Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【世界のマイナー戦争犯罪】メリッソ村民虐殺事件【日本軍】

戦争には戦争犯罪*1がつきものです……というとさすがに極端すぎるかもしれませんが、残念なことに割とつきものだったりします。

日中戦争やら太平洋戦争やらでは日本軍が各地で戦争犯罪を起こしてますが、一方でアメリカやオーストラリアなど連合国側にも戦争犯罪が見られました。

太平洋戦争におけるアメリカの戦争犯罪といえば、東京大空襲や原爆投下などの無差別爆撃をイメージされる方が多いかもしれませんが、他にも捕虜の拷問や殺害が起こっています。
また、沖縄戦においては米兵による現地住民に対するレイプが多発しました。ジョージ・ファイファー氏は沖縄戦のレイプ被害者数を1万人以上と推定しています。
オーストラリアの戦争犯罪例については、以前、ナウル守備隊の「死の行進」を取り上げてますので興味があればご参照下さい。

oplern.hatenablog.com

上記は太平洋戦争の例ですが、もちろん「現代戦」においてもこういった戦争犯罪は多発しています。口幅ったいことを言うようですが、一部の方々が主張するような、規律正しい軍隊による正しい戦争、なんてのは妄想の中にしか存在しないのです。

さておき、戦争犯罪といえば、日本軍による南京事件ナチスドイツのユダヤ人虐殺がよく知られています。
今後、当ブログでも折りに触れて(気が向いたら)戦争犯罪についてちょくちょく取り上げていこうかと思ってるのですが、南京事件のような有名な戦争犯罪だと、いろんなところでよく取り上げられてますので、一般にはあまり知られていない戦争犯罪について取り上げていくことにしました。
南京事件については、こちらのサイトが有名ですね。)

ちなみに、当ブログでは少し前に沖縄の石垣島で起こった戦争犯罪である「石垣島事件」を取り上げています。

oplern.hatenablog.com

一般的にはあまり知られてない戦争犯罪事件ですが、石垣島日本海軍警備隊が、捕虜となったアメリカ人飛行士3名を殺害したものです。

今回取りあげるのも、石垣島事件同様にあまり知られていない戦争犯罪、日本軍によるグアム島メリッソ村民の虐殺事件を。
(記事タイトルは「世界のマイナー戦争犯罪」と謳ってるのに、またしても日本軍の戦争犯罪ですが、まあ、他国のもそのうち取り上げます…。)

メリッソ村民虐殺事件

メリッソ村民虐殺事件は、1944年7月15日、16日に、グアム島南部のメリッソ村民が日本軍に虐殺された事件です。

グアム島への米軍再上陸直前の7月15日、メリッソ村民のチャモロ人800人が、日本軍によりガオス谷に連行されました。連行された者のうち、家族内に米軍関係者がいる者、体格の優れた者約30人(内4人は女性)が選ばれ、近くのティンタ壕内で手榴弾による殺害が行なわれました。これにより16人が死亡しますが、14人は生き残って壕から脱出します。
この生存者が村民に通報したことで、事件は明るみに出ることとなりました。
翌16日にも30人の男性メリッソ村民が連行され、ファハで殺害されましたが、こちらについては生存者がいないため、詳細は不明です。

2日合わせて46人の犠牲者を出すこととなったわけですが、これにメリッソ村民は黙っていませんでした。メリッソ村民約10人が7月20日に、現地日本軍守備隊員らの施設に報復攻撃を行います。これにより、日本軍関係者十数人が殺害されました。
この際、現場に居た食料生産隊の開墾隊員1人が生き残り、海軍警備隊に通報しましたが、7月21日には米軍が再上陸しており、戦況が混乱していたことから何の対応も取られていません。

メリッソ村民虐殺の理由は明らかになってないのですが、一説では、メリッソ、ウマタック、イナラハンなど島南部の守備任務を持つ大隊に所属する中尉の命令によるもの、と旧陸軍関係者の間では伝えられているそうです。
(当事者がまもなく戦死したため、真偽不明。)
なお、当該事件について戦犯として起訴された日本人はおりません。

戦後、米国政府は当該事件を含む日本軍占領期および米軍上陸作戦の際のチャモロ島民の犠牲者および遺族に対して補償を行っています。死亡の場合の最高限度額は4000ドルとのことですが、15日の虐殺の生存者である女性、ルイサ・バザにはその負傷に対し、1098ドルが支払われたそうです。

現在、ファハとティンタの虐殺現場には受難碑が建てられており、毎年7月には慰霊祭が行なわれ、犠牲者への祈りが捧げられています。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

世界戦争犯罪事典

 

 

*1:実のところ、一口に「戦争犯罪」といってもその定義はあまり明確ではありません。狭義の戦争犯罪としては、ハーグ陸戦規定などの戦時国際法規に違反する民間人や捕虜への虐待・殺害・略奪、軍事的に不必要な都市破壊などが挙げられますが、一般的には、これに含まれないユーゴスラヴィアルワンダ内戦での虐殺、ナチスドイツのアウシュヴィッツなんかも戦争犯罪とされています。当ブログではあまりこだわらず、一般的イメージとしての「戦争犯罪」を扱いますのでご承知おきください。