Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【世界のマイナー戦争犯罪】リンドバーグはかく語りき【アメリカ】

ここしばらく、「世界のマイナー戦争犯罪*1」シリーズの記事を多く書いていますが、今回もしつこく同シリーズ記事となります。第12回目。

同シリーズは、日本軍による南京事件ナチスドイツのユダヤ人虐殺といった有名どころの戦争犯罪は脇に置いといて、あまり知られていない戦争犯罪を取り上げてみようという企画です。

前回記事では、日本軍によるパラワン島での米兵捕虜殺害について取り上げました。

oplern.hatenablog.com

上記記事では、「日本軍は南京事件のような有名どころから名もない戦争犯罪まで、あちこちで大量にやらかしちゃってる」と書きました。
「名もない戦争犯罪」はそれこそ無数にあるわけですが、当ブログで過去取り上げた例としては、憲兵による現地住民の拷問があります。

oplern.hatenablog.com

以前、軍令憲兵について取り上げた記事でも書いた通り、植民地や占領地における日本軍憲兵は、独立運動や抗日運動の取締り・弾圧に「活躍」しています。

行き過ぎた行為(拷問)が頻発したこともあって、現地住民の恨みをよく買ってたわけですが、ついでにいうと拷問により死に至らしめることも珍しくありませんでした。
敗戦後には、アジア各地で行われた対日戦犯裁判において、憲兵に対する告訴が多発しています。ちなみに、有罪判決は下士官および兵に集中しがちで、責任者である上官に対してはあまり追求されないという問題がありました。
(なお、BC級裁判全般に同じ傾向があったりします。)

当然ながら、この手の戦争犯罪は日本だけでなく、世界各国、あちこちの国が、過去も現在もやらかしてます。
戦争に戦争犯罪は(割と)つきものなのですが、戦争イメージの「ファンタジー化」が著しい日本では、そんなことは思いもよらない方が多いようです。

さておき、本日は「名もない戦争犯罪」の中から、太平洋戦争におけるアメリカのやらかしについて少々。
初の大西洋単独横断飛行を成し遂げたことで有名なチャールズ・A・リンドバーグは、民間人ながらも太平洋戦争に「出動」していますが、その際の日記に、各地の米軍将校から聞いたというエピソードを書き留めています。

リンドバーグの太平洋戦争

第二次大戦初期、リンドバーグアメリカの不介入を唱えていたことから、時のローズヴェルト政権に敬遠されていました。そのためもあってか、リンドバーグが希望した従軍は叶いませんでしたが、1944年、民間航空会社の委嘱を受け、F4Uコルセアの性能テストのために南太平洋戦線に向かうこととなります。

1944年4月米本土を出発したリンドバーグは、ハワイ、ニューヘブリデス、ガダルカナル島を経て、5月21日、ニューブリテンラバウルから東方に位置するグリーン諸島に到着。ここで3週間ほどF4Uに搭乗してラバウル上空などへ出撃しています。とはいえ、ラバウル日本航空戦力は潰滅状態にあり、対空砲火は受けたものの空戦の機会はなかったようです。

その後、リンドバーグは西部ニューギニアのホランジア基地に移動しました。ここで、リンドバーグはP-38ライトニングに搭乗し、以降2ヶ月ほどの空戦生活を送ることになります。
7月28日セラム島アマハイ沖における空戦では、対潜哨戒と各種連絡飛行にあたっていた独立飛行第七三中隊の中隊長、島田三郎大尉の操縦する九九式軍偵察機を撃墜していますが、これは米軍の公式記録には記載されていません。

米兵の蛮行

さて、本題。
リンドバーグは、太平洋戦争出動期間中の見聞を日記に残しており、その中には、日本軍投降兵や傷病兵の拷問・殺害についても記述されています。

当時の現地米軍では、タラワ戦をはじめ、日本兵は皆殺しにして捕虜にはしない、という方針だか空気だかになっており、前線で2000人を捕らえたのに本部に届いたのは100人か200人くらいで、残りは機関銃の斉射で殺害したなどという話が記録されています。
しかしながら、米情報部では捕虜の尋問情報を重視しており、その要請で捕虜を連れてきたら1週間シドニーへの休暇を与える、なんて特典を設けたりしたようです。通達後は急に捕虜が増えたそうですが、措置の中止に伴い、また捕虜が少なくなったとか。

他にも、死体の口から金歯を抜き取るなんて悪習が流行したなんて話もあります。
戦場における米兵は戦利品漁りに熱心で、金歯以外には日本刀や日章旗なんかが人気でしたが、中には日本兵の頭蓋骨を収集するものまで現れました。そのせいか、リンドバーグもハワイに戻った際、税関で人骨を持っていないかチェックされたそうです。

これらのエピソードについてリンドバーグは、アメリカ人が文明人であることを主張する自信がなくなるなんて感想を残してますが、まあ、クソみたいな状況に置かれれば、民族国籍関係なく多くの人がクソみたいなことをやらかしたりしますので、クソみたいな状況の代表格である戦争に至らないようにすることが一番大切ということでしょうね。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

世界戦争犯罪事典

 

 

*1:実のところ、一口に「戦争犯罪」といってもその定義はあまり明確ではありません。狭義の戦争犯罪としては、ハーグ陸戦規定などの戦時国際法規に違反する民間人や捕虜への虐待・殺害・略奪、軍事的に不必要な都市破壊などが挙げられますが、一般的には、これに含まれないユーゴスラヴィアルワンダ内戦での虐殺、ナチスドイツのアウシュヴィッツなんかも戦争犯罪とされています。当ブログではあまりこだわらず、一般的イメージとしての「戦争犯罪」を扱いますのでご承知おきください。