Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【爆弾テロ】爆発物からの安全離隔距離【IED】

最近、東京オリンピックの話題が目立ち始めてますね。被災地ほっぽり出して2020年開催ですので、ぼちぼち、クローズアップされることが増えているのでしょうが、まあ、予想通りというかなんというか、ネガティブな話が多いようです。

去年の話ではありますが、酷暑対策でサマータイムを検討なんて話が出た際には、当ブログでも関連記事を書きました。

oplern.hatenablog.com

結局サマータイムは断念となりましたが、酷暑を懸念する声はますます大きくなっているようです。
暑さ対策としては、傘をかぶったり、打ち水をしたり、保冷剤を配ったりと、いろいろ考えて?いるようですが、中には「涼しい印象を与える」アサガオの鉢を並べるとかいう「対策」もあるようです。うん、いんしょうはたいせつだよね!

まあ、アサガオ云々は来場する観客をもてなす「フラワーレーンプロジェクト」とやらであって、「暑さ対策」を主眼とするものでは無いらしいです。とはいえ、過去、精神主義でいろいろやらかしてきた日本でこういう話が出てくると、その、なんだ、妙な味わいが出てきて困りますね。

ちなみに、東京オリンピックについて以下のようなサイトもあるのですが、なにやら、URLをツイートできないなんてこともあったようです。今は大丈夫なのかな?

wiki2020.org

さて、上記のような問題とは別に、東京オリンピックパラリンピックでは、当初よりテロが懸念されています。最近は色んな問題に紛れて少しトーンダウンしてる感もあるのですが、別に懸念がなくなったというわけでもありません。

過去のオリンピックでのテロ事件事例としては、1972年のミュンヘンオリンピックや、1996年のアトランタオリンピックが挙げられます。

ミュンヘンオリンピックパレスチナ武装組織「黒い九月(ブラック・セプテンバー)」によるものでしたが、アトランタオリンピックの事件は元米陸軍兵士のキリスト教原理主義者、エリック・ルドルフによる単独犯行でした。

アトランタオリンピックの事件は、1996年7月27日深夜に、センテニアル公園の屋外コンサート会場で、パイプ爆弾が爆発し、死者2名、負傷者111名を出したものです。
少し経緯を追ってみましょう。
7月27日午前0時55分に警備員がセンテニアル公園ベンチ下で不審なバックパックを発見。警備員は直ちに警察に通報、警察が避難誘導を開始します。その数分後、公衆電話から警察に、センテニアル公園に爆弾を置いた、あと30分で爆発する、との電話が入りました。
約20分後、午前1時25分にパイプ爆弾が爆発。パイプ爆弾には釘が仕込まれており、飛散した釘で女性1名が頭部を負傷して死亡しました。もう1名の死者は報道カメラマンで、爆発時に心臓発作を起こしたことによる死亡です。
なお、爆弾を発見して通報した警備員リチャード・ジュエル氏は、テロ関与の容疑をかけられバッシングを受けました。後に真犯人であるエリック・ルドルフが逮捕され、無実が証明されましたが、報道により人生を狂わされたジュエル氏は、2007年に44歳で心臓発作により亡くなられています。
(ちなみに、クリント・イーストウッド監督により映画化(The Ballad of Richard Jewell)されるそうです。)

閑話休題
今回は、東京オリンピックに向けて……というわけでもないのですが、一応、テロと関係する記事です。
一口にテロといっても、実際には様々な攻撃が考えられるのですが、とりあえず、アトランタオリンピックのように爆弾による攻撃の場合、爆発物からどのぐらい距離を取れば被害を軽減できるのかというお話を。

爆発物の安全離隔距離

さて、爆発物からどれくらいの距離が取れれば安全なのか、というのが本記事の主題なわけですが、これは、爆発物の爆薬量や性質、爆発を遮る遮蔽物の有無などによって変わってきます。

今回はアメリカ合衆国司法省の「Bomb Threat Stand-Off Card」から、爆発物(IED)タイプとそれに対する安全離隔距離を示しますが、その前の前提知識として、安全離隔距離が3区分に分かれることを説明しておきます。

まず、最も安全度の高い推奨離隔距離。爆発物に遭遇した時は、建物の内外に関わらず可能な限り推奨離隔距離を確保するよう務めます。
次に、隔壁離隔距離。推奨離隔距離を取れない場合、当該距離に位置する建物を探して、その裏に隠れます。建物を隔壁/遮蔽物にするわけですね。なお、この際、窓や外壁からは離れるようにします。
そして、最後に最低安全離隔距離。最低限これくらい離れてくれ、というものです。この距離では爆発の衝撃波による影響を受ける恐れがあるため、爆発後は速やかに医師の診断を受ける必要があります。

では、以下に爆発物タイプと各離隔距離を示します。

爆発物の安全な離隔距離

爆発物タイプ TNT爆薬換算重量 最低安全離隔距離 隔壁離隔距離 推奨離隔距離
鉄パイプ爆弾 2.3kg 21m 21〜360m 360m以上
自殺爆弾 9kg 33m 33〜510m 510m以上
アタッシュケース 23kg 45m 45〜560m 560m以上
乗用車 230kg 100m 100〜570m 570m以上
SUV/バン 450kg 120m 120〜720m 720m以上
小型トラック 1800kg 200m 200〜1140m 1140m以上
大型トラック 4500kg 260m 260〜1530m 1530m以上
セミトレーラー 27000kg 480m 480〜2800m 2800m以上

少し補足を。

上記に挙げた最低離隔距離すら取れない場合は、足を爆発物側に向ける形で伏せてください。この際、両脚を組んで、口は開けておきます。爆発後、吹き戻しも発生しますので、この吹き戻しが止むまでは伏せたままでいます。

もう一点。テロリストの戦術として、銃や小規模の爆発その他の方法で、人々を窓や戸口、外に引きつけ、その上でより大きな爆弾を爆発させて人的被害を増加させる、なんてのがありますので、こちらもご注意ください。

最後に

さて、安全確保のための爆発物からの離隔距離を書いてきましたが、最小の鉄パイプ爆弾でも推奨離隔距離360m以上となっています。必要距離が思ったよりも長い、と感じた方が多いのではないでしょうか。
鉄パイプ爆弾やアタッシュケース爆弾は、アトランタオリンピック事件のように釘をつめるなど、他の爆弾より破片飛散効果を高めてる場合が多いので、小さなものでも可能な限り離れる方が望ましいようです。
ちなみに、爆発によって受ける損傷について、当ブログでは、過去に以下の記事を書いています。併せてお読みいただけると幸いです。

oplern.hatenablog.com

なお、近年こういった爆発テロでは、爆風(blast wave)による頭部外傷(blast-induced traumatic brain injury:bTBI)が多く見られますが、特に画像診断で著明な所見がないにも関わらず、後遺症として様々な高次脳機能障害や心的外傷後ストレス傷害(PTSD)を来す症例が増大し問題となっているそうです。

bTBIは、爆風の直接的影響による一次損傷、爆発による飛翔物が頭部に衝突/貫通することによる二次損傷、爆風により転倒して頭部に打撃を受ける三次損傷などに分けられますが、
このうち、一次損傷のメカニズムに不明な点が多く、上記の後遺症との関連が強いのではないかと考えられているとか。
爆風は、先行する衝撃波と、それに続く強い気流からなりますが、このうち、特に短時間で急激に高い圧力をもたらす衝撃波の影響が重大と見られているそうです。

爆発物に直面する事態を乗り切っても、しばらく継続的に医師の診察を受けるべきなのかもしれませんね。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

イラストでまなぶ!戦闘外傷救護-COMBAT FIRST AID-増補改訂版