Man On a Mission

システム運用屋が、日々のあれこれや情報処理技術者試験の攻略を記録していくITブログ…というのも昔の話。今や歴史メインでたまに軍事。別に詳しくないので過大な期待は禁物。

【警察系】ドイツの特殊部隊 GSG-9【特殊部隊】

前々回にて、日本警察の対テロ特殊部隊SATについて書きました。

oplern.hatenablog.com

SATの前身SAPは、ドイツの特殊部隊GSG-9(ゲーエスゲー ノイン)を参考に誕生しています。
今回記事は、そのGSG-9について少々。

創設に至る経緯

まずは、GSG-9誕生までの経緯を。
SATの記事でも少し触れてるのですが、GSG-9創設の背景には、「ミュンヘン・オリンピック事件」があります。

1960年代後半から70年代初頭の西ヨーロッパではテロ事件が頻発していました。
中東問題に端を発するパレスチナ過激派や、それらとも連携する極左武装集団などが活動を活発化させていたのですが、その一方で、当時の西ドイツ政府は、こうしたテロに対応する特殊部隊の創設を躊躇しています。
というのも、かってのナチス政権下のドイツでは、親衛隊(SS)の特殊行動隊(アインザッツグルッペ)やフリーデンタール駆逐戦隊といった過激な特殊部隊が存在しており、特殊部隊の創設はこれらを国民に連想させ批判を浴びることになると危惧していたためです。

そのような状況の中、1972年9月5日にミュンヘン・オリンピック事件が起こります。
ミュンヘン・オリンピック事件は、パレスチナ武装組織「黒い九月(ブラック・セプテンバー)」のメンバー8名が、ミュンヘンオリンピック開催中に選手村を襲撃、イスラエル選手団を人質とした事件です。
対テロ訓練など受けたこともない警察がこの事件の対応にあたったわけですが、結果、人質全員(イスラエル選手団11名)の犠牲者を出すこととなりました。

それまでテロ組織というものは、駅などに爆弾を仕掛ける等して、政府や権力に抵抗するものというイメージがあったようですが、ミュンヘン・オリンピック事件での襲撃者らは、自動小銃などで武装し、かつ高度な訓練を受けたプロの兵士でした。
従来の警察組織ではこのような事件には対応できず、各国の治安維持施策は大きな方針転換を迫られることとなります。

当事者国の西ドイツでも、ミュンヘン・オリンピック事件を受けて対テロ特殊部隊の創設に踏み切ることとなりました。
西ドイツ政府は内務大臣ハンス・ディートリヒ・ゲンシャーのもと、直ちに*1特殊部隊編成に着手、前述した国民世論からの反発を避けるため軍ではなく、内務省管轄下の警察組織である国境警備隊に対テロ特殊部隊「GSG-9(Grenzschutzgruppe-9:国境警備隊第9部隊)」を創設します。
(当時のドイツでは各州ごとに自治体警察である「州警察」が置かれていましたが、全国をカバーする国家警察は存在していなかったため、全国規模となる対テロ任務の受け皿として国境警備隊が選ばれました。なお、自治体警察だの国家警察だのについては、こちらをご参照ください。)

なお、国境警備隊「第9」部隊となったのは、単純に当時既存の国境警備グループが8つあったためです。

創設にあたっては、英陸軍特殊部隊SASや、イスラエルのサイエレット・マトカルを参考にしたといわれています。
1972年に188名が配属、翌1973年には速くも作戦遂行が可能なレベルに達していたようです。

モガディシュの奇跡

さて、初期のGSG-9の活躍として有名なものに「モガディシュの奇跡」があります。
これは、1977年に発生した「ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件」におけるGSG-9の活躍を指すものです。

ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件は、パレスチナ過激派の一派、「パレスチナ解放人民戦線PFLP)」によるルフトハンザ機ハイジャック事件(ドイツ赤軍(RAF)も関係)ですが、GSG-9はソマリアモガディシュに着陸した航空機に強行突入を行い、わずか5分で犯人グループを制圧、人質全員を救出しました*2

余談ですが、GSG-9は航空機突入の際に、当時、まだ一般的ではなかった閃光手榴弾や、H&K MP5サブマシンガンを使用しています。これらの有効性が証明される結果となったことから、後には世界各国の特殊部隊に採用されることとなりました。前々回記事で触れた通り、SATでもH&K MP5サブマシンガンがメインウェポンとして用いられています。

その後のGSG-9

2005年、ドイツでは国境警備隊が改組され全国規模の警察組織である「連邦警察」となりました。
(ちなみに、現在のドイツでは連邦内務省刑事局に統轄される連邦警察と、各州ごとの州警察が存在します。)
これに伴い、GSG-9も連邦警察の所属となりました。ただし、その名称については変更されず現在も「国境警備隊」第9部隊のままとなっております。

編成・装備

GSG-9は、4個の強襲部隊(実働部隊)を中心に、支援・情報・装備・研究・補給・訓練を担当する部隊がサポートする体制となっています。
1個の強襲部隊は35〜42名で、これは7名編成の分隊5〜6個から構成されます。
(各分隊には狙撃・監視・突入・通信などの役割分担がなされています。)

なお、屋上からの襲撃任務などでは、ヘリコプターを利用した活動が多くなりますが、これについては連邦警察航空隊の支援を受けることとなります。

個人装備火器としては、前述のH&K MP5サブマシンガンの他、グロック17自動拳銃やH&K G36Cアサルトカービン、H&K PSG1狙撃銃などがあります。
ちなみに、2012年に公開された装備は、従来から一新、アメリカナイズされたものとなっているようです。例えば、ヘルメットが従来のAM-95から米空軍パラレスキュー・ジャンパーなどが使用しているFASTヘルメットに更新されてます。

 

 

*1:なんとミュンヘン・オリンピック事件と同年同月、1972年9月のうちにGSG-9を創設しています。

*2:残念ながら、モガディシュ着陸前には機長が殺害されており、この事件全体においては犠牲者なしというわけではありません。