Man On a Mission

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【大日本帝国】憲兵になるには【陸軍憲兵学校】

さて、今回も日本の憲兵についての記事です。
今回は、憲兵のなり方について。

なお、憲兵についての以前の記事はこちら。

oplern.hatenablog.com

oplern.hatenablog.com

憲兵への道

憲兵への道などと一口にいってますが、実際のところ、憲兵将校と憲兵兵では事情が異なります(あたり前ですが)。

憲兵将校の場合

まずは憲兵将校から。
憲兵は、他の兵科/兵種と異なり、最初から憲兵として入隊するわけではありません。
大尉または中尉のときに、他兵科から転科し憲兵となります。
なお、陸軍憲兵学校昭和11年までは憲兵練習所)で各種教育を受けました。

余談ですが、陸軍部内においては「憲兵は軍人にあらず」なんて言われることもあり、あまり強い立場ではなかったようです。
憲兵将校は陸軍大学校に進学しないので(陸大卒業後転科した例はあり)将官になりにくく、その結果、憲兵出身者が憲兵トップである憲兵司令官になることは多くありませんでした。
(昭和期の憲兵司令官15人のうち、11人が歩兵科など他兵科出身です。)

憲兵兵の場合

憲兵兵も将校同様、最初から憲兵として入隊することはありません。
在隊者が志願するか、または指名されることで憲兵兵への道を踏み出すことになります。
(「志願」とはいっても事実上は部隊で品行、成績の良い者が選抜されています。)

在営5ヶ月以上の兵から選抜(試験もあり)され、憲兵学校(外地では憲兵教習隊)で教育する方法が採られました。

なお、入営1年で憲兵上等兵とし、在営2年で他の同年次兵と同様に満期除隊となります。
ただし、除隊せずに憲兵下士官を志願することもできました。

ちなみに憲兵志願者については、昭和8年の例で、兵としての出世競争に落伍したり、前線に立つことが少ない後方部隊としての憲兵なら生き残る可能性が高くなるといった志願理由がみられたようです。

陸軍憲兵学校

憲兵教育が行われる陸軍憲兵学校についても少々。

陸軍憲兵学校は、憲兵に必要となる教育を施す学校ですが、前述の通り1936年(昭和11年)までは憲兵練習所でした。
昭和12年7月31日勅令第378号陸軍憲兵学校令により、陸軍憲兵学校となります。

教育期間は士官が1年、下士官憲兵兵が6ヶ月です。他に少尉候補者1年、下士官候補者教育が1年とされていました。
教育内容としては、法律・科学・軍事学憲兵実務・教練・馬術・射撃・剣術・柔道などが挙げられます。
所在地は東京中野で、「スパイ養成学校」として有名な陸軍中野学校とは背中合わせの敷地にありました。

余談ですが、中野学校はその存在が秘匿されて東部三十三部隊と称しています。中野学校の存在が一般に知られるようになったのは戦後のことです。
このため、憲兵学校の卒業生が、戦後「中野学校」とは陸軍憲兵学校のことだと思い込んでいたなんて話があります。
(教育内容に類似したものがあり、満洲中国南方では、両校の卒業生が似たような任務についてたりするので、間違えるのもしょうがない面があった模様。)

憲兵になろう

ついでに、憲兵兵になるまでの実例を紹介しておきます。
1942年(昭和17年)の中支那派遣憲兵隊の例。憲兵学校ではなく憲兵教習隊での教育です。

まず、憲兵志願後、選抜試験を受け合格したものが教習隊に入隊することとなります。
選抜試験について学歴による差別はありませんが、内容は科目・常識・読書力・作文・筆跡・数学などで、なかなか難しかったようです。連隊から100名ほどの志願者があったものの合格者は2名だけだったとか。
ちなみに、このときの数学試験はピタゴラスの定理だったそうです。

試験を突破できたら、憲兵教習隊に入隊し教育を受けることになります。
教育内容は、法学概論・軍刑罰法・警察法・秘密戦・刑罰法規・刑事訴訟法・司法・経済学・科学・中国語などがありました。特に中国語は毎日教育を受けたとか。
他に、柔道・剣道・馬術・捕縛術・刀/拳銃の操法などの術科もありました。

1日のスケジュールとしては、午前7時起床、30分ほど剣道の練習、7時半から朝食、8時から午後4時ごろまで各種講義、その後、術科といった具合でした。

教習隊入隊の半年後にまた試験があり、これに合格しなければ、憲兵になれずに原隊復帰となります。
なお、勉強はほとんどが丸暗記するもので、夜9時の消灯後も、明かりのある場所でこっそり勉強したようです。
とはいえ、日直下士官に見つかればそこで勉強終了で床につくことになります。
試験2ヶ月前からは夜11時までの勉強が認められたそうです。

試験に合格すれば卒業証書を授与され、晴れて憲兵隊に配属されます。

おまけ:憲兵スタイル

憲兵の軍装についても少し触れておきます。

憲兵の服装に特徴的なのは、マントと腕章です。
憲兵マントはフランスの巡査が着ていたような短マントで、憲兵腕章は1923年(大正12年)に制定され、幅12センチの白綿地に「憲兵」と朱書きされていました。

また、憲兵は、本来は上級下士官曹長)に許されていた軍刀、長靴、拳銃が兵の身分でも支給されています。
軍刀は俗に「曹長刀」といわれた下士官軍刀で、はじめサーベル型の32年式軍刀が、後には「日本刀」風の九五式軍刀になりました。
拳銃は口径8mmの一四年式拳銃および九四式拳銃を用いています。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

戦時用語の基礎知識

事典 昭和戦前期の日本―制度と実態