Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【日本軍の階級】陸軍将校の退職【予備役・後備役・退役】

前回は、日本陸軍の将校における階級昇進(進級)についての記事を書きました。

oplern.hatenablog.com

過去、日本陸軍の階級について書いた記事でも触れたことがあるのですが、下士官以上では、各階級ごとに現役定限年齢というものが定められています。
これが何を意味するかというと、例えば少尉は満45歳、少佐は満50歳というように定められた現役定限年齢に達した場合、現役を去ることとなりました。
ここでいう「現役を去る」とは、予備役に編入されることを意味しており、これは平和な時期においては実質的な退職です。

陸軍士官学校を出て将校になっても、現代の定年と同じくらいまで現役として軍にとどまることが出来るのは将官まで出世した者だけで、佐官は50歳代、尉官は40歳代くらいで現役を去りました。
(各階級の現役定限年齢については、後ほど掲載します。)

今回記事は、こういった日本陸軍将校の「引退」についてもう少し突っ込んだお話を。

現役・予備役・後備役・退役

何の気無しに将校将校と言ってきましたが、実のところ、将校は現役・予備役・後備役・退役の4種類に分けることができます。
現役は、普通にフルタイムの専従者として軍隊に勤務している状態ですが、これに対して予備役・後備役は、普段は民間で生活を送り、必要に応じて軍に戻り一定期間指定される職務につくものです。予備役・後備役のものを軍に呼び戻すことを召集といい、召集解除後は元の生活に戻ることになります。なお、予備役・後備役では、予備役の方が優先的に召集されました。一応。
最後に退役です。現役・予備役・後備役のいずれにも入らない者を退役と言いましたが、将校・准士官下士官は終身官ですので、退役しても退官しない限りは軍人です。
(退官は、処分により免官になる等の場合に限られ、通常はありません。)
退役しても将校のままですので、陸軍大将とか陸軍中将とかの官名を保持し、終生軍服を着け、階級に相当する礼遇を受ける権利を有しました。

なお、現役について少し補足を。
現役将校でも必ずしも現職とは限らず、病気や事故、懲罰などで休職・停職になったものも現役に含まれました。
また、軍法会議で有罪の宣告を受け、軍刑務所で服役中の者は現役者数に算入されますが、刑期は現役日数に入りません。
ちなみに、軍の予算定員、また常備兵力量は、原則として現役服務者の数を指しています。

陸軍将校の現役低限年齢一覧

冒頭で述べた通り、各階級の現役定限年齢です。年齢は満年齢です。
1943年10月時点の兵科についてのものとなっております。

大将:65歳
中将:62歳
少将:58歳

大佐:55歳
中佐:53歳
少佐:50歳

大尉:48歳
中尉:45歳
少尉:45歳

なお、日本軍における「元帥」は階級ではなく、称号なのですが(特旨(とくし)によって元帥府に列せられた陸海軍大将が「元帥」となります)、一応、単なる「称号」でしかないわけではなく、元帥になると現役定限年齢が終身となりました。なんと、生きている限りは大将の給料をもらえるわけです。

ちなみに、将校では無いですが、兵科における准士官下士官の現役定限年齢は40歳でした。

予備役・後備役への編入から退役まで

平和な時期においては、陸軍将校にとっての「退職」といえる予備役・後備役への編入について見てみましょう。

上記に現役定限年齢を挙げましたが、例えば、大佐の場合なら少将に進級できない限り、55歳に達すると現役を退くことになります。
しかし、実際には55歳まで大佐のままでいることはなく、もっと早い時点で、進級出来る者は進級し、そうでない者は予備役に編入されました。

将校・准士官下士官は、予備役を志願するか、あるいは軍より転役を命令された場合に予備役編入となります。
また、現役のままでも補職の命がないと待命となり、"俸給はあるが職はない"という状態になりました。この場合の待命期間は1年で、それが過ぎて補職されないと休職に、さらに休職期間2年が過ぎると予備役に編入されます。
なお、予備役編入の前段階として必ず「待命-休職」があるとは限らず、前述の通り本人が志願した場合や、健康状態などの関係で直接予備役になることも多く見られました。
ちなみに、予備役軍人が召集され現職に復帰した場合、その身分は「現職にある予備役軍人」であり、「現役に復帰した元予備役軍人」ではありません。
(一応、召集された予備役軍人が現役に復帰する例もありました。)
平時の定員では、中佐進級までに士官学校同期の3分の1が整理され、軍を去ることとなったようです。

現役定限年齢に達した日の翌3月31日には予備役期間も終了し、その後は後備役に編入されました。後備役期間は6年で、その後は退役となります。

1941年(昭和16年)には後備役がなくなり予備役に統合されました。以降、現役定限年齢後6年間が予備役ということになります。

ついでの余談。軍人の経歴をみると、予備役編入の年月は記されていても、後備役編入や退役の年月は書かれていないことが多いです。
例えば、宇垣一成大将は1931年(昭和6年)に予備役になり、上記事情からその後はずっと予備役なんて思われてるケースがありますが、当然いつまでも予備役というわけではなく、満65歳に達した翌年、1933年(昭和8年)に後備役、1939年(昭和14年)には退役となりました。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

図解・日本陸軍歩兵

事典 昭和戦前期の日本―制度と実態