Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【長崎原爆の日】原子爆弾は核抑止の夢を見ない【8月9日】

前回の記事は8月6日、広島の原爆の日に上げました。

oplern.hatenablog.com

そして今日は8月9日。長崎の原爆の日です。
毎年8月6日、8月9日には、できるだけ原爆に関連する記事を書こうと思ってますので今回もそういう内容なわけですが、残念ながらあまり時間が取れませんでした。
そのため、一応は原爆関連であるものの、とりとめのない雑談的な記事となります。

なお、過去の8月9日の記事は以下の通り。

oplern.hatenablog.com

oplern.hatenablog.com

長崎原爆の日

以前、オリンピック後の交通混雑を緩和する目的で、8月9日を祝日「山の日」とするという政府案がありました。

www.nishinippon.co.jp

www.jiji.com

自民党内でも反発があり、結局1日ずらして8月8日(日曜)の閉会日を「山の日」に、8月9日は振り替え休日とする方向になったそうです。
西日本新聞記事には、長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長が「五輪が本当に平和の祭典であるならば、政府は閉会式を終えた外国要人たちに被爆地の現実を見るよう、長崎訪問を呼び掛けるべきだ」と求めたとありますが、これ、なかなか良いのではないでしょうか。ぜひ実現してほしいものです。

さておき、今年の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典は被爆75周年ということなのですが、新型コロナウイルスの影響で規模を縮小して開催されるそうです。

www.city.nagasaki.lg.jp

そういえば、市民活動団体ピースバトン・ナガサキさんが長崎原爆資料館の展示内容を紹介する動画を配信されています。
長崎市サイトにても紹介されてましたので、そちらのリンクを貼っておきます。

www.city.nagasaki.lg.jp

7番目の動画リンクが2秒目から始まるのはご愛敬。ともあれ、昨今の状況だとなかなか観光もためらわれますので、こういった取り組みはありがたいですね。

核抑止

さて、今回記事タイトルは「原子爆弾は核抑止の夢を見ない」なのですが、これはふと思いついて勢いでつけてしまっただけなので、核抑止についてまとまった話はありませんごめんなさい。

とはいえ、記事タイトルで核抑止とか書いといて、中身が全然違うというのも自民の選挙公約みたいでなんなので、雑談レベルながらも少し触れておきます。

まず、核抑止についてごく基本的なところを。
核抑止とは、対立する国家間において、核兵器による反撃の脅威により、互いに核兵器の使用が躊躇される状況を作り出すことで結果として重大な核戦争および核戦争につながる全面戦争が回避されるという考え方です。
ちなみに、自国に対する核攻撃の抑止を「基本抑止」、同盟国や第三国に対する核攻撃の抑止を「拡大抑止」と言ったりします。

この核抑止という理屈、日本では、まるで確定された揺るがないものみたいに扱ってる人が割と多いように思うのですが*1、実際には、いくつもの穴があり批判が絶えません。
特に、拡大抑止については批判的な見解が多く、ヨハン・ガルトゥングなんかは「日本人のための平和論」の中で「米軍が日本から撤退したら,いわゆる核の傘は存在しなくなる。しかし,私はそもそも核の傘―米国が日本を守るために中国と核戦争に突入するリスクを取る―などということを信じていないので、米軍撤退で日本の安全保障が弱体化するとは考えない」なんて述べてます。
……とか書くと、保守*2だか右派だかな人が「やっぱり日本も自分で核を持つべきだ」とか言い出すかもしれませんけど、そんな単純な話でもありません*3
スコット・セーガンは基本抑止についても批判的な見方をしており、組織的な慣例や慣行が、本来安全に管理されるべき核戦力に深刻な脆弱性を生じさせることを指摘しています。実際、キューバ危機の際はかなり危うい状況にありました*4
キッシンジャーも「許容できない損害」という点で双方が異なる価値観を持っている場合は抑止の機能が失われるとしています。

もちろん、核抑止の効果を非常に大きく見ている人もいて、核抑止肯定派のケネス・ウォルツなんかは「核兵器保有する国が、核保有国のみならず他国に大規模な通常戦をしかけることはない。たとえ通常戦力であっても、制御不能になって、核の打ち合いになり得るからだ」とまで言ってます。
残念ながら、私には一部の軍事趣味者が主張する「軍人の方が武力行使に慎重」という論と同じくらい説得力がないように聞こえてなりません*5
ちなみに、主な核保有国として、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、インド、パキスタンイスラエルなんかがありますが、さて、このうち「他国に大規模な通常戦をしかけ」たことがない国はどれでしょう。

最後に

そういえば、広島原爆の日である8月6日に新たに3か国が核兵器禁止条約に批准したという報道がありました。

www3.nhk.or.jp

それに先立つ8月5日、日本では、核兵器廃絶に向けた取り組み/課題について、各党代表者らが議論する討論会が開かれていたようです。

www.tokyo-np.co.jp

上記記事には、各党・会派代表者の主な発言が掲載されてるのですが、とある党の発言が一際アレで笑っちゃう味わい深いものでした。
さすがイソジン維新、真の「保守」だぜ!

さておき、近年は保守だか右派だかの人の論説に乗せられて、日本核武装論を唱える人をちらほら見かけたりするのですが、せめて核抑止という理屈が、万人が認める明確な論理などではないという点は知っておいてほしいと思う次第です。

 

 

*1:これを本人たちに言うと、たぶん「そんなことはない」と否定する人が大半だと思うのですが、実際に彼らがこねくり回す理屈は、核抑止が揺るがない理論でないと成り立たないものが多いです。

*2:前にも書きましたが、日本の「保守」は、政治思想上の保守とは無関係なことがほとんどなので、もうそろそろ別の名前をつけてあげたほうがいいんじゃないかと思ってます。某氏の発言からとって「メンテナンス」とかどうでしょうか。まあ、個人的には政治思想としての保守もろくなもんじゃねえと思ってますが。ついでにというかどうでもいい話ですが、私が(勝手に)定義する日本の「保守」は、自分の欲求のために人に我慢/犠牲を強いる人、です。ちなみに「高潔」な「保守」とやらは自分も我慢する(こともある)のですが、普通の「保守」だと他人だけに我慢させます。

*3:個人的所感ですが、日本核武装論を主張される方は、トータルで捉えるべき安全保障を、軍事力だけの問題として単純に捉えてる人が多いように思います。ついでに言うと強硬路線一辺倒なことが多いです。

*4:ケネディ政権で国防長官であったマクナマラは、フルシチョフが10月28日にミサイルを撤去すると発表していなければ、ケネディは攻撃を承認し、また、キューバに駐留していたソ連軍が戦術核弾頭を米軍に対して使用していた、抑止が働いて核戦争が回避されたのではなく運がよかったに過ぎない、と言っています。

*5:スコット・セーガンは、文民よりも軍人が予防戦争を支持する強い性向があるとしています。その理由として5つ挙げているのですが、すみません、時間ないのでこの話はまたそのうちに。