Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【沖縄汚染編】軍事趣味者は基地公害の夢を見るか?【軍事環境問題】

久方ぶりの更新です。
だいぶ前になってしまいましたが、前回記事では在日米軍による環境汚染を取り上げました。

oplern.hatenablog.com

ちなみに、その前の記事では、米国本土における米軍による環境汚染について取り上げてます。

oplern.hatenablog.com

日本では環境問題に対しての関心が低い傾向にありますが、さらに対象を絞った「軍事活動による環境汚染」なんてのはいわずもがなで、上記記事も他記事と比較すると非常にアクセスが少ないです。
(予想通りではありますが)

当然ながら、メディア上で基地公害/環境汚染が取り上げられることもあまり無いわけですが、これだけの規模の米軍を受け入れている現状を考えると、なんとも不思議なことではあります。
まあ、負担については基地所在地に押しつけてますので、大多数の国民は無関心でいられるということでしょうか*1。無関心でいられるなら、そっちの方が楽ですし。
むしろ大規模な米軍駐留があるからこそ、米軍による環境汚染/基地公害問題を矮小化したり、左翼の捏造(苦笑)だとか言って無かったことにしようとする向きが多いのかもしれませんね。

さておき、アクセスが少ないとか愚痴っといてなんですが、今回記事も懲りずに在日米軍による環境汚染/基地公害についてです。
前回記事では日本各地の在日米軍基地の環境汚染を取り上げたわけですが、今回は沖縄における環境汚染について。

実のところ、前回記事でも那覇軍港、キャンプキンザーでの環境汚染をいくつか取り上げてはいます。
しかしながら、なにせ日本における米軍専用施設面積の7割以上が集中している県ですので、大量に環境汚染/基地公害の事例があり、バランス的にもういくつか追加で取り上げといた方がよいかな、と思った次第。
(ちなみに「米軍専用施設面積の7割以上が沖縄に集中というのは嘘で本当は23%」などと思っておられる方は、前回記事をお読みいただければと思います)

前置きが長くなりましたが、次節より沖縄の米軍基地による環境汚染/基地公害の事例をいくつか。

 在日米軍は住民負担の夢を見ない

さて、沖縄での米軍による基地公害や環境汚染についてつらつらと取り上げていきます。
沖縄には多数の米軍基地が存在し、各基地で環境汚染/基地公害の事例が大量にあるのですが、ブログの一記事で網羅的に取り上げることはできないので、私の気の向くままに事例の一部を記載してます。あしからずご了承ください。

前回記事では、那覇市那覇軍港、浦添市のキャンプキンザーの事例を取り上げたので、そこから北上して取り上げていきましょうか。

最初に宜野湾市普天間基地の事例を。
2016年6月、普天間飛行場で6908リットルの航空機燃料が漏出する事故がありました。
内部報告によると事故は人為的ミスによるものだったとのことですが、在日米軍は日本側当局に対しバルブの不整合が原因だと伝えています。また漏出に対して即座に対処したとも報告していたそうですが、米内部報告書によると、事態は翌日まで収束していませんでした。

同じく普天間基地にて、2019年12月に消火装置の誤作動によるPFOSなどを含む泡消火剤の流出事故が起きています。
(PFOSについては前回記事をご参照ください)
この事故について米軍は「基地外へ流れ出たことを確認していない」などと主張、防衛省も米軍側の言い分を丸呑みして、国会答弁などで「基地外への流出は確認されていないとの情報を受けている」と繰り返しました。
ところが、なぜか米軍は沖縄県側の立ち入り調査要求を認めていません。不思議ですね。
その理由については、ジョン・ミッチェル氏の取材で明らかとなった情報で推察できます。
実際には、基地内であふれ出た3万8000リットルの泡消火剤の一部は排水管を通じて民間地に漏出していたことが米軍の内部資料に記載されていました。
ちなみに、有機フッ素化合物を含む泡消火剤の使用は米国内で禁止されており、在日米軍も2016年に「有害物質リスト」に掲載しています。
沖縄県は2016年以降、嘉手納基地と普天間飛行場での在庫量や保管状況について立ち入り調査を何度も申し入れてますが、米軍は拒否し続けています。

普天間基地では、2020年4月にも泡消火剤の川などへの漏出があり、この際は付近のこども園にも飛散しました。
日本の水質汚濁防止法では、河川に汚染物質を流した場合、原因者が回収や費用を負担することになっています。
しかるにこの事故ではどうだったかというと、泡消火剤の除去に当たったのは宜野湾市の消防職員でした。
こども園の除去については、日本の防衛局職員が遊具や窓ガラスを雑巾でふいています。砂場の砂はすべて入れ替えということでした。
なお、この事故では珍しく米軍が県と宜野湾市の立ち入り調査を認めるのですが、土壌採取については米軍が土壌表面をはぎ取った後だったというオチがつきました*2

さて、次は普天間基地の北側、キャンプフォスター(キャンプ瑞慶覧)。
段階的に返還が進む同基地ですが、2013年2月には1万8927リットルの下水漏れを起こしています。
漏れた下水は、付近の住宅地にあふれ出して海へ流出しました。
原因は海兵隊員が台所の流しに流した調理油による配管詰まり。在日米軍で浄化を所掌する環境部門担当者は、殴られるのが怖くてその海兵隊員を見逃したとか。
ちなみに、西普天間住宅地区では、アスベストや環境基準を超える鉛、油などが確認されており、返還にあたっての建物撤去や汚染土壌の処理といった原状回復には、およそ65億円が費やされました。もちろん日本持ちです。

ついで。キャンプフォスターの北側にあるキャンプレスター(キャンプ桑江)も2003年に一部返還されましたが、こちらも土壌からヒ素、鉛、六価クロムなど有害物質が見つかり地主への返還が遅れました。
汚染除去については、もちろん米軍ではなく日本政府が行っております。

さらに北上して嘉手納基地の事例をほんの一部だけ。
有名な「燃える井戸」から。
嘉手納町の屋良地域では、地下にしみ込んだ航空機燃料により1967年5月ごろより井戸水が汚染されました。
1968年6月には嘉手納地域でも同様の汚染が判明します。
「燃える井戸」については、琉球衛生研究所の所長であった吉田朝啓氏の著書「琉球衛研物語」に興味深い記述がありますので、少し引用させていただきましょう。

コザ保健所から井戸が燃えているとの緊急電話を受けて、吉田氏は公害対策室の大田室長とともに現地に向かいます。

 嘉手納町沖縄本島の中部西海岸にある小さな町だったが、日本軍が飛行場を作ったばっかりに、沖縄戦ではいち早く米軍に上陸され、占拠され、滑走路が拡大され、戦後ずっと東洋一の米軍飛行場を抱えたままの受難の町である。
 町域の半分以上が米軍基地に占められていて、住民は基地の周りの狭い土地にひしめき合って暮らしている。
 基地の北側にある屋良地区に行ってみた。井戸の周りには、県庁の係官や役場の職員や区長らが深刻な顔をして待っていた。
 バケツで汲み上げた水は、油膜が張って異臭がする。
「これは、航空燃料だ。分析せんでも判る」、太田室長は一目で断言した。
「誰か不埒な奴が投げ込んだのかね」
「いや、所長、基地からわずかな距離ですよ、地下汚染水ですよ」
 そこへ、ジープに分乗した米軍の担当官ら数名がやってきた。
「米軍の燃料だと思われるが、そちらの方もチェックしてくれんか、こちらも一応分析するから」
 上官らしい者に伝えたら、「そんなはずがない、燃料類の持ち出しは一切禁じられている。民間のケロシンだろう」という。
 やりとりしている間に、大田室長は部下らしい米兵と仲良くなっていて会話しながら探りを入れているところだった、
 そして、こっそり米軍の航空燃料の少量をサンプルとして提供することを約束させてしまっていた。
 将校クラスらしい主任担当者との話が物別れに終わって、一応現場検証を終わり、バケツの油を現場のサンプルとして確保し、研究所に引き返した。
 井戸が燃えたのではなく、汲み上げた水が油ぎっていたので、マッチを擦ったらボッと火がついたという程度だったが、現場に居合わせた記者の一報で、新聞はすでに航空燃料だと決めて、報道したので、世論に火がついて、沖縄中が沸騰した。
 1960年代、沖縄は至るところで米軍がらみの環境問題が噴出して、騒然たる世相となっていた。
 米軍は、事件のたびにまず自己防衛のために一応責任を回避し、時間を稼いだ。が、衛研は、科学的根拠を黙々と追及して、米軍の鼻をあかした。

衛生研究所は、後日、米軍兵士から航空燃料を入手し分析、井戸より採取した油が市販の鉱油とは異なる米軍専用の航空機燃料JP-4であることを突き止めます。
米軍はあっさりと認め、輸送パイプの修理と被害者への賠償が行われたそうです。
なお、その後の井戸についてですが、燃料油が自然浄化されるにつれ、菜園への散水に利用されるまでに回復したものの、井戸の一部はずっとふたががかけられ現在でも使用されないでいるのだとか。

FOIA公開文書によると、嘉手納飛行場では1998年から2016年までにおよそ650件の環境事故が発生しているそうです。
基地内にとどまる小規模の漏出から、数万リットルの燃料や未処理汚染水を大規模に地元河川に放出したものまで幅広い事故が起きています。
当該期間の総計だと、5万5000リットルのジェット燃料、1万3700リットルのディーゼル、48万リットルの汚水が漏出しました。

ごく最近の事例だと、2020年6月に嘉手納飛行場内の危険物取扱施設で火災が発生、施設内に保管されていた次亜塩素酸カルシウムが消火のための放水と反応して、塩素ガスが空気中に放出されるという事故が起きています。
地元地域への影響はなかったそうですが、情報提供は火災発生から10時間後だったことが問題となりました。

米軍を批判すると反日左翼になるらしい(????)

章タイトルは、私が体験したというか、言われた内容を一言にまとめたものです*3
大東亜戦争ローズヴェルトの陰謀で引きずり込まれたものだけどアジアの解放のためだった」なんて言説と同じくらい意味不明ですね。
まあ、今のところ日本はまだ一応(外見的には)立憲民主主義の国ですので、何をどう思うかは自由です。

などとつい余計な話を挟んでしまいましたが、さておき、事例総数からすると極わずかではありますが、沖縄での米軍基地公害/環境汚染について追加で取り上げてみました。
米軍基地公害/環境汚染は多岐にわたり、汚染物質の漏出以外にも騒音被害や実弾演習による原野火災、赤土流出*4など幅広いのですが、最近は特に水質汚染についての懸念が目立つように思います。

冒頭にて、大多数の国民は基地公害/環境汚染について無関心であると述べましたが、この状況が続くということは、あなたの町に基地ができて公害が起きても、その是正に世論が動かないということを意味しています。
1969年2月、沖縄の祖国復帰協議会会長の喜屋武真栄氏は、「小指の痛みは全身の痛みと感じとってください」と述べましたが、「日米同盟の強化」とやらが進む昨今、この言葉について再考してみてもよいんじゃないでしょうか。

それでは本日はこれにて。

主な参考資料

本記事を書くにあたり、以下の書籍を主な参考資料にさせて頂きました。

追跡 日米地位協定と基地公害

沖縄・基地白書 米軍と隣り合う日々

 

 

*1:兵器の話とか、米軍の「活躍」の話だと嬉々として語る人も多いのですけどね。多くの日本国民にとって、「米軍」は現実問題ではなく娯楽コンテンツに過ぎないのです。
さらに余計なことを言うと、軍事ジャーナリスト/評論家/ライターも軍事活動による環境汚染や基地公害について取り上げる方は少ないですね。逆に、米軍を擁護するために、日本国民の受けた被害を矮小化しようとする人はそこそこいるようです。

*2:一応、米軍ははぎ取った表面の土壌500グラムを沖縄県に提供しています。その信頼性は誰が担保しているのか不明ですが。

*3:毎度のことなのですが、どういうロジックでその結論に至ったのか理解しがたくて困りました。
ひょっとして大量の情報をもとに高度な論理展開を行ってて、そのため凡人の私には飛躍したように見えるだけなのか、はたまた、ただのバカなのか判断に迷うところです。

*4:赤土流出は米軍基地に限った話ではないのですが、農地や区画整理事業などと比較すると面積当たりの流出量が大きいです。建設工事中裸地での最大値と比較して米軍基地では5倍ほど大きくなります。