前々回は海軍とアイスクリームについて取り上げました。
もののついでで、今回は海軍カレーについて取り上げたいと思います。
といっても、カレーそのものについてではなく、海軍カレーにまつわる「伝説」について。
日本海軍の料理といえばカレーですよね?
日本海軍の料理といえばカレーを連想する方が多いと思われますが、実際には、日本海軍で特別視されてるとかいうわけではありませんでした。
材料となる野菜が常温でも(比較的)長時間保存でき、栄養価も豊富、作り方も簡単な上、一度に大量に作れる大鍋料理と、海軍料理として優秀ではあるのですが、頻繁に供されるわけでもなく、月一程度で出てくる普通の食事だったようです。
毎週金曜日はカレーの日ですよね?
よく「曜日の感覚を失わないために毎週金曜日にはカレーが出た」なんて語られますが、これは自衛隊の話であって、日本海軍の話ではありません。
(ちなみに、自衛隊の「金曜カレー」ですが、週休2日制になる前は「土曜カレー」だったりします。)
前述の通り、日本海軍では月に1回程度の頻度で、かつ特定の曜日に出すなんて決まりはありませんでした。
余談ですが、現代の米海軍では、「金曜カレー」ならぬ「水曜バーガー」があったりします。
ご飯にカレーをかけるのは海軍発祥ですよね?
これも、俗説というか伝説に過ぎないようです。
日本人とカレーが出会った頃の記録に、既にご飯にカレーをかけて食べてる様子が出ています。
まずは1863年。遣欧使節団の三宅秀(みやけ ひいず)の記録。乗り合わせたインド人の食事風景について「飯の上にトウガラシ細味に致し、芋のドロドロのような物をかけ、これを手にてかきまわして手づかみで食す。至って汚き物なり」と、かなり失礼なことを書いてます。
次に1870年。当時、会津白虎隊の一員であり、後に日本最初の物理学者となる山川健次郎の記録にカレーが出てきます。
留学生としてアメリカに向かう途中、慣れない西洋食に苦しんでいたところ、ライスカレーなるものを見つけ、米飯があるからという理由で注文しています。
せっかくのライスカレーだったのですが、ライスにかけるべきカレー(山川いわく「あの上につけるゴテゴテしたもの」)は「食う気になれない」とのことで、「杏子の砂糖漬けがあったから、これを副食物にして米飯を食し」たそうです。
そんなわけで、日本海軍がご飯の上にカレーをかける「発明」をしたわけではありません。
けど、ライスによく絡むよう小麦粉でとろみをつけたのは日本海軍ですよね?
日本に入った時点で、既に小麦粉が材料に含まれていました。
日本海軍発祥の工夫ではありません。
主な参考資料
本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。
海軍さんの料理帖