Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【戦争を知ろう】日本陸軍の階級【旧軍】

前回まで、4回にわたって陸軍歩兵の部隊編制の話をしてきました。

その1分隊、小隊、中隊

その2:大隊、連隊

その3:旅団、師団

その4:軍団、軍、軍集団とか方面軍、総軍

これらの記事の中では、各部隊単位の指揮官について、小隊長は少尉、連隊長は大佐…といったように指揮官に充てられる階級の一般例を述べています。
しかしながら、軍曹だの中尉だの少将だのといわれても、あまりピンとこない人も多いと思います。
兵、下士官、士官とかもどういった区別なのか知っている人は少ないのではないでしょうか。
歩兵部隊の編制についての記事でも冒頭似たようなことを言ってて、もはや国語辞典での意味調べの連鎖みたいになってきましたが、ともかく今日の記事は日本陸軍の階級について、大ざっぱながら説明します。

日本陸軍の例を取り上げていますが、どこの軍隊も割と似た感じではあるので、他国の軍隊でもなんとなく見当はつくようになるんじゃないかと思います。たぶん。

将校・下士官・兵

さて、まずは日本陸軍における軍人の階級を上から順に並べてみます。

日本陸軍 階級リスト

将官:大将、中将、少将
佐官:大佐、中佐、少佐
尉官:大尉、中尉、少尉

准士官:准尉(1936年までは特務曹長

下士官曹長、軍曹、伍長

兵:兵長*1、上等兵、一等兵二等兵

将官〜尉官、准士官下士官、兵のそれぞれで行間を空けてますが、これは軍隊における大まかな階級区分により分けているからです。

一般的に、軍隊では階級を「将校(士官)」・「下士官」・「兵」の3種類に区分しています。
前述した階級リストでいうと、上3つ、将官〜尉官までは「将校(士官)」に該当します。
残る「下士官」および「兵」は、階級リストにもそのままの名称で記載されてますね。

なお、准士官だけあぶれちゃってますが、これは国や軍種で扱いが異なる、やや特殊な階級です。日本陸軍での准士官は、1894年から独立した階級で当初は「特務曹長」という名称でした。上記階級リストにも記載した通り、1936年から准尉という名称になりましたが、これは「准少尉」という意味ではなく「准士官」のことで、この一階級が「将校」「下士官」に相当する一区分となっています。

では、それぞれの区分ごとに簡単な解説を。

まずは「兵」。
まあ、文字通り兵士・兵卒のことと思ってよいです。
一般に部下をもたず、例えば上等兵は一等兵二等兵の上官となるわけではありません。

日本陸軍では兵役法*2に基づき、「国民の義務」として兵となります。
ちなみに、陸上自衛隊*3では、陸上自衛官は陸士まで全て特別職国家公務員となりますが、日本陸軍の兵は「官吏」ではありませんでした。
「官吏」は国よりの選任を受けて職に勤務するもののことをいい、「国民の義務」で任につくものは含まれないからです。
(まあ、戦前の制度なんで、公務員=官吏とも言えないんですけどね。)
なお、一等兵二等兵といった階級は「兵」という身分のなかでの勤務年数の長短区分という色が濃いです。入営当初は全員二等兵ですが、1年後には一等兵に進級します。
若干の成績優秀者は6ヶ月で一等兵に進級したりもしますし、「上等兵候補者」とされたもののうち入営1年後に若干名が上等兵になる、といった制度もあるのですが、まあ、1年耐えればみんな一等兵になるわけです。

下士官

次に「下士官」について。
下士官は、一般に兵を取りまとめる役割を担い、多くの場合、兵からの昇進で下士官となります。
日本陸軍でも、現役兵が志願と選抜により下士官となりましたが、他に、幹部候補生制度による「下士官勤務適任証書」授与者が招集されて任官する例がありました。

なお、満40歳で予備役編入(平時においては実質退役)となります。

将校(士官)

最後に「将校(士官)」です。
こちらはいわゆる「職業軍人」ですが、この言葉が定着したのは戦後のことで、戦前は「正規将校」と呼ばれていました。
一般に士官学校などで士官教育を受けたものが、少尉任官されることで「正規将校」としてのキャリアをスタートさせます。

日本陸軍でも同様で、何度かの制度変更はあったものの基本的には陸軍士官学校に入校して、将校生徒として教育を受けたものが卒業後に少尉として任官します。
(時期によっては、入校試験合格後にしばらく兵として勤務する制度や、卒業後に見習い士官として勤務する制度もありました。)
なお、士官学校の入校試験は、学歴等は問われないものの満20歳以下という年齢制限がありました。

少尉任官後は、規定の勤務年数(停年)を満たしたことを前提条件として上の階級に進級することとなります。
停年は、例えば中尉なら2年、大尉なら4年といった具合でしたが、規定どおりの停年で進級できるのは皇族の将校くらいで、陸大優等のエリートでも、1、2年増しから倍の年数で進級するのが普通でした。
(戦時には特例があったりします。)

なお、将校の進級は、尉官が抜擢と先任順の併用、佐官は抜擢というのが建前でした。
実際には、少尉から中尉への進級については、士官学校同期は全軍一律で同時進級、中尉から大尉へは所属連隊の将校団内での先任順進級*4となっています。

陸軍士官学校卒業の正規将校でも、陸軍大学校の出身者かどうかで進級速度が違いました。
ただし、同期生間の階級差は、二階級以内におさまるよう、人事担当部署では配慮していたようです。
また、陸士卒でも全員が将官に進級するわけでなく、平時の定員では、中佐進級までに士官学校同期の3分の1が整理され、軍を去ることとなりました。
現役定限年齢も階級ごとに定められており、例えば少尉は満45歳まで、少佐は満50歳までとなっております。現役定限年齢に達した場合、予備役(時期によっては後備役*5)に編入され6年後に退役となりました。
予備役、というのは普段は民間人として生活を送り、必要性に応じて(有事とか)軍に戻り、一定期間指定される職務につく義務を負うことです。
予備役服務者を軍に呼び戻すことを「召集」といい、召集解除後は、再び民間人としての生活に戻ることとなります。

元帥

おまけ。上記の階級リストの最高位は大将であり、「元帥」がありません。しかし、寺内寿一や杉山元は元帥として知られてますし、海軍でもぐったり大将永野修身山本五十六(戦死後に追贈)らが元帥に列せられています。
なぜ、階級リストに元帥が無いのでしょうか?
答えは、「元帥」が階級ではなく、称号だからです。
日本では、特旨(とくし)によって元帥府に列せられた陸海軍大将が「元帥」となります。よって、正確には「元帥陸(海)軍大将」です。
一応、単なる「称号」でしかないわけではなく、元帥になると現役定限年齢が終身となりました(陸軍大将の定限年齢は65歳)。
元帥は、先輩将官として軍内部に睨みを利かし、天皇の補佐や陸海軍間の調整を行なうことが期待されましたが、実際には陸海軍それぞれの利益を主張する代弁者となることが多かったようです。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

図解・日本陸軍歩兵

 

 

*1:1941年に「伍長勤務上等兵」を改称し独立の階級として新設

*2:1927年、徴兵令の全面改正の形で制定

*3:陸上自衛隊では「士」が「兵」に該当します。一等陸士とか二等陸士とか。

*4:つまるところ、連隊内に大尉の欠員が出れば早く進級できます。

*5:予備役とほぼ同じ制度ですが、予備役服務者の方が優先的に召集されます。1941年に廃止され、予備役に統合されました。