【大日本帝国】日本海軍艦艇の建造費 その1【空母・巡洋艦・駆逐艦】
しばらく前に、日本陸軍の軍人の給料についての記事を書いています。
上記は、陸軍軍人の給料に関する一連の記事を最後にまとめたものですが、基本的な俸給以外に加俸や手当なんかについても少し追ったり、当時の物価についても言及したりしたので、予想外に多数の記事を書くことになってしまいました。
その後、ついでに、陸軍将校退職後に支給される恩給とか、金鵄(きんし)勲章による年金なんかについても書いてます。
これらの記事に乗じて、今回もお金の話。
本日は、日本海軍艦艇の建造費がどれくらいだったのか、いくつか具体例を挙げてみようという記事です。
海軍艦艇の金額
実のところ、大和型戦艦については以前記事にしています。
1941年7月19日調整の「5計画艦艇製造費予算表」によると、製造中止となった大和型戦艦の建造費は2億8153万6000円、現代換算額2861億8022万2980円です。
2007年に竣工した海自のイージス護衛艦「あたご」は1475億円でしたので、大和型戦艦はイージス艦2隻分に相当したわけですね。
今回取りあげる艦艇は、空母、巡洋艦、駆逐艦です。なお、金額は計画建造予算からとなっております(建造中止となったものも含まれます)。
建造費だけ挙げて終わりというのも何なので、いくつかの艦艇には簡単な説明もつけてみました。ただし、とても雑な説明となっているので、正確に詳しく知りたいという方は、書籍などでお調べ下さい(なげやり)。
また、建造費のおおよその現代換算額も付けてます*1。それから、艦型の後ろの数字は基準排水量*2となっています。大きさの目安にでも。ちなみに、クソでかいことで有名な大和型戦艦の基準排水量は6万4000tです。
なお、日本海軍の艦艇種別については以前、記事を書いてますので、そちらをどうぞ。
それでは、以下、建造費の例を挙げていきます。
航空母艦
改大鳳型(3万400t):1億3055万円(現代換算額:約1220億1500万)
雲龍型(1万7250t):9344万2000円(現代換算額:約873億3300万)
雲龍型について少し。雲龍型は「飛龍」の図面を流用した戦時急造空母です。雲龍は1944年8月に竣工しますが、マリアナ沖海戦やら台湾沖航空戦やらで航空機は潰滅状態にあり、搭載すべき航空部隊はありませんでした。搭載機を持たないまま、フィリピンへの緊急輸送に用いられましたが、宮古島近傍で米潜水艦の雷撃を受け、輸送していた桜花が誘爆し沈没しています。
巡洋艦
31糎砲搭載巡洋艦(3万3000t):1億3593万1000円(現代換算額:約1381億7300万)
伊吹型(1万2000t):6000万円(現代換算額:約609億9000万円)
改阿賀野型(8520t):4838万円(現代換算額:約452億1700万円)
阿賀野型について少し。阿賀野型は水雷戦隊の旗艦用として建造されました。従来の水雷戦隊旗艦だった5500t型の主砲が14センチだったのに比べ、阿賀野型は15.2センチ砲連装3基6門に強化されています。ところが、この15.2センチ砲、見た目は砲塔形式のようですが、装填方法は人力装填となっており、発射速度の維持に難点がありました。偵察能力の向上にも力が入れられ、従来は1機しか搭載できなかった水上偵察機を2機運用可能としています。
駆逐艦
秋月型(2980t):1782万400円(現代換算額:約181億1400万円)
夕雲型(2570t):1742万4600円(現代換算額:約177億1200万円)
松型(1260t):961万4000円(現代換算額:約84億9700万円)
秋月型は、空母機動部隊に随伴する「防空」駆逐艦です。空母に随伴して遠距離作戦をこなすため、軽巡洋艦である「夕張」に匹敵する大きさとなりました。
夕雲型は、太平洋戦争中に量産された駆逐艦です。主力駆逐艦として苛酷な戦場に投入されており全艦が戦没しています。
松型は、戦時急造のため艦型を小型にして性能を抑えた駆逐艦です。1942年後半からのソロモン攻防戦で駆逐艦を大量に消耗したことで、1943年2月に計画がまとめ上げられ、1944年4月に1番艦「松」が竣工しています。特徴として、二組のボイラー(汽缶)とタービンを縦に交互配置したことが挙げられ、これにより、一組の機関が損傷してももう一方の機関が生き残る確率が高くなりました。
次回予告
さて、空母、巡洋艦、駆逐艦の建造費について挙げました。
艦艇建造費ネタはもう少し引っ張る予定で、次回は潜水艦と海防艦の建造費について取りあげます。たぶん。
参考資料
本記事を書くにあたり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。
図説日本海軍入門