Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【世界のマイナー戦争犯罪】万県事件【イギリス】

2019年4月15日、石垣島事件の慰霊祭が行なわれたそうです。

石垣島事件は、太平洋戦争末期に日本海軍警備隊が、捕虜となったアメリカ人飛行士3名を殺害した事件です。以前に記事にしてますので、詳細はそちらをご覧ください。

oplern.hatenablog.com

慰霊祭については、こちらで報じています。

www.youtube.com

関係者によると、来年は75年の節目を迎えることからアメリカからも多くの遺族らに参列してもらおうと準備を進めるとのことです。
今現在、国民の多くは「戦争を知らない」世代となりましたが、このような話を聞くと、多少なり太平洋戦争を身近に感じられないでしょうか?

さて、石垣島事件は日本海軍による戦争犯罪ですが、当ブログでは、前回、イギリスの戦争犯罪、アムリッツァル事件について取り上げました。

oplern.hatenablog.com

上記は、シリーズ記事「世界のマイナー戦争犯罪*1」の第6回目となります*2

本日も前回に引き続き、「世界のマイナー戦争犯罪」シリーズ7回目。前回同様、イギリスによる戦争犯罪である万県(ばんけん)事件を取り上げます。

なお、1回目から5回目までの当シリーズ記事は以下の通り。

【世界のマイナー戦争犯罪】メリッソ村民虐殺事件【日本軍】 - Man On a Mission

【世界のマイナー戦争犯罪】ル・パラディ近郊での英軍捕虜銃殺【ナチスドイツ】 - Man On a Mission

【世界のマイナー戦争犯罪】グアテマラ内戦の戦争犯罪【中米グアテマラ】 - Man On a Mission

【世界のマイナー戦争犯罪】ピノチェト政権下の「反体制派」弾圧【南米チリ】 - Man On a Mission

【世界のマイナー戦争犯罪】鴨緑丸事件【アメリカと日本】 - Man On a Mission

最近は、規律正しい軍隊による正しい戦争、なんてのを妄想する方もおられるようですが、残念ながら、戦争に戦争犯罪は(割と)つきもので、それ故、戦争犯罪は腐るほど世に溢れかえっているのです。

万県の砲撃

万県事件は、1926年、国民革命軍の北伐に際し、四川省万県(現重慶市万州)でイギリス砲艦が市街を砲撃した事件です。
(「北伐」は、国民政府が中国共産党の支援、協力のもとで北方軍閥の打倒を目ざしたもので、蒋介石率いる国民革命軍が北上、呉佩孚や孫伝芳らの軍閥を撃破、揚子江流域に進出しました。この後は蒋介石が上海で反共クーデターを起こしたりしてややこしくなりますので、いつかの機会にでも。)

1926年8月29日、四川省長の楊森が英国商船2隻(万通号、万県号)を勾留しました。
勾留の理由については、英国商会の太古公司に所属する英国船が、故意に中国の小型木造船に衝突、沈没させ多くの溺死者を出したためとしています。
これに対し、イギリス側は内河航行権(ないがこうこうけん)下にもかかわらず、楊森が自軍兵士を運搬させるために強制的に勾留したものだと反論しました。
なお、内河航行権は外国船舶が中国内地河川を航行する権利のことです。当時、不平等条約下にあった中国では、これにより外国船舶が治外法権的に揚子江などの河川を航行していました。

さて、イギリス側は、軍事力によって勾留商船の救出を図り、9月5日、楊森軍と衝突します。
この際、英砲艦が万県城を砲撃、一般住民にも死傷者を出しました。死傷者の合計は数千人に及んだといわれ、家屋の破壊焼失も1000棟を超えるとされています。

このようなイギリス側の強硬な対応の背景には、前年の1925年5月30日に上海で発生した「五・三〇事件」や「北伐」に伴う国権回収運動に対する危機意識と、中国共産党主導のもとでのストライキ・暴動に対する反感があったようです。五・三〇事件以降、梧州、武漢、広州などで英租界内における英警察隊による発砲、殺傷事件が頻発していますが、これらも租界における治外法権などの強制的回収に対する反感が背景にありました。まあ、ずいぶん身勝手な反感ではありますが。

さておき、こういった強硬姿勢は、相手の強硬姿勢も引き起こして裏目に出ることが多いのですが、万県事件もご多分にもれず中国での反英運動激化を招きました。
結局、本事件は、武力行使に慎重で租界内の生命財産保持のため上海租界中立化を主張していたアメリ*3の仲介により、イギリス側が譲歩する形で、地方問題として解決しています。

イギリスはこの後、反英運動が苛烈を極める中で、対中国宥和的な政策へと転換していくこととなりました。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

世界戦争犯罪事典

 

 

*1:実のところ、一口に「戦争犯罪」といってもその定義はあまり明確ではありません。狭義の戦争犯罪としては、ハーグ陸戦規定などの戦時国際法規に違反する民間人や捕虜への虐待・殺害・略奪、軍事的に不必要な都市破壊などが挙げられますが、一般的には、これに含まれないユーゴスラヴィアルワンダ内戦での虐殺、ナチスドイツのアウシュヴィッツなんかも戦争犯罪とされています。当ブログではあまりこだわらず、一般的イメージとしての「戦争犯罪」を扱いますのでご承知おきください。

*2:実のところ、それほどマイナーと言えるか疑問なのですが、そこを気にし始めるとシリーズ名を変えるか、本当にごく一部の事件しか取り上げられなくなるので、あまり深く考えないようにしてます。ちなみに、なぜこんなシリーズ名にしたかというとただの勢いです。

*3:とはいえ、アメリカも砲艦による威圧を加えていたりします。