Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【GHQ】はじめてのサマータイムと日本での導入実績【占領下】

本日記事はたまの時事ネタで、最近話題の五輪に向けたサマータイム(夏時間)導入について……なのですが、当ブログでは時事ネタの際は少しずらした話題にすることにしてますので、途中から「はじめてのサマータイム(1916年)」と、過去に日本で実施されたサマータイムの話になります。

サマータイム狂騒曲(序章)

さて、皆さん既にご存知かと思いますが、政府・与党がサマータイム導入に向けての検討を始めたということです。
サマータイム導入提案は、今までも一部の人々から散発的に出されてましたが、今回は2020年のオリンピック・パラリンピックの酷暑対策として大会組織委員会森喜朗会長から要請されたことをきっかけとしています。

サマータイム導入については、IT関係者を中心に反対の声が上がっており、立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授は、必要とされる対応コストやリスクなどについての説明をSlideshare上で公開しており話題となっています。

www.slideshare.net

私個人の意見としては、まあ、一応IT業界に身を置いてることもあって、面白みもなにもなく普通にサマータイム導入反対なわけですが、「IT関係者」の中には、コンピュータシステムの対応はまったく問題ないと豪語されてる方もいるようです。
多くのエンジニアが懸念するITシステムへの影響を、「大丈夫」の一言で切って捨ててみせた某ITジャーナリスト氏の言によれば、

  1. コンピュータは「命令を受けた瞬間からの経過時間は、秒単位でカウントアップしていくだけで、つまり「その瞬間」しかコンピュータは認識して」いないし
  2. 「ホストコンピュータなどと接続していて、連続した情報をやりとりしているシステムなら、バチっと電源を落として、その後の立ち上げで日時の変更をすればよいだけ」
  3. だから「大丈夫」だそうです。

……まあ、コメントは差し控えさせていただきます*1

五輪のためなら日本国民の生活なんて

さておき、ITシステムにまつわる件については他のブログなどを読んでいただくとして*2サマータイムについては他にも健康面のリスクなんかが指摘されています。
日本睡眠学会からは睡眠への悪影響が指摘されており、EUフィンランドからの提案を受け廃止検討のための意見聴取をおこなっているようです。
また、省エネについても(地理にもよるが)言われるほどの効果はない、という指摘があったり。

日本でも、過去にサマータイムの是非について度々議論されてるわけですが、その都度様々な問題点が指摘され導入に至っていません。

私の個人的感想となりますが、オリンピックのために全体の時刻を2時間早めよう、なんて、ちょっとついていけないって感じです。正気か?

なお、当然というかなんというか、酷暑対策というお題目については「競技時間ずらせば済む話じゃないの?」という批判も出てます。他に、サマータイムを導入しようがステークホルダー間で時間調整できるかは別の話じゃないか、なんて話も。

はじめてのサマータイム

さて、ここから予告通りにサマータイム誕生の経緯について。
現代のサマータイムは、1908年ごろにイギリスのウィリアム・ウィレットが思いついて提案を行ったのが始まりです。3回ほど議会に提出したようですが、いずれも否決されています。
なお、イギリスやアメリカでは「daylight saving time(DST:日照節約時間)」と呼んでいます。

初めて実際にサマータイムが実施されたのは、第一次世界大戦中のドイツで、1916年4月30日からのことでした。これより3週間ほど後の5月21日にはイギリスでも実施、いずれも時刻を1時間進めています。
その目的は軍需物資の増産のためでしたが、平時になっても生産性増大とエネルギー節約を目的に継続されました。
なお、オーストリア、オランダ、デンマークがイギリスに続き、その後もヨーロッパ諸国が導入しています。

第二次大戦時のイギリスでは、2時間のサマータイムを実施してたりも。
ちなみに、現在のイギリスでは3月最終日曜から10月最終日曜までの7か月間を夏時間としています。

占領下における日本のサンマータイム

さて、あまり知られていないようですが、日本でもサマータイムが実施されていた時期があります。
当時は「サンマータイム」と呼ばれ、1948年から1951年にかけて実施されました(夏時刻法)。
これは、GHQの指導によるもので、1948年4月28日に公布、5月1日に実施というかなり無茶なスケジュールで開始したようです。
5月第一土曜日24時から9月第二土曜日25時(日曜日0時)までの間*3、夏時間として1時間進める形でした。

このサンマータイムですが、日本国民からは「残業が増えて労働条件が悪化した」とか「寝不足になった」とか概ね不評で、さらには交通機関の混雑も引き起こしたそうです。
「残業が増えて労働条件が悪化した」というのは、早く出社したところで早く帰ることはできない、という状況が現出したということですが、とても日本らしいというか、ああ、当時からぜんぜん進歩してねぇなあと思っちゃう点ですね。

ちなみに、1949年に大阪市立生活科学研究所より挙げられた批判では、日本の気候においてはサンマータイムにおける夜8時、9時では室内は未だ暑くて眠れない、(物価は上がる一方で賃金だけでは生活できないので)内職的な仕事にこの時間が充てられて睡眠不足と過労を引き起こす、と指摘しています。

上記のような不評もあって、1952年4月11日、日本独立の17日前に夏時刻法は廃止されることとなり、日本のサマータイムは終焉を迎えました。願わくば、今後も終焉したままでありますように。

 

 

*1:余計な余談。某氏が「正論」で記事を書いていると聞いて、「ああ、そういう…(察し)」などと思ってしまったのですが、偏見でしょうかね…。

*2:当ブログもかつてはITブログのつもりでしたが、今やその体をなしていません。

*3:1949年のみ4月第一土曜日24時から9月第二土曜日25時(=日曜日0時)まで