Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【銃弾の威力】銃弾が人体に当たると…【銃創】

前回、前々回は日本軍で使用された十四年式拳銃、九四式拳銃について書きました。

oplern.hatenablog.com

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上記だけでなく、以前にはM16AKシリーズなど銃についての記事をいくつか書いてるのですが、これら過去記事では銃に撃たれたら何がおこるのかといった、銃の脅威については触れていません。
武器・兵器について語る場合、「これらが行使された場合になにが起こるか」知っておくことは割と大切なことだと私は考えています(でないと現実から乖離した「娯楽コンテンツ」として消費されがちになるので)。
とか言ってる割に、今までの兵器関連の話でそのへんまで書いた記事は少なかったりするので、今回はそれを補う意味で、銃弾が人体に当たった場合になにが起こるのか、どういったダメージを受けるのかについて書いてみます。

銃のごくごく基本的な仕組み

さて、本題に入る前に、前提となる知識を少々。

そもそも、「銃」とはどんなものかというと、概ね「火薬(発射薬)を密封された空間のなかで燃やし、その結果発生するガスの圧力を用いて弾丸を発射する武器」といえます*1

現代の銃では、主に弾丸と火薬と点火装置(雷管)を薬莢(やっきょう)という金属の筒で一つにまとめた「弾薬(カートリッジ)」を利用し、弾丸発射後に薬莢は銃より放出(排莢)されます。
(昔の銃(19世紀半ば頃まで)では、弾丸と火薬はまとめられておらず、銃口から火薬を注いだ後、弾丸を棒で押し込んで、なんらかの方法(火縄とか火打石)で火薬に点火、発射していました。)

弾薬には多数の種類があり、それぞれによって威力が異なります。例えば、M16ライフルなどで使用される5.56x45mmNATO弾と、AK-47などで使用される7.62x39mm弾では、口径・重量ともに大きな7.62x39mm弾の方が(一応)高威力だといわれています。

なお、どの弾薬が使用できるかは銃によって異なり、口径(弾丸の直径)や薬莢の形状・寸法などが影響します。
極端な例だと拳銃用の弾薬をライフルで使うことはできませんし、同じ拳銃用弾薬でも口径・薬莢形状などが異なれば使用できません。また、口径や薬莢形状などが同じでも、ガス圧が高いため使用できない(破裂事故の危険がある)なんてケースもあります。

弾薬の「威力」

前述の通り、銃の威力は主に弾薬によって変わってくるわけですが、それぞれの「威力」の比較については、一応の指標としてジュールを用いることがあります。
ジュールの計算式は、速度(m/s)の2乗×重量(g)を2000で割ったもので、より弾頭が大きくてより初速の速い弾薬が大きな値となります。例を挙げると、5.56x45mmNATO弾(SS109)は大体1800J程度、7.62x39mm弾は2100〜2200Jです。

数値上は7.62x39mm弾の方が上なのですが、じゃあ、7.62x39mm弾の方がいつも5.56x45mmNATO弾より大威力なのかというと、必ずしもそんなわけではなく、例えば着弾した距離や、弾頭の設計(構造や重心設計)などによって殺傷力は異なってきます。あくまでも目安であり、実際にはゲームのようにダメージ値:xという感じで単純化することはできないわけです。

ちなみに9mmパラベラム(拳銃弾)は弾頭重量8g、初速350m/sで490Jとなりますが、成人男性が乗った自転車は662Jです。これだけで単純比較すると自転車の方が殺傷力が高いこととなります。まあ、自転車も危険といえば十分危険なのですが、それでも指標一つで威力を計測するというのは、現実から乖離しがちなことがわかりますね。

銃弾が人体に当たると何がおこるのか?

ようやく本題です。
一般に銃弾が人体に入ると、まず瞬間的に周辺の組織を大きく押し広げます。
(速度衝撃による一時的空洞。弾丸の直径の10倍以上の大きさだといわれています)
その後、組織はいったん収縮しますが、弾丸は小さく組織を押し広げながら進んでいきます。途中で骨に当たり向きを変えることもあり、その場合、骨は折れたりヒビが入ったりしてダメージを受けるわけですが、影響は骨だけにとどまらず特に肋骨や胸骨が砕けたりすると骨の欠片が血管や神経、内蔵を損傷することもあります。

日本では銃器による犯罪も少なく、銃創を見たことがある人はほとんどいません。そのため、銃弾が人体に命中した場合は弾丸直径ほどの小さな孔が穿たれる程度で、脳や心臓などの急所に当たれば死亡するが手足に銃弾を受けても死亡しないと思っている人が多いようです。
上記は、拳銃弾についてはある程度当てはまり、例えば大腿部に命中したとして、弾丸は貫通して身体表面に弾丸直径よりやや大きい孔が空くものの、骨には亀裂骨折が生じる程度でほとんど致命傷とはなりません。

しかし、ライフル弾ともなるとまるで事情が異なり、手足に命中した場合でも致命傷となって短時間で死に至るおそれがあります。
ライフル弾は拳銃弾よりも遥かに高速なため、人体命中時の衝撃力も凄まじいものです。弾丸直径の30〜40倍の広範囲にわたり組織欠損をもたらすこととなり、骨や血管、神経組織を破壊します。
例えば、先の拳銃弾の例と同じく大腿部に命中した場合、大腿骨骨折により1000mlの出血*2をおこします。人間の血液量は体重の13分の1、体重60kgなら約4.5リットル程度といわれますが、出血などで3分の1以上を失うと命の危険があるとされますので、これだけで相当量の失血です。
さらに大腿骨周辺は筋肉量が多く血流が豊富なため、大腿動脈と静脈の両方を離断した場合、3分で死亡するといわれています。

ちなみに、近年、イラクアフガニスタンなどでの武装勢力との交戦では骨盤付近が狙われることが多いのですが、骨盤が銃弾で粉砕された場合の出血量は1500ml〜2000mlとなり、止血の難しさもあって致命傷となります。

後ろに吹っ飛んだりはしない

人間は銃で撃たれた場合、(当たりどころにもよりますが)その場で崩れ落ちるか、前に向かって倒れこみます。
フィクションで見られるように、後ろに吹っ飛んだりすることはありませんし、ついでに派手に血しぶきをあげたりもしません。
人体に当たった弾丸エネルギーは衝撃波となって体内を伝搬、内臓や血管を破壊します。身体全体を後方に動かすような働き方はしないのです。

感染症と四肢切断

第二次世界大戦ごろまで手足に銃創を受けると、その多くは治療のため切断せざるを得ませんでした。
これは主に土中に存在する細菌が傷口から体内に侵入し、筋肉など身体の一部の組織が壊死する感染症を引き起こすためです。

第二次大戦後は、抗生物質をはじめとする医学の発展により、戦傷における四肢切断は減少しましたが、近年は小銃弾の高性能化や戦闘の様相変化などにより、再び四肢切断が増加する傾向にあります。

体内の弾道を観察しよう

体内に入った弾丸の弾道は、人体とよく似た密度と粘性をもつバリスティック・ゼラチンで観察することができます。
専用のゼラチンパウダーを型に入れて、お湯で溶かして冷やすと出来上がりです。大抵は大きな直方体に固めます。

弾道を観察すると言っても、普通、日本で銃を撃ったりすることはできませんので、ネット上で画像や動画を見るくらいなのですが、結構大量にアップされてるので、大抵の弾薬は弾道を見ることができます。
参考まで、5.56x45mmNATO弾(M855)のリンクを貼っておきます。


5.56x45mm NATO M855 slow motion ballistic gelatin

「ballistic gelatin」とか「ballistic gel」で検索すると、色々出てくると思います。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

銃のギモン100

イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 -COMBAT FIRST AID-

 

 

*1:例外もありますが、ここでは触れません。

*2:大腿骨そのものが血液を蓄えています。