Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【やけど】熱傷(火傷)による人体の損傷【戦地】

最近、(一応)医療に関係する記事を延々と書いています。といっても、昭和初期から太平洋戦争あたりをメインに取り扱ってるブログですので、まんま医療についての記事というわけではないのですが。

私は別に医療従事者というわけでもないですので、ボロが出ない内にそろそろ他の話題に移ろうかと思ったのですが、ついでというか、最後にもうひとつ。
以前、銃弾が人体に当たると何が起こるかという記事や、爆発により人体がどのような損傷を被るのかといった記事を書いたのですが、それらよりもう少し身近なものを取り上げます。
今回の記事は、熱傷、すなわち「やけど」について。当ブログらしく(?)戦場における熱傷と絡めて書いてみます。

熱傷とは

「やけど」は医学用語では熱傷といいます。
熱による皮膚・粘膜の障害のことであり、日常でもありふれた外傷のひとつです。

皮膚は外界と体内を隔てて、菌の侵入を防いだり、水分・体温を保持したり、汗をかいて熱を放散させる役目を持ちますが、熱傷により皮膚が損傷すると、これらの機能が損なわれることとなります。
熱傷で組織に損傷を負うと、その部分の血管から体液が漏れ出し、腫れが生じます。損傷した皮膚などの体表面は、菌の侵入を阻止する機能が失われるため、感染が起きやすくなります。

粘膜の熱傷というのは、ほとんどが口内および気道の熱傷です。高温の煙や蒸気を吸い込んだり、顔に炎を浴びたりすることで損傷します。熱傷の程度によりますが、気道の粘膜が腫脹(しゅちょう:腫れ上がること)して窒息の危険性が生じることも。

非常に高温のものだと短時間の接触でやけどになりますが、44℃〜50℃程度のものでも、長時間接触していると熱傷(低温熱傷)となります。いわゆる低温やけどですね。

熱傷の原因

熱傷の原因についても触れておきます。
「熱いものだろ?」と一言で片付けられそうなのですが、少しお付き合いください。

原因として多いものは、当然というかやっぱり「熱いもの」です。火炎、熱湯や油、アイロンなどの熱い物体などが挙げられます(外部熱源)。
やけどと聞くと直感的にはこういった通常の熱傷を思いつくのですが、他にも、放射線熱傷化学熱傷電気熱傷といったものがあります。

放射線熱傷は、太陽の紫外線により皮膚が赤くなる「サンバーン」(要は日焼け)が一番身近なものですが、X線や太陽光以外の放射線を、長時間または高強度曝露することでも生じます。

化学熱傷は、強酸、強アルカリ(アルカリ溶液やセメントなど)、クレゾールなどといった物質により生じる熱傷です。

電気熱傷は、感電による熱傷です。見かけ上はごくわずかな皮膚損傷でも、筋肉や神経、血管などの組織に広範な損傷を引き起こすことが多いので要注意です。

熱傷深度

熱傷による損傷の深さ(熱傷深度)により、I度熱傷・浅達性II度熱傷・深達性II度熱傷・III度熱傷に分けられます。

I度熱傷は、表皮(皮膚の表面)までの損傷で、その症状は皮膚がひりひりして赤くなる程度です。通常、数日で治癒し傷跡も残りません。
これを生じるのは、沸騰していないお湯を浴びた時とかでしょうか。応急手当としては、流水で冷やすのが有効です。
(薬品などによる化学熱傷では、水に触れると発熱するものがあり、この場合、流水で冷やすことはできません。)

浅達性II度熱傷は、真皮(表皮の下の皮膚)浅層の熱傷です。真皮乳頭に熱傷がおよび、皮膚の赤み、むくみに加えて水疱(水ぶくれ)が生じ、また、激しい痛みを伴います。
通常、1〜2週間で治癒し、跡も残らないことが多いです。

深達性II度熱傷は、真皮深層の熱傷で、赤み、むくみ、水疱を生じます。体毛、汗腺など皮膚付属器や神経終末も障害され、痛みもより強くなります。通常、3〜4週間で治癒しますが、跡が残ることが多いです。

III度熱傷は、真皮全層を越え皮下組織まで及ぶ熱傷です。一見通常の皮膚と変わりなく見えることもあり、水疱も形成されません。血管傷害によって皮膚は白色または黒色になります。神経が破壊されるため、通常は痛みを感じません。治癒は周辺からしか起こらず、小さな熱傷でない限り、皮膚移植が必要となります。

熱傷の範囲

熱傷は広範囲であればあるほど重症となります。
体表の皮膚全体を100%としてII度とIII度の面積を足した面積が熱傷面積とされます。I度熱傷の範囲は含まれません。
II度の面積の半分とIII度の面積を加えた値は熱傷指数と呼ばれ、重症度の指標となります。
熱傷指数に年齢を加えると、熱傷予後指数となり、一般にこれが100を超えると命の危険性が非常に高いとされます。
とはいえ、これはあくまでも指標です。熱傷予後指数が低くても、持病や生活状況などにより、命にかかわる危険性が生じ得ます。
また、顔面・手足や会陰は特殊な部位の熱傷として入院治療が必須です。

ちなみに、面積の判定には、手掌法や「9の法則」、「5の法則」といったやり方があります。

手掌法は、本人の指を含めた手のひらの面積が、おおむね体表面の1%と同じであることを利用して、熱傷の面積を測定するやり方です。

「9の法則」は、成人を対象にしたやり方で、体の部位を主に9の倍数で計算します。具体的には、頭、片腕がそれぞれ9%、胴体の前、後ろ(背中)がそれぞれ18%、片足が18%として計算、目安とします。

「5の法則」は、「9の法則」と同様のやり方ですが幼児、乳児を対象としています。頭、片足がそれぞれ15%、胴体の前、後ろ(背中)がそれぞれ20%、片腕が10%として計算、目安とします。

熱傷を負ったら

熱傷を負った場合、まずは熱源を取り除き、その後、応急手当として流水で冷やすことが一般的です。
冷やしすぎて凍傷を起こしたり、低体温を引き起こす可能性があるので、状況に応じて5分から30分程度を目安とします。
衣服の下に熱傷がある場合、無理矢理脱ぐと皮膚が剥離してしまうので、まずは衣服の上から水で冷却します。
やけどの重症度は面積と深さが目安になりますが、素人判断は危険ですので、危ないと思ったら救急車を呼びましょう。
ちなみに、低温熱傷はつい軽傷と思いがちですが、深くまで熱傷が到達し、長期の治療となることもあります。

……とか、なんとか一応は書いてみましたが、私は医療従事者でもなんでもないので、上記内容に責任は持てません。
というわけで、参考に本職の方々のサイトのリンクを貼っておきます。
(患部の写真画像がありますので、苦手な方はご注意下さい)

www.jsbi-burn.org

www.jsswc.or.jp

戦地における熱傷

さて、冒頭の予告通り、戦場における熱傷について。

爆弾などの爆発では当然ながら熱傷も生じますし、戦地においては火災が引き起こされることも多いので、戦争における人体損傷として熱傷は珍しくありません。

軍組織にもよりますが、戦場では、熱傷面積が10%におよぶと、重症と判断し後送を考慮します。救急処置としては、一般的なやり方と共通で、流水による冷却を行います。ただし、戦場では清潔な水があるとは限りません。
感染症を避けるため、河川の水などは避けることになります。)
清潔な流水がない場合、水筒やハイドレーションシステムなど飲料水により洗浄し、次に清潔なガーゼで水分を拭き取ります。その後、清潔なビニール袋で創部を多い、上から濡らしたタオルを当てて気化熱による冷却を行います。

熱傷範囲が20%におよぶと、致命的と判断されます。
冷却は、低体温と感染に特に注意が必要となります。冷却は2分以内にとどめ、全身の保温を行います。創傷部位を被覆した後、清潔なシーツで傷病者を包み、さらにその上から毛布やレスキューシートなどで保温します。
座って飲み物を取れる場合には、温かい飲み物を与えます。

火災が発生し衣服が燃えている場合、ただちに消火できないのであれば、地面を転がり鎮火します。立ったままでいると、上昇する気流により火勢が強くなったり、高熱となった空気を吸い込むことで気道熱傷を被る恐れがあります。
これは、先に挙げた日本熱傷学会様の応急処置と共通してますね。

なお、発煙弾に使用される黄燐や、ナパーム弾による炎は消火が困難です。
(黄燐は水と激しい反応を示し、ナパーム弾では焼夷剤が飛び散りかえって延焼が広がります。)
戦場では、これらの消火は、主に酸素の遮断により行なわれます。例えばナパーム弾の消火では、水を含ませた布を被せて空気を遮断します。
(布の乾燥を避けるため、継続して上から水をかけ続ける必要があります。)

なお、爆発物での爆轟(こちらを参照ください)に伴う熱は3000〜7000℃と高温なため、着衣は蒸発し、暴露した部位はIII度熱傷となります。
III度熱傷の場合、血流が無くなり、皮膚が壊死した状態となります。壊死した皮膚をそのまま残しておくと、細菌の感染源となる恐れがあるため基本的には切除を行います。これにより、皮膚が無くなった状態になります。範囲が狭ければ治癒が期待できるものの、広範囲では、多くの場合皮膚移植が必要です。

ちなみに、熱傷で四肢の皮膚深層まで組織が損傷されると切断へと至るそうです。

爆傷についての記事でも書きましたが、爆発により生じる熱傷では、骨に沿って爆発の熱が体幹部に急激に伝わるために外観より内部の損傷が激しく、治療のため、一つ上の関節から切断が行なわれる場合もあります。
例えば対人地雷を踏んだ場合など、身体内部では吹き飛ばされた部位(多くの場合、中足部からくるぶし)より上、体幹側の膝上付近まで、骨から体組織が剥がれるように損傷するケースが見られます。

最後に

さて、銃創、爆傷に引き続き、熱傷について取り上げてみました。
今回記事は、熱傷についての前提知識が大部を占めちゃってますが、一応、メインは後半の戦場での熱傷のつもりです。
近年の日本では軍事・戦争が「娯楽コンテンツ」的に扱われることが多いため、多少なりその実態を伝えたくて、迂遠ながらこんな記事を書いてみました。
同様趣旨の記事としては、より直接的な「イヤばな」というシリーズ記事がありますので、併せてお読みいただけると幸いです。

oplern.hatenablog.com

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それでは、今日はこの辺で。