Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【フランス】国家憲兵隊治安介入部隊 GIGN(ジェイジェン)【特殊部隊】

ここ最近の記事にて、日本警察の対テロ特殊部隊SATや、SAT創設の参考となったドイツの特殊部隊GSG-9について書きました。

oplern.hatenablog.com

oplern.hatenablog.com

さて、SATは創設にあたってGSG-9を参考にしていますが、80年代〜90年代にかけては、フランスの国家憲兵隊治安介入部隊 GIGN(ジェイジェン)での研修も行っています。
(SATの装備や戦術がヨーロッパ的なのは、GSG-9やGIGNなど仏独の特殊部隊を参考にしたためだといわれます。)

本日の記事は、このフランスの特殊部隊GIGN(Groupment D'Intervention De La Gendermerie National:ジェイジェン)について簡単に紹介してみたいと思います。

国家憲兵隊とは

GIGNは、フランス国家憲兵隊に属する特殊部隊です。
本題のGIGNの話に入る前に、まずは、この「国家憲兵隊」について少し説明しておきます。

国家憲兵隊は、フランスの警察組織の一つです。
フランスには複数の警察組織が存在しますが、治安維持の中心となるのは、内務省系の警察(国家警察)と国防省系の警察(国家憲兵隊)です。
ちなみに、フランスにおける基礎自治体であるコミューン(コミュヌ)も自治体警察を設置できますが、大部分の権限は国家警察にあり、自治体警察は自治体条例の執行や予防活動などに限定されています。

国家憲兵隊は武装が強力で軍隊に近い構成となっていますが、あくまでも治安の維持を主任務としています。
歴史的にイギリスと並ぶ植民地大国であるフランスは、植民地での紛争や暴動、フランス本土に流入した植民地人が関与する半フランス運動・独立運動といった、今日でいうテロと同様の事件を早くから経験していました。
そのため、一般の警察には荷が重い重犯罪や暴動などへの対処を任務とする、国防省管掌の準軍事組織、国家憲兵隊を早期に組織しています。

現在の国家憲兵隊は、主に機動憲兵隊(暴動鎮圧やテロ対策などの国家治安維持、施設警備などを担当)、県憲兵隊(大都市を除いた地域圏の一般警察業務やハイウェイパトロールなどの交通業務を担当)、共和国憲兵隊(要人警護や儀仗隊任務、大統領府などの国の重要施設の警備などを担当)で構成されています。

上記3つの組織は実施部隊となりますが、内部部局として国家憲兵総局(DGGN)が設置されており、GIGNはDGGN直轄の部隊となっています。

GIGNの誕生

さて、GIGNが誕生するきっかけとなったのは、独GSG-9などと同様で1970年代に頻発したテロ事件です。
72年のミュンヘン・オリンピック事件、翌73年9月のパレスチナ解放戦線による在仏サウジアラビア大使館占拠事件を受け、73年11月に、国家憲兵隊に所属する優秀な隊員を選抜して治安介入部隊(GIGN)を創設しました。
翌年には作戦行動を可能としています。

GIGNの特徴

GIGNは射撃訓練を非常に重視しています。1日に2時間を射撃訓練に充てているといわれ、1年間で小銃を3000発、拳銃を9000発程度撃つのだとか。
これは、GIGNが基本的に警察組織であり、犯人の殺害を最後の手段としているためです。相手を(射殺するのではなく)制圧するためには致命傷にならない部位を撃つ必要があり、このことから隊員には並外れた射撃能力が求められるのです。

同様の目的から、事件の状況を分析し、武力行使を極力回避すべく活動する作戦評価班(CEO)も付属しており、班員が介入隊員とともに現場まで赴き、可能な限り武力に頼らない事件解決策を採ります。

GIGNでは、約20名からなる4つの班が主力部隊となりますが、この介入班すべてに警察犬とそのハンドラーが所属しており、これも警察活動を主体としていることをうかがわせる点ですね。

なお、GIGNは24時間の即応態勢を採ることから、4班は毎週月曜の朝8時を起点に、2班ごとに警戒および待機・休養を交替することとなっています。

また、GIGNは事件発生後の対処だけではなく、テロリストの調査・捜索・情報収集なども行っています。
(というか、割合的にはそっちの活動の方が多いです。)
さらには、軍事的活動を支援する目的でも、潜入工作や情報収集を行い、かつ通信線やインフラなどに対する破壊工作といった浸透作戦にも対応してます。
1995年のコモロ傭兵クーデターに際しては、DGSE(対外治安総局:フランスの対外情報機関)とともに、事前の情報収集を行ったといわれています。

GIGNが対応した事件

最後に、GIGNが対応した事件のうち有名なものについて少し触れておきます。

まずは、1994年12月26日のマルセイユ空港におけるエールフランス機ハイジャック事件。
困難な状況下で、GIGNの部隊が突入、犯人4名を射殺し、174名の人質を救出しました。
(残念ながら人質3名が殺害されました。)

もうひとつ。
ぐっと遡って1976年2月3日、アフリカ東部のジブチ共和国でフランス空軍将兵の子弟30名が乗ったスクールバスが「ソマリア沿岸解放戦線」のテロリスト6名にバスジャックされた事件。
現地に展開していたフランス外人部隊ソマリアジブチ国境でバスを包囲したものの、外人部隊には対テロ部隊がなかったため、救出作戦はGIGNが行なうこととなりました。
人質が子供であったため、突入時に大人とは違う予想できない動きをする可能性があったことから、テロリストから要求された食事に睡眠薬を混ぜ込み、子供らが寝入った時を見計らってテロリストの狙撃および突入を行なう作戦を採っています。
突入に際して、部隊がソマリア国境側よりソマリア兵の銃撃を受けるという不測の事態があり、このため狙撃・突入時間のラグが発生、人質1名が殺害されてしまったものの、テロリストを制圧し作戦を成功させています。