Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【大日本帝国】日本の憲兵隊組織【勅令憲兵】

前回記事に引き続き、日本の憲兵についての記事です。

oplern.hatenablog.com

今回は憲兵隊の組織構成について。
前回に引き続いて、勅令憲兵(国内において憲兵条例に服する憲兵)のお話となります。
(「勅令憲兵」に対して、戦地の野戦軍直属の憲兵隊は「軍令憲兵」といい、こちらは軍令(作戦要務令や野戦憲兵隊勤務令)に服しています。)

憲兵隊の組織

日本軍の(勅令)憲兵隊組織は、陸軍大臣に属しています。
陸軍大臣の下に憲兵司令官がおり、この憲兵司令官は陸軍中将または少将が就くこととなっていました。

憲兵司令官のもと、憲兵が置かれ、これは内地(朝鮮・台湾などの植民地を除く日本)の各師団司令部所在地に1隊ずつ、台湾・関東州にそれぞれ1隊、朝鮮に5隊置かれています。
なお、憲兵隊長には大佐または中佐が就きました。

憲兵隊の下には分隊が設けられ、これは陸海軍部隊所在地に置かれます。分隊長は少佐または大尉が就きました。

分隊の下には分遣隊が設けられ、こちらも陸海軍部隊所在地に置かれますが、陸海軍部隊がなかった沖縄県などにも分遣隊が置かれています。なお、分遣隊長は下士官が務めました。

ちなみに、東京憲兵隊は麹町・板橋・江東・赤坂・四谷・上野・渋谷・市川・習志野・千葉に分隊を置き、それぞれ1〜2の分遣隊を置いてました。

朝鮮憲兵

朝鮮の憲兵組織については、憲兵司令官の下に朝鮮憲兵が設けられ、その下に憲兵隊が置かれる形でした。
朝鮮憲兵隊には、内地とはまた異なる事情がありますので、その点も少し触れておきます。
日本による韓国併合直後、朝鮮では憲兵憲兵司令官に属さず、普通警察とあわせた膨大な規模をもっていわゆる武断政治の強行にあたりました。

韓国併合は1910年のことですが、この併合の直前に韓国警察を憲兵隊に吸収合併する憲兵警察制度が成立しています。
これにより、韓国警察の警務総長、各道の警務部長をそれぞれ朝鮮駐箚憲兵隊司令官、同憲兵隊長が兼任することで、文官警察官に対する指揮権の中枢を憲兵が掌握しました。
本来軍事権を職務とした憲兵にも普通警察事務を遂行する権限が与えられ、文官警察官の配置された警察署や巡査駐在所とともに、憲兵分隊憲兵分遣所等が警察官署として機能することとなります。

このような状況は、1919年(大正8年)に憲兵警察について一連の制度改革が行われ普通警察制度に改編されるまで続きました。
改正により、憲兵司令官に属する3400人の憲兵を800人に、4700人の朝鮮人憲兵補助員を300人の憲兵補に減らして、憲兵は軍事警察に専念することになります。

関東憲兵

租借地である関東州の憲兵隊ついては、憲兵司令官の下に関東憲兵が設けられ、その下に憲兵隊が置かれる形でした。
関東憲兵隊には、内地とは異なるろくでもない特徴がありましたので、この点についても少々。

1931年、日本は満州事変を引き起こしますが、この後、関東憲兵隊は陸軍大臣の管下を離れて、関東軍隷下に入ります。
関東憲兵隊では、憲兵が逮捕調査した現地容疑者または犯人を、軍律会議にもかけずに任地指揮官の認可を得て処刑する厳重処分というイカれた権限がありました。
(ちなみに、後には中国や南方でも同様のことが行われたそうです。)

敗戦間際の組織改編

前回も少し触れてますが、敗戦間際の1945年3月に国内憲兵(勅令憲兵)の大増員を行っています。
憲兵司令部の下、一県一憲兵隊とする臨時編成が行われ、拠点が拡大されました。
これにより、北部・東北・東部・東海・中部・中国・四国・西部・朝鮮・台湾*1憲兵隊司令が設けられ、その下に府県単位に地区憲兵が配置されます。
(朝鮮・台湾を除く地区憲兵隊数48、分隊176)

敗戦後の組織改編

憲兵隊は、敗戦後にも組織改編が行われました。
こちらも少し前回で触れてるのですが、今回は憲兵組織の話ですので、かぶる部分もありますが再度取り上げておきます。

敗戦後、治安維持と陸軍兵力の温存を目的として、憲兵部隊の大増強が行われました。
これにより、憲兵司令部に軍司令部並の副官部・参謀部・警務部等を置いています。
また、各憲兵隊司令部を師団司令部並の組織として、司令官に中将を充て、また、各府県の地区憲兵隊長にも中将を充てることとしました。
さらに、臨時憲兵隊として11万人の一般歩兵部隊を編入しています。

まあ、こんな狡い手が連合国に通じるはずもなく、普通に順当に1945年9月から10月にかけて解隊されて、日本憲兵隊は消滅することとなりました。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

戦時用語の基礎知識

事典 昭和戦前期の日本―制度と実態

 

 

*1:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、善通寺、福岡、京城台北