Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【ソ連】KGBを(ちょっとだけ)知ろう【国家保安委員会】

前回、前々回の記事にて、ロシアの特殊部隊(スペツナズ)である「アルファ」、「ヴィンペル」について取り上げました。

【警察系特殊部隊】ロシアの特殊部隊 アルファ【スペツナズ】 - Man On a Mission

【警察系特殊部隊】ロシアの特殊部隊 ヴィンペル【スペツナズ】 - Man On a Mission

アルファ、ヴィンペルとも現在はロシア連邦保安庁FSB)に属する特殊部隊なのですが、その創設については旧ソ連KGBのもとで行なわれています。
で、そのKGBについて、上記記事では何の説明もなくKGBKGBと連呼してたりするのですが、読まれた方もその点については特に違和感を持たれないかもしれません。
KGBは映画などのフィクションへの登場頻度も高く*1、名前自体は広く知れ渡っています。しかし、KGBの実態について知っている方はけして多くありません。
一般的にKGBというと、諜報機関とかスパイとかいうイメージがあるのですが、実際にはソ連邦政府付属の公安機関であり、諜報のみならず様々な任務をこなしている巨大な機関でした。

今回は、このKGBについて(ちょっとだけ)知っておこうという記事です。

国家保安委員会(KGB

ソ連国家保安委員会(KGB)の端緒は、ロシア革命の際に設置された非常委員会(ChK:チェーカー)までさかのぼれます。
KGB職員のことを「チェキスト」と呼ぶことがありますが、これは非常委員会に由来しています。)
チェーカーは1922年に廃止されますが、その後継機関が激しく変遷しつつも連綿と続き、1954年にKGB誕生と相成りました。
以降、KGBは1991年にソ連が崩壊するまで存続しています。
なお、KGBはロシア語では「カーゲーベー」となります。ちなみに国家保安委員会は「コミテート・ゴスダルストヴェンノイ・ビィエゾパースノスチ」。

KGBは非常に巨大な機関で、時期によって変化はあるものの、十数の総局や局からなっており、総局ともなると、ちょっとした官庁に匹敵する規模を有していました。
アメリカではCIAやNSAが情報収集や分析、スパイ摘発や凶悪犯検挙はFBIが行いますが、KGBはその両方とも担当しています。他にも要人警護や国民監視・思想統制、国境警備や入国管理なんかもKGBの所管です。
ソ連に入国しようとすれば、空港などで入国審査を受けることになりましたが、その担当官もKGB所属なのです。
国境警備は、KGB「国境軍総局(GUPV)」隷下の「国境軍」が担当します。「国境軍」は一般にいう国境警備隊なのですが、他国と比較すると重装備で(戦車も保有)、外国の軍隊が侵攻してきた場合には、正規軍が到着するまで持ちこたえることが求められてたりします。第二次世界大戦で最初にナチス・ドイツ軍と矛を交えたのも、国境軍でした。
また、以前の記事でも取り上げた通り、KGBはアルファやヴィンペルといった特殊部隊も従えています。

KGBは、ソ連でも最も優秀な人材の集まる機関でした。かつ、巨大な組織であるということも相まって、幾多の大物を排出しています。
現ロシアのプーチン大統領は有名ですが(KGB第1総局所属)、他にも、アンドロポフ書記長、ゴルバチョフ政権下で外相を務めたシュワルナゼ(後、グルジア大統領)などが挙げられます。

KGBの主要機関

KGBを構成する組織・機関について、主だったものをいくつか。

まず第1総局。
第1総局は、対外諜報を任務とし、一般にイメージされる「KGB=スパイ/諜報機関」に合致する組織です。
第1総局隷下には、防諜を担当する「K局」、非合法活動を担当する「S局」、科学技術情報を収集する「T局」、電波傍受を行なう「電子偵察局」などがあります。
以前取り上げた特殊部隊「ヴィンペル」は、「S局」に所属していました。
ちなみに、現在ロシアには、第1総局の後継機関としてロシア対外情報庁(CBP)があります。

次に第2総局。
第2総局は国内監視を任務とし、外国のスパイや反ソ的な国民の監視、重要産業や交通インフラの保護などを担当します。
第2総局隷下には、情報分析を担当する「A局」、国・地域別に情報収集を行なう第1〜5局、外交関係施設の警備を行なう「第10局」などがあります。

他にもざっと挙げると、第3総局はソ連軍の監視を担当、第4局は反ソ分子の取締りや輸送インフラ保安、第7局は捜査機関ですが以前取り上げた特殊部隊「グループA」、後のアルファが所属しています。第8総局は盗聴や盗聴対策、政府通信システムの運営、第9局は政府や共産党員の要人警護。
他にもまだまだありますが、とりあえずはこんなところで。

 

 

*1:とはいっても、ソ連が健在だった時代の話ですが…。