前回、ロシアの対テロ特殊部隊であるアルファについて書きました。
今回は、アルファと同じく「ロシア連邦保安庁(FSB)」の「憲法体制擁護およびテロ対策局(SZKS-BT)」特殊任務センターに属する特殊部隊、「ヴィンペル」について。
ヴィンペル
ヴィンペルは、アルファと同じくテロリズムへの対処を目的とする特殊部隊ですが、他にも、重要施設の警備や組織犯罪対応も行ってます。
近年は、アルファとともにテロ事件が多発している北コーカサス地域に派遣され対テロ作戦に従事してますが、前回触れたベスラン学校占拠事件にも出動し、その際には隊員7名が戦死しています。
ヴィンペルの来歴
さて、ヴィンペルは旧ソ連時代の1981年8月に、KGB第1総局の局長であったドロズドフ少将により創設されました。
しかし、完全に新規の部隊が編成されたわけではなく、「ゼニット」グループを母体として再編成する形で誕生しています。
母体となった「ゼニット」は、1979年12月のアフガニスタン・アミン大統領排除を目的に編成された、KGB情報将校と暗殺部隊を含む部隊です。
ドロズドフ少将は、対外諜報の実働部隊としてゼニットに目をつけ、根回しの末、自らの配下とすることに成功、部隊名を「ヴィンペル(長旗)」としました。
ソ連時代のヴィンペルの主要任務は、ソ連国外の現地工作員とともに極秘任務・特殊作戦を遂行することです。
KGBが行なう非公然活動の担い手として、スパイ網構築支援や破壊・襲撃任務に従事しました。
対外諜報を任務とすることから隊員の語学教育が重視され、隊員は2〜3ヶ国語を話せるよう養成されています。
また、国内において原子力・核関連施設の警備状況監査なども行っていました。
模擬侵入を行い、核施設の警備状況の弱点を探りだすとなんてこともやっています。
ソ連からロシアへ
1991年、ソ連体制が崩壊します。
この政情の激変下でヴィンペルは突如、内務省(MVD)に移管され、部隊名称も「ヴェガ」と改められました。
ロシア内務省(MVD)は警察機関を管掌しており、ヴェガ隊員の身分も軍人から警察官となってしまいます。これを「降格」であると受けとめ、少なくない隊員が除隊することとなりました。
任務も対外諜報から、重要施設の防護、対テロ、組織犯罪対処に変化しています。
ロシア連邦保安庁(FSB) 憲法体制擁護およびテロ対策局(SZKS-BT) 特殊任務センターV局
1995年8月、大統領令により、ヴェガはロシア連邦保安庁(FSB)へ移管され、部隊名も「ヴィンペル」へ戻ることになりました。
1998年10月には、同じくFSB隷下の対テロ特殊部隊「アルファ」と統合・再編成されることとなり、特殊作戦部局「特殊任務センター」が設立されます。
現在、ヴィンペルは、FSB「憲法体制擁護およびテロ対策局(SZKS-BT)」管轄下の特殊任務センター「V局」として、警備・国内治安維持・対テロ任務に従事しています。
(なお、特殊任務センターV局となった後も、部隊呼称は「ヴィンペル」です。)