着実にディストピアに向けて「発展」していってるようです。
制度では無くて、日本の風土とか文化に根ざしたポテンシャルだったのかもしれませんね。すごいなあ日本。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

事典 昭和戦前期の日本―制度と実態