Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【在日米軍編】軍事趣味者は基地公害の夢を見るか?【軍事環境問題】

軍事環境問題についての記事、2回目です。
前回予告通り、今回は日本における在日米軍の環境汚染/基地公害問題について。

欧州なんかだと環境問題に対する関心が高い傾向にありますが、対して日本では環境問題についての偏見が根強く、何も知らないのに「偏向した連中が大げさに騒ぎ立ててるだけ」なんて受け止め方をする人が多いようです。
米軍基地公害なんかだと、盲目的に米軍を擁護しちゃう方も多々見られたりしますね。
ところが、そういう人が中国における環境問題については、大喜びであげつらったりしますので不思議でなりません*1

ともあれ、前回は、アメリカ国内での米軍による環境汚染を中心に取り上げました。

oplern.hatenablog.com

日本では、基地公害が発覚しても大勢の日本国民が無理やり擁護しちゃうくらいに大人気な米軍様ですが、さて、そんな米軍様はどのように日本の国土を汚染なさったり、日本国民の健康に悪影響を与えておられるのでしょうか。

在日米軍による環境汚染/基地公害

では、在日米軍による環境汚染/基地公害についていくつか挙げていきます。

最初は、だいぶ時代をさかのぼりますが1950年前後の立川飛行場の事例。
(現在は自衛隊に使用されている立川飛行場は、1977年に全面返還されるまで米軍が使用していました*2
立川飛行場では、廃油貯蔵タンクと燃料配管からの漏出が地元の水源を汚染しました。
1952年までに、8万5765ヘクタール、2317世帯、9,965人が影響を受けています。
汚染濃度も高く、地元の井戸から引いた水に火が点くこともあったとか。
水から検出された物質には、テトラエチル鉛*3も含まれていました。

横須賀基地では、米情報自由法(FOIA)によって公開された資料によると、1990年代に基地内で起こった地滑りにより1万2000から1万5000ガロンの燃料が漏れて海に流出しています。
1998年には、当時の防衛施設庁の調査で、横須賀基地12号バース(接岸壁)から安全基準の10倍のヒ素、150倍の鉛、許容限度の440倍の水銀という、高レベルの有毒物質が検出されました。
2000年代初頭には、横須賀停泊中の米艦艇から多数の大規模な燃料等漏出が発生しています。

岩国基地
FOIAで公開された資料によると、1997年から2016年の間に少なくとも12回の泡消火剤漏出事故が起きました。
2015年5月15日の流出ではPFOS汚染と記載されています。PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)には生体蓄積性があり、長期間摂取すると人体への毒性への懸念があります*4。米軍は泡消火剤の環境に対する危険性を認識していたにも関わらず、日本政府への情報提供はされませんでした。
なお、他にも2007年から2016年にかけて344件の環境事故があったそうで、このうち198件で漏出したジェット燃料は約2万4128リットルに上ります。

お次は横田基地
FOIAで公開された資料により、1999年9月30日から2006年5月10日までの間に、90件の漏出事故が発生していることが明らかになりました。
90件中10件では、環境事故調査委員会(EIIB)報告書が作成されています。EIIB報告書は、漏出量が多大で周辺環境に影響を与えかねない場合など、事故が深刻な場合に米軍によって作成されるものです。
事故で漏出する汚染物質のほとんどは石油関連物質で、なかでもジェット燃料が半数を占めています。

厚木飛行場。
やはりFOIAで公開された資料によると、2009年10月から2016年11月の間に少なくとも53件の環境事故が記録されています。1536リットルの燃料、386リットルのディーゼル、416リットルの汚水が漏出しました。

騒音問題も忘れるわけにはいきません。
米軍機の爆音被害に悩む基地周辺の住民による訴訟は、厚木基地横田基地、嘉手納基地、普天間基地など日本全国で行われています。
騒音訴訟判決の主な請求内容は、夜間・早朝の飛行差し止め、過去の損害賠償および将来の損害賠償請求ですが、過去の損害賠償は原告である住民の勝訴となっているものの、差し止め、将来分の損害賠償請求については認められていません。

最後に沖縄の環境汚染を。
日本における米軍専用施設面積の7割以上が集中するだけあって、大量に環境汚染/基地公害の事例があります。
(ちなみに、ネットを中心に「米軍専用施設面積の74%が沖縄に集中というのは嘘で本当は23%」というデマがまき散らされたことがありました。デマ理論では「74%という数字には、佐世保や横田、横須賀なんかが分母に入ってない云々」ということですが、実際には佐世保や横田など主要米軍基地が含まれた状態で算出して74%です。23%という数字の方が嘘。*5
今回は、その大量の事例の中から、やや時事ネタ的に那覇軍港(那覇港湾施設)とキャンプキンザ―について。

那覇軍港では、1968年に入港した米原子力潜水艦より放射性物質のコバルト60が漏出しました。また、1972年にも、コバルト60が検出されています。
1973年には軍契約船に積んだ塩素ガスが漏出、13人の沖縄の労働者と5人の米国人船員が中毒を起こしました。

沖縄県浦添市にあるキャンプキンザー(牧港補給地区)は「極東一の総合補給基地」と呼ばれています。
ベトナム戦争では、この基地からあらゆる軍需物資が供給されました。
1978年に米陸軍から米海兵隊に移管される前はマチナト・サービスエリアと称されていましたが、この時期の1975年に工業用洗剤の大規模漏出が起きています。
この漏出により、基地労働者が鉛、カドミウム六価クロムなどの有毒物に曝露しました。安全基準の8000倍だったと報道されています。
この際、那覇の米国領事館は米国務省あての機密電信で事件を「空騒ぎ」として一蹴、さらには「新聞と左翼がこの事件を我々への反対にうまく利用するだろう」などと述べていました。その後の機密電信でも、基地公害は「沖縄の反米左翼に都合よく使われる」なんて書いてたりして、なんだか、どっかのウヨい方々と同じレベルですね。
こういう、自分の都合に沿わない相手を「左翼」認定して、その主張をプロパガンダ扱いするという行動は、米軍やCIAなどの米国機関に割とよく見られるものです。日本における「左翼の活動が国民を害している」的妄想発想も、その根源の一部は米国由来なのかもしれませんね*6
さておき、マチナト・サービスエリア/キャンプキンザーではFOIAで公開された資料により、多数の環境汚染が明らかになりました。多すぎるのでそのうちのいくつかだけ挙げていきます。
1974年・1975年には、付近で発生した魚の大量死を契機に行われた海水・土壌調査でPCB、クロルデン、DDT、マラチオンが検出されました。
海兵隊の文書によると高濃度のダイオキシンも発見され、1978年の試験では、高レベルの鉛やカドミウムなどが検出されています。
1984年には元保管区域から2km以上離れた海岸で高レベルの重金属が検知されました。汚染が広範囲に及んだのですね。
2016年には、補給区跡地の付近を流れる小湾川の底質がクロルデンと高い値の鉛で汚染されていることが発見されています。
ちなみに、キャンプキンザーは2014年から返還が進められることになっており、2018年には国道58号線沿いの3ヘクタールが返還されました。ところが、こういった状況であるにも関わらず、なぜか米軍は近年実施された環境調査の公表を拒んでいます。なにか不都合でもあるんですかね?

最後に

日米地位協定の関係部分についても触れたかったのですが、ちょっと長くなりすぎたのでまたの機会に書きたいと思います。
少しだけ触れておくと、日米地位協定の第4条1項には

合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。

と定められており、すなわち、米軍はいくら環境を汚染しても、基地返還時に原状回復および補償する義務はありません*7。日本の米軍様甘やかしはハイレベルですね。

以降、本題からずれた余談になりますが、前章で触れた通り、米軍やらCIAやらの米国機関は、やたらと環境運動を左翼と結び付ける世界観をお持ちです。
この世界観は、日本のウヨい人らにも電波伝播しているのですが、最近は中立を気取る方々にも影響を与えているようです。某所では「冷笑系」なんて言われるタイプですね。
自身の思想・思考ではなく、右派左派の中間を取ることで「中立」と自認してるらしいのですが、このパターンだと根っこがなくて浮草状態ですので、バランスを取って中立でいるつもりが、実のところ右に強く引きずられて寄りまくっているという方が後を絶たないようです
「自分の欲求のために人に犠牲/我慢を強いる」という右派的思考と親和性が高い人が多いのも関係あるでしょうか。

などと最後に余計なことを吐き捨てつつ、今日のところはこの辺で。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

追跡 日米地位協定と基地公害

 

 

*1:そういや、新型コロナもそんな感じですね。

*2:当該飛行場による飛行活動は1968年まで。

*3:強い神経毒性を有し、中枢神経系、肝臓の障害や、生殖能または胎児への悪影響のおそれがあります。

*4:PFOSは、欧米諸国を中心に2000年頃から相次いで製造や使用等が禁止されるようになってきました。
米国大手製造メーカーの3M社は、2000年に世界各地の野生生物中にPFOSが高濃度に検出されたことを明らかにし、製造を2002年に中止しています。
米国環境保護庁(EPA)は、フッ素製造会社に対して「PFOA(ペルフルオロオクタン酸)及びその関連化合物(PFOS)の拡散・蓄積防止のための削減指示」を出し、2003年には「1999-2000年ベースで2006年に50%削減、ディスパージョンでは90%削減」の目標で合意がなされました。また、2019年2月にはEPAがPFOS・PFOAをはじめとするPFAS(ペルフルオロアルキル酸及びポリフルオロアルキル酸)を包括的に規制するアクションプランを発表しています。

*5:自由でも民主的でもないJ党のヒゲが、某SNSでこの間違った情報を拡散していました。岩国や三沢、佐世保、横田、横須賀等の自衛隊との共有米軍施設が分母に入っていない、共有施設を入れると23%、とかのたまってたらしいです。
防衛省が「在日米軍施設」と表現している基地は、(1)米軍が単独で使用する米軍基地、(2)一定の条件の下に自衛隊に使用を認める米軍基地、(3)一定の期間を限って米軍が使用することができる自衛隊基地に分類できますが、このうち(1)と(2)が「米軍専用施設」とされています。で、ヒゲが主張する岩国・三沢・佐世保・横田・横須賀はいずれもこの「米軍専用施設」です。
「米軍専用施設」は自衛隊が管理する共用施設とは異なり、日米地位協定のもとで管理、運営され、基本的にはその運用に国内法が適用されません。また立ち入り許可なども米軍の裁量によりなされます。
ヒゲのいう23%は(1)(2)(3)全てを合わせた場合の割合となります。(3)は期間限定で米軍がつかえるとはいえあくまでも自衛隊基地です。ヒゲは自衛隊基地を分母に含めちゃったんですね。まあ沖縄の基地負担を少なく見せたかったんでしょうが。なお、2019年1月1日現在だと約70.6%だそうです。減少はしたもののこれでも、国土面積の約0.6%しかない沖縄県に、全国の米軍専用施設面積の7割が集中していることになります。

*6:余談ですが、某軍事研究誌で、辺野古基地反対運動を同様の視点でとらえている人が記事を書いてて、非常に残念な気持ちになったことがあります。専門誌気取ってるのにあんなの載せちゃうんだなあ……。

*7:ところが韓国では、韓米地位協定にて日本と同様に返還される米軍基地について米軍に原状回復の義務はない、と定めているにも関わらず、事情が違います。
なんと、韓国は返還米軍基地の環境回復に関する責任は米側にあると主張し、これを米側にも認めさせているのです。
どのレベルまで環境回復を行うかについては韓米間で主張に差があるものの、汚染者である米軍に環境回復の責任がある、という認識は共有されてます。
つまるところ、日米地位協定の内容もさることながら、そもそも日本政府にやる気も能力もない、というのが惨憺たる現状の主原因かもしれませんね。