前回、「軍法会議」というものについて、日本陸軍の制度を中心に取り上げました。
今回はその補足。前回取り上げられなかった部分について書きたいと思います。
続きを読む前回、戦前日本の「姦通罪」について取り上げました。
「姦通罪」は、妻が夫以外の男と性的関係をもった時に、妻および相手の男(相姦者)を処罰するというものです。
(ただし、未亡人や内縁の妻は対象となりません。)
驚いたことに、この「姦通罪」は、「姦通」した妻と相姦者は罰せられるものの、夫が「姦通」した場合だと処罰の対象にはなりませんでした。
女性差別が明白に表れた「罪」だったわけです。
なお、刑罰は2年以下の懲役とされましたが、この罪は夫からの親告罪であり、必ずしも処罰されるというものではありませんでした。
さて、「姦通罪」は敗戦後、1947年の刑法改正で消え去るわけですが、この際、「姦通罪」以外にもいくつか無くなった「罪」が存在します。
例を挙げると「外患に関する罪」の一部や「国交に関する罪」の一部、「安寧秩序に対する罪」なんかがありました。
今回はこれらの消え去った「罪」の中から、最も有名と思われる「不敬罪」について取り上げます。
前回、戦前日本の言論統制法である新聞紙法・出版法について取り上げています。
上記記事では、少しだけ文学作品に対しての検閲事例に触れました。
1909年、雑誌「中央公論」掲載の小栗風葉「姉の妹」が、新聞紙法違反とされたのですが、その理由については、夫をもつ妻の姦通を題材としたためではないかと推察されています。
当時の検閲では、人妻の姦通は「有夫姦」と呼ばれタブー視されていたようで、「姉の妹」は「風俗ヲ害スルモノ」として、新聞紙法第23条により発売頒布禁止となりました。
ところで、人妻の姦通描写が「有夫姦」として取り締まられたのなら、夫の姦通も「有妻姦」とかいわれて取り締まられたのでしょうか?
実は、夫をもつ妻の姦通描写は「風俗壊乱」として取り締まられたのに対し、妻をもつ夫の姦通描写については黙認されました。
ここには明白な性差別意識が見られるわけですが、新聞紙法・出版法における表現規制・検閲だけでなく、刑法にも同様の差別が存在します。
クソったれな大日本帝国様には、現在は存在しない「罪」が規定されていました。
「不敬罪」がよく知られていますが、他にも「安寧秩序に対する罪」なんてのがあります。「姦通罪」もその一つで、夫以外の男性と性交した妻は処罰されました。
今回記事は、この「姦通罪」について少々。
続きを読む