Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれを記録していくブログです。情報処理技術者試験の話題多し。高度試験の攻略なども。最近はやや歴史づいてます…。

【戦争と兵器】弾道ミサイルとは【基礎の基礎】

さて、前回にて「はじめての弾道ミサイル」V2ことA4ロケットについての記事を書きました。
A4ロケットは、第二次大戦時のドイツが開発したもので、その後の弾道ミサイル・宇宙ロケットの礎となっております。
ドイツ降伏後は、主にアメリカ・ソ連によるドイツロケット技術者ぶんどり合戦なんかも起きました。

oplern.hatenablog.com

簡単ながら弾道ミサイルの始祖について書きましたので、今回はA4ロケットの子孫たち、現代の弾道ミサイルについて概要・基礎知識を書いてみます。
多分、何回かにわけて書くことになると思います。どの兵器でもそうですが、弾道ミサイルの特徴や仕組みは多岐にわたるので。
(とはいえ、あまり細かい話はしないつもりです。詳細を知りたい方は、専門書などをお読みください。)

弾道ミサイルってなに?

前回記事でも少し触れましたが、まず弾道ミサイルとはいったいどんなミサイルであるのか、その概略から。

ミサイルのイメージ

「ミサイル」と聞いて、一般的に…というか軍事にあまり関心の無い方がどのようなものを想像するかわかりませんが、多分、2種類のイメージに大別されるんじゃないかと思います。

ひとつは、戦闘機などが発射する空対空ミサイル。これは、主に戦闘機が敵航空機を撃墜するために用いられますが、一度発射されると、目標まで概ね最短距離を飛行します。フィクションでもよく登場しますので、イメージしやすいと思います。

もうひとつが、日本では近年…というにはあまりに長いこと話題になりすぎた弾道ミサイル弾道ミサイルについて詳細は分からなくとも、とりあえず地上から発射されて地上を攻撃するミサイルで、射程距離が長い、といったイメージを持ってる人は多いと思います。
(実際には潜水艦から発射されるものも多いですが、メディアで話題にされるのは、そのほとんどが地上発射型なので。)

一口にミサイルといっても、上記イメージされる2種類以外にも様々な種類があります。しかし、空対空ミサイルや地対空ミサイルなど多くのミサイルは目標まで概ね最短距離を飛行するのに対し、弾道ミサイルは独特な飛行軌道を取ります。では、次節より弾道ミサイルの特徴について。

弾道ミサイルの特徴/性質

今回は前節の2種類のイメージのうちの後者、弾道ミサイルについて取り上げるわけですが、まずはこの弾道ミサイルの「弾道」の意味から。

弾道とは

先ほど、戦闘機から発射される空対空ミサイルが概ね目標までの最短距離を飛行すると書きましたが、これに対し弾道ミサイルは、いったん高高度(大気圏上層から大気圏外)まで上昇し、その後、地上へと落下するような飛行コースをとります。
この飛行コースは、ちょうどボールを斜め上方に放り投げた時のように、放物線を描く形となります。このような飛行形態を「弾道飛行」と呼びます。弾道ミサイルの「弾道」は「弾道飛行」から取られているわけです。なお、弾道ミサイルは「弾道弾」と呼ばれることもあります。
なお、弾道ミサイルは原則、地上目標に対して打ち込まれますが、実験など海上に対して打ち込まれることもあるのは皆さんご存知の通り。

弾道ミサイルの飛翔と誘導

さて、弾道ミサイルロケットエンジン(またはロケットモーター*1)を用いて飛行しますが、発射後わずか数分で燃料を使い尽くしてしまい、残りの距離は慣性によって飛行します。
(射程の関係から、まだ燃料が残っていてもエンジンの燃焼を停止させる場合もあります。)
そのため、弾道ミサイルの命中精度は、ロケットエンジンの燃焼停止時の速度と方向で決定されることとなります。エンジンを停止させる時点での速さと方向のコントロールが非常に重要になるわけです。
そんなわけで、弾道ミサイルはまだ燃料が残っている間に、慣性誘導装置を使って自分の位置・加速度および目標との位置関係を割り出し、目標に向かうように姿勢を修正します。
エンジン燃焼を終えると、弾頭部はブースター部と切り離され慣性による弾道飛翔に入ることになりますが、弾頭は無誘導でありほとんどコースを修正する手段をもちません*2
弾道ミサイルの命中精度は、発射上昇段階でどれだけ正確な誘導ができるかが鍵となるわけです。

なお、現代の弾道ミサイルの弾頭部は、単弾頭方式と複数弾頭方式があり、このうち複数弾頭方式にはMRV式、MIRV式などがあります。話が長くなるので、これに関してはいずれまた。

弾道ミサイルの分類

弾道ミサイルの分類についてもふれておきましょう。
よく使われる分類としては、弾頭または射程距離による区分が挙げられます。

まず、弾頭による区分。
こちらは核弾頭か通常弾頭かによる区分となっており、核弾頭を搭載したものは戦略兵器として扱われ、戦略弾道ミサイルと称されます。
通常弾頭の場合は、戦術兵器として扱われ、戦術弾道ミサイルと称されます。

次は射程距離による分類。
概ね以下のように分類されます。

SRBM(短距離弾道ミサイル):射程800km以下
MRBM(準中距離弾道ミサイル):射程800〜1600km
IRBM(中距離弾道ミサイル):射程2000〜6000km
ICBM大陸間弾道ミサイル):射程5500km

ちなみに、潜水艦発射方式の弾道ミサイルは、射程のいかんに関わらず全てSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)とされます。

なお、これらの分類は厳密に定義されたものではありません。SRBMについては射程500km以下とされたり、戦術弾道ミサイルは射程500km以下のミサイルという定義があったりします。
(配備を規制する条約によって分類されることが多く、それぞれで定義が異なるのです。)

弾道ミサイルの脅威とその迎撃

前回の記事で触れた元祖弾道ミサイルV2ことA4ロケットは、迎撃は困難であったもののその効果は限定的であり、戦局に大きな影響を与えることはできませんでした。
しかし、現代の弾道ミサイルは核と結びついたことで極めて重大な脅威となっています。
ICBMを例に取りますが、これは地球の半径に匹敵する距離をわずか30分ほどで飛翔、着弾します。核爆弾がこのような運搬手段を得たということは、ごく短時間の間に国家に壊滅的被害をもたらすことが可能となったことを意味しました。
このため、当然ながら弾道ミサイルを迎撃することが考えられるようになります。

1950年代末には、遠距離レーダーを配した弾道ミサイル早期警戒システムとABM(弾道ミサイル迎撃ミサイル)が実用化されました。
当時の技術では敵ICBMへの迎撃ミサイル直撃は困難であったため、ABMには核弾頭を搭載しICBM近傍で爆発・無力化させるという手段をとっています。
(核弾頭の爆発による破壊力以外にも、核爆発によって放出される放射線により起爆装置の機能を破壊する効果も期待されました。)
しかしながら、これでは迎撃に成功したとしても国土の破壊・放射能汚染・電磁パルス障害が起こることとなります。かなり問題のある弾道ミサイル防衛手段…というかもはや論外といってよいかもしれません。敵ICBMの直撃よりはマシという発想かもしれませんけども。

今日のミサイル防衛では、技術の進歩により、ICBMに直撃することで撃墜するミサイルによる迎撃が主となっております。

日本の弾道ミサイル防衛構想

一応、日本における弾道ミサイル防衛(BMD)構想をざっと追ってみましょう。
まず早期警戒衛星(アメリカ様所有)が最初に弾道ミサイルの発射を探知し、警戒・初期情報を送信します。またRC-135などの航空機搭載赤外線センサーでも、弾道ミサイルのブースト段階で探知を行います。
続いて沖合に展開した海上自衛隊イージス艦が上昇していく弾道ミサイルをレーダーで探知・追尾します(ミサイルは水平線の向こうにいるので、ある程度上昇しないと探知できません)。
軌道を計算して、実際の迎撃はエンジン燃焼を終えて慣性により飛翔している中間段階(ミッドコース)で行われます。
イージス艦は搭載しているSM-3ミサイルを射出、SM-3のキネティック弾頭は、赤外線センサーを用いて目標を捕捉、弾道ミサイルの弾頭に体当たりすることで撃墜を試みます。
これに失敗した場合は、地上で待ち構える航空自衛隊パトリオットPAC-3での迎撃となりますが、こちらは推定射程20km程度であり、日本全土をカバーすることはできません。

このように、日本ではSM-3とPAC-3による(不完全な)多層的迎撃態勢となっていますが、残念ながらというか当然ながらというか、完全な弾道ミサイル防衛は不可能というのが現状です。

最後に

さて、あまり深くは踏み入らないようにしたのですが、それでもそこそこ長い記事になってしまいました。
冒頭でも述べましたが、弾道ミサイルの話は(途中で飽きなければ)何回かにわけて書く予定。今回はアウトラインをざっとなぞってみたつもりです。

前述したとおり、日本では長いこと弾道ミサイルが話題になってます。湾岸戦争の時も少しスカッドミサイルが取り上げられてましたが、ここしばらくは、ほぼ北朝鮮問題ですね。

振り返ってみると、日本で弾道ミサイルが大きく取り上げられたのは1993年5月、アメリカが「ノドン」と呼んでいた北朝鮮弾道ミサイル発射実験で、能登半島沖250kmの日本海中部に着弾したことに端を発します。
その後、しばらく忘れ去られて(!?)いましたが、1998年8月31日に「白頭山」ロケット(の二段目)が日本本州北部の上空を通過して太平洋に落下したことから再燃、現在に至ります。
不思議なのは、日本はとうの昔に北朝鮮弾道ミサイル射程内に入っていたにも関わらず、北朝鮮のミサイル射程が伸びるに連れて大騒ぎの度合いを増していることです。海外の人からは、不可解に思われているとかなんとか。
某ジャーナリストの方なんかは、「親分(アメリカ)まで射程距離に収められたから大騒ぎしているように見える(大意)」と言われていましたが、まあ、確かにそんなふうに見えます。
なお、親分アメリカのミサイル防衛構想では、中国および北朝鮮のミサイルを迎撃するため、日本とミサイル防衛システムを連携しており、他の同盟国とも早期警戒情報網の構築、アメリカ製迎撃ミサイルの導入、早期警戒レーダーの配置を行うなど連携を進めています。
ちなみに現在、日米共同で開発が進められているSM-3ブロック2Aは限定的ながらICBMへの対処能力が付与される予定です。
余談ですが、例えば中国や北朝鮮弾道ミサイルがハワイを狙った場合、弾道ミサイルはより高い軌道となるため、現行のSM-3ブロック1Aでは高度が不足するのですが、SM-3ブロック2Aは迎撃高度1000kmとか2000kmとかいわれており、日本上空を飛び越えていく弾道ミサイルが迎撃可能となるかもしれません。
どんな結論を出すかはさておき、日本国民はもう少し日本の立ち位置とかアメリカの思惑なんかを考えた方がいいんじゃないかなぁ、なんて思ったりしました。おしまい。

 

 

*1:液体燃料を用いる場合はロケットエンジン、固体燃料を用いる場合はロケットモーターと呼ばれることが多いです。

*2:弾頭部の大気圏再突入後に、レーダーなどを用いて目標への誘導を行うものもある(あった)のですが、話がややこしくなるため本文では割愛させていただきます。なお、このような弾頭自体が機動性をもって命中精度を高める方式をMaRV(機動再突入体)方式と呼びます。米IRBM、パーシングIIの弾頭に採用されました。