Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【米軍】現代の軍法会議制度 アメリカ編【軍事裁判】

しばらく軍法会議についての記事が続いてます。

oplern.hatenablog.com

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私の趣味範囲からは外れますし、非常にめんどくさいではあるのですが、延々と軍法会議軍法会議わめいてきましたので、一応の責任(?)として現代の軍法会議/軍の裁判制度についても少し触れておきます。ただし、めんどくさいから概要程度にとどめ、詳細には触れませんのであしからずご了承下さい。

いくつかの国を取り上げるつもりですが、概要程度とはいえ、それなりに長くなりそうなので複数回に分ける予定です。まずは日本の宗主国であらせられるアメリ軍法会議(軍事裁判所)について。

米軍の軍法会議(軍事裁判所)

さて、日本の親分たるアメリの軍事司法については、Uniform Code of Military Justice、略してUCMJに定められています。日本では、統一軍事司法法典とか軍事司法統一法典、統一軍法なんて訳されることが多いようです。
UCMJは1950年に制定されました。以降、現代に至るまでアメリカの軍法の基礎となっています。

UCMJには、軍刑法だけでなく、Court-Martial(軍法会議/軍事裁判所)の管轄権やその構成、審理手続、審理対象といった事項に関する規定が書かれています。
刑事訴訟法典と刑法典が包括されているわけですね。

なお、今まで軍法会議軍法会議と連呼してきましたが、アメリカのそれを「軍法会議」と呼ぶことには、個人的にはものすごい違和感があります。個人的なこだわりにすぎないので、なんとか押し通そうとしたのですが、我慢するのも面倒になってきたので、以降、軍事裁判所とさせていただきますごめんなさい。
(ちなみに、「軍法会議」という言葉のもともとは、フランスのConseil de guerreの訳語です。)

さておき、UCMJには、軍刑法として、敵前逃亡や利敵行為などの軍刑法特有の罪が定められているのですが、他に窃盗などの一般犯罪についても規定されています。アメリカでは州によって法律が異なりますので、一律に取り扱えるよう一般犯罪についても定められているようです。
(州法上の犯罪も、UCMJの下で訴追し得ます。)

軍事裁判所の施行については、Rules for Courts-Martial(軍事裁判所規則:RCM)が定められ、さらに、その詳細を規定するマニュアルとしてManual for Courts-Martial(MCM:軍事裁判所マニュアル)があります。

軍事裁判所の対象

ここから、具体的な軍事裁判所の制度について取り上げます。
まず、アメリカの軍事裁判所の対象となる者について。

当然ながら、軍事裁判所の審理の対象は主として軍人です。ただし、軍に拘束されている捕虜や、連邦議会により戦争が宣言されている又は不測事態作戦*1において従軍している文民等も対象となることがあります。

前述のとおり、UCMJには一般の犯罪なんかも含まれてるのですが、軍と一般の裁判所のどちらが訴追等を行うかは、司法省と国防省の覚書にて大枠が定められています。例えば、軍人と一般人の双方が含まれる集団犯罪なんかでは、司法省に通告するなどの取り決めがあります。とはいえ、結構柔軟な対応がなされるようです。

軍事裁判所の種類と制度

アメリカの軍事裁判所には、一般軍事裁判所特別軍事裁判所略式軍事裁判所の3種類があります。
以下、簡単ながら順に説明を。

一般軍事裁判所

一般軍事裁判所は、UCMJに服する全ての者のあらゆる犯罪を審理できます。
後述する特別軍事裁判所、略式軍事裁判所では、刑罰の上限が定められているのですが、一般軍事裁判所ではそのような制限がなく、死刑を含むすべての刑罰を科すことが可能です。
なお、戦時国際法によって裁かれる犯罪を行った者、いわゆる戦争犯罪者ですが、これに対しては一般軍事裁判所が管轄権を有します。

組織構成としては、1名の軍事裁判官と8名の陪審員(重大な犯罪の場合は12名)、または1名の軍事裁判官のみとなります。

特別軍事裁判所

「特別」とか言われると、極めて重い案件を取り扱ってそうなイメージですが、米軍事裁判所の特別軍事裁判所は、逆に重大でない犯罪を取り扱うものです。
UCMJに服する全ての者が対象とされますが、重大でない犯罪についての審理を行います。
前述のとおり、刑罰にも上限が定められており、死刑、不名誉除隊、免職等の刑罰は科すことができません。刑罰上限は1年の禁固、3か月の重労働等となります。

組織構成としては、1名の軍事裁判官と4名の陪審員、または1名の軍事裁判官のみとなります。

略式軍事裁判所

UCMJ に服する者のうち士官及び士官候補生を除く者の、重大でない犯罪を審理します。
特別軍事裁判所同様に、刑罰には上限が定められており、死刑、不名誉除隊や不行跡除隊、免職等の刑罰は科すことができません。
刑罰の上限は、1か月の禁固、45日間の重労働等となっています。

組織構成には軍事裁判官が含まれず、士官1名のみです。
そのためか、被告には、略式軍事裁判所を拒否する権利があり、その場合は一般軍事裁判所あるいは特別軍事裁判所での審理を受けることとなります。

軍事裁判官

さて、一般軍事裁判所、特別軍事裁判所では軍事裁判官が組織構成に含まれるわけですが、それでは、この軍事裁判官というのはどのような者なのでしょうか。
軍事裁判官となるには、いくつかの条件があります。
まず、連邦裁判所又は州の最高裁判所で、法曹として活動する資格を有する軍の士官であること。
さらに、その者が属する軍種(空軍とか陸軍とかのこと)の法務総監(Judge Advocate General:JAG)により軍事裁判官としての資格を認定された者であることです。

法律の専門家ではありますが、軍人でもあるわけですね。

陪審員

陪審員についても少し。

陪審員には、現役の軍人が就きます。
士官、准士官下士官陪審員となり得ますが、被告が士官の場合、准士官陪審員になれません。同様に、被告が士官、准士官の場合、下士官陪審員となることができません。

上訴と再審査

軍事裁判所の判決に不服があり、かつ、6か月以上の禁固判決など、一定の条件が満たされる場合、被告は、各軍種に設置される刑事上訴裁判所に上訴できます。
また、軍事裁判所の判決に、死刑、士官又は士官候補生の免職、不名誉除隊や不行跡除隊、2年以上の禁固を科すことが含まれる場合、刑事上訴裁判所は自動的に再審査を行います。

なお、刑事上訴裁判所は、3名以上の上訴軍事裁判官で構成されます。
上訴軍事裁判官は、連邦裁判所又は州の最高裁判所で法曹として活動する資格を有する軍の士官あるいは文民で、かつ、各軍種の法務総監により上訴軍事裁判官としての資格を認定された者が就きます。

刑事上訴裁判所の判決に死刑が含まれる場合や、各軍種の法務総監が特に命じた場合、被告の申立てで正当な理由が示された場合は、軍上訴裁判所がさらに再審査を行います。
軍上訴裁判所は、5名の文民の裁判官で構成されます。軍上訴裁判所の裁判官となるには、大統領の指名及び連邦議会上院の助言と承認が必要です。

ラスト。軍上訴軍事裁判所の決定についても不服がある場合、被告は、連邦最高裁判所に上訴の申立てができます。
(上訴の受理については、連邦最高裁判所により決定されます。)

最後に

概要程度ではありますが、親分アメリカの「軍法会議」について取り上げました。
詳細に知りたい、という方は、Web上からUCMJや、MCM(PDF)を見ることができますのでそちらをお読みください。

ところで、まったく関係ない余談なのですが、近年の日本には、米軍批判する者を攻撃したり、米軍の凄さを誇らしげに語ったりする日本人が多くおられるようです。
以前は、よくわからん心理だなあと思いつつも、まあ、子分としてのパフォーマンスなのかな大変だね子分、なんて勝手に解釈しておりました。
しかしながら、この子分方々の行動を見てると、客体としての自己に「アメリカ人の私」が存在しているように見えることがあります。
もしかすると、これらの方々は、子分としての振る舞いなんて低次元にはとどまることなく、ご自身がアメリカ人であると認識してるのかもしれませんね不思議ですねおやすみなさい。

 

 

*1:不測事態作戦(contingency operation)は、米国の敵又は敵対的な軍隊に対し、国防長官が計画する軍事作戦や大統領あるいは連邦議会による国家非常事態の宣言のときに行われる軍事作戦を指します。ちなみに、2001年以降のアフガニスタンイラクでの軍事作戦なんかも不測事態作戦です。